栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

どうしても発作が無いと喘息定期薬を勝手に止めてしまう方へ

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

医療事務、看護師ともども募集中です!

 

梅雨が明けそうで明けない近畿地区ですね、しばらく雨続きだそうです。梅雨時期は喘息が悪くなる子が多くて、実際外来での吸入することもいつもよりは増えてますが、そうはいっても酸素が必要となるほどの子は見かけません。

 

私は学生の時に身近にしばしば喘息発作が出る後輩がいて、何度か救急外来に連れて行ったこともありました。喘息といっても名前しか知らなかったので、かなり呼吸が苦しそうになる様子を見てこりゃ厄介な病気だなと思いました。まさか将来自分がこれほどその喘息治療をすることになろうとは夢にも思っていませんでした。

 

ちょうどその頃にオノン(=プランルカスト、ロイコトリエン受容体拮抗薬のこと。キプレスやシングレアも同系統の薬、現在では主役級の薬ですね)が出てきて、薬理学が好きだった私は、なるほどアラキドン酸カスケードのここに作用するのか、これで効けばステロイドを使わなくても済むのかとかいう、ちょっとマニアックな感心の仕方をしたのを覚えています。たしかアイピーディーもこの頃だったかな、こっちも期待したけど今はあんまり使われてるのを見ませんね。

 

特に喘息を診たくて入ったわけでもない小児科では、嫌でも喘息はたくさん診ましたが、私が研修医の頃は酸素不足になるほどの呼吸困難でベッドの上で酸素を流し続けるテント(酸素マスクを嫌がって取ってしまう小さな子のために)の中で治療する子が沢山いました。それでも当時の指導医にはオノンが出て来てから随分重症の子は減ったんだと言われました。そのうちステロイド吸入薬(フルタイドとか)も出てきて、本当に喘息のひどい子を診るのは減りましたね。

 

小児科を含めた内科医ってのは、はっきり言って薬が無いと何にも出来ません。薬を開発してくれた方には感謝するばかりです。昔と言ってもほんの10~20年前までは喘息で、発作で入試を受けられなかったり、縁談に影響したり、海外旅行や留学が出来なかったり、つきたい職業をあきらめたりと、一生にかかわる病気だったのです。今はきっちり薬を使って治療すればほぼ確実に治せる病気になりました。ただし、きっちりと必要な治療した場合に限ります。こんなに恵まれた時代に生まれたのだから、面倒でも必要な薬を必要な期間はきちんと内服・吸入をして、子どものうちに治してあげましょう。

電子おくすり手帳は無くなって欲しい

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

看護師、医療事務ともに募集中です!よろしくお願いします!

 

私が今、世の中から無くなって欲しい3つのものは「戦争」「いじめ」、そしてもう一つが、、、

 

「電子おくすり手帳」です!

 

ご存知の通り、お薬手帳は処方された薬の内容を記録していくもので、多くは薄い小さな手帳に薬局で処方内容が印刷されたシールを貼ってくれます。帰省先でいつもと違う病院にかかったり、持病で継続して内服している薬があったり、他科受診した際に薬を処方されたりと、そういうときに受診された方がどういう治療をされているか、してきたかを確認するためにとても重要な情報の記録です。当院受診時に他院処方分があるときは、その手帳を先に受付でお預かりして診察前に確認します。最近はジェネリック薬品など聞きなれない名前の薬も多く前もって調べておいたり、多種の薬のときはカルテにも診察に先立って記録しておきます。

 

これが電子おくすり手帳では一切出来ません。保護者がスマホにアプリを入れていれば見れますが、スマホだけを預かって中を見ることも出来ないので、やむえず診察中に見せてもらい確認します。わからない薬だと調べないといけないし、とても時間のロスになります。ひどいときはスマホで見ることさえ出来ずカードしかなくて全くわからないことも。

 

カードリーダーがあれば見れるそうですが、そんなもんあるかっちゅうねん。よく知りませんが、連携して入力される電子カルテもあるのでしょうか。まだ紙カルテの診療所もあるというのに、そんなごくごく一部の医療機関でしか使えないようなもの導入して誰の得?

 

多分、それほど頻繁に病院を受診しない大人の患者さんなどが、紙の手帳だと忘れてしまうところを、カードやアプリで管理すれば忘れにくく記録閲覧できるのがメリットなんでしょう。でも小児科はみなさん母子手帳や乳児医療証などセットで持ち歩いておられるので、おくすり手帳だけを忘れることはめったにありません。薬局だって対応してないところも多いでしょう。

 

とかくペーパーレス化を目指すときは、電子カルテも検査結果記録などもそうですが、最初は不便を感じるものです。しかし、電子おくすり手帳はペーパーレスになったところでそれほどのメリットがあるようにも思えず、現状の治療上の不利益が多過ぎて。大金はたいて導入した薬局さんには申し訳ありませんが出来れば無くなって欲しいです。

自然派で育児をしていきたいなら、あらゆる悲劇を受け入れる覚悟をもって

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。看護師、医療事務ともに募集中です!よろしくお願いします!

 

紙ではなく布オムツとか、離乳食は既製品ではなく必ず手作りとか、そういうのは全然良いと思います。いわゆる「自然派」というのでしょうか。そうでないといけないとも思いません。好きなら良いと思います。

 

でも、湿疹にステロイドは絶対使わないとか、ワクチンはせず自然に感染する方が良いとか。そういう自然派は困ります。それで無事に過ごせる子もいるでしょうが、一部の子は悲惨なことになります。体重が増えないのに完全母乳にこだわるのも賛成出来ません。母乳だけでは栄養が足りてないならミルクを追加すべきです、赤ちゃんにとって栄養不足は体の成長だけでなく脳の発達に影響します。自宅出産とかもありますね、出生直後に羊水を飲んだりして上手く呼吸が出来なくても、軽く吸引したり酸素を与えるだけで何の問題もない人生が送れるところが、自宅で出産するばっかりに吸引も酸素も無くて死んでしまったり、脳に重度の障害を負ってしまう子がいるかもしれません。

 

そりゃ大昔はステロイドもワクチンもミルクも、吸引器も酸素も無かったです。それでみんな上手く行っていたかというとそんなわけないのです(環境が違うから今よりアトピーは少なかったかもしれませんが)。今より多くの子が感染症や栄養失調で、死んだり重度の後遺症を背負って生きて行くことになったのです。そんな悲しいことを含めての自然なのです。「自然派」の育児をしたい人たちはその覚悟を持たないといけません。

 

私はそれが本来の人間の自然の姿でなかったとしても、自然に反する行為であったとしても、今最大限出来ることで子どもの命と健康を守っていきたいと思います。

 

不登校は焦らず急がずで

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

現在、看護師、医療事務、脳波技師ともに熱く募集中です!

 

不登校なんですけど受診できますか?という問い合わせを時々いただきます。原則、元々当院かかりつけ患者さん以外では、発達や心理関係の初診は現在ストップしています、大変申し訳ありません。

 

ただ、不登校の際の基本方針だけ確認しておきたいです。まず子どもが不登校になった際には、ひどいいじめなど、どうにもこうにも登校困難となる明らかな理由がないか確認しましょう。そのときは担任の先生が窓口でしょうが、出来れば複数の先生に対応してもらう方が良いです。学校の先生もいろんな方がいますから。もし満足いく対応がされずに埒が明かなければ校長と面談しましょう。それでも誠意ある対応でなければ、当院近隣ならお勧めの相談先を紹介しますので連絡ください。

 

で、学校としっかり協力体制がとれていれば、まず登校を焦らないことです。もし習い事や友人と外出したりが出来ていれば、まずはそれを維持すること。外出できないほどのレベルなら家族と食事を食べたり、昼夜逆転しないようにすることを目標にしましょう。そのとき出来ることをしっかり確保することです。登校を焦るあまり家族関係まで悪化したら子どもの居場所がなくなってしまいます。もし急に本人が自分から登校すると言い出しても、逆に無理しないように、時間を少なめにしたり時々休ませるくらいの方が良いかもしれません。本人が自分から登校しだしたと無邪気に大人が喜んでいると、無理がたたってぱったりと行けなくなることが多いです。

 

新学年になったり、新たに中学高校へ進学したことをきっかけに、急に登校し始めた子が連休明けてから結局行けなくなっていることをしばしば聞きます。やっぱり本人も登校したいんでしょうね、でも出来ない。かわいそうな話です。

魔法の塗り薬なんて無い!

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

現在も看護師、医療事務、脳波技師ともに熱く募集中です!

 

乳児湿疹やアトピー性皮膚炎で遠方から受診に来られる方が増えてきました。ありがたいことです。その中で先日、同じ薬を近くの小児科でもらうことは出来ませんか?と聞かれる方がおられました。

 

結論から言うとそれでは全く意味が無いのです。まず処方してる薬は全く特別なものではありません。ごく一般的なステロイド剤(プロトピックも含めて)とごく一般的な保湿剤です。多分それまで近隣の小児科や皮膚科などで出されたものと違いありません。当院での治療の主体は薬の使い方とスキンケアを習得してもらうことにあります。入浴や体の洗い方まで含めてです、外用の量や部位はかなり具体的に説明します。診療時間自体が私の診察より看護師からの説明の方が長くなることも多いです。こちらがお伝えした通り出来ているかの確認のため初めは週単位、落ち着いても月単位でしばらくは定期的に通院してもらいます。詳細に伝えたつもりでも、誤解があったり、さじ加減の違いでこちらが意図したように出来ていないときに方向修正するためです。もちろん上手く行ってれば、出来るだけ早く薬の強さや塗る回数を減らして行く(基本的に私が決めます)し、それを判断するためでもあります。

 

うす塗りにならないように、たっぷりめに外用薬は処方することが多いのですが、定期受診すると言われたのに受診されず、処方された外用薬を自己流でチマチマと数か月にわたり悪い時だけ使い続けるというのは最悪のケースです。難治化する可能性が非常に高いです。繰り返されている方には処方をお断りしています。子どもの湿疹の難治化に協力したくありませんから。

 

湿疹治療に魔法の薬はありません。何にも考えずにそれさえ塗ってれば治るというのはかなり強いステロイドが混ぜた調合薬です。それもそのうち効かなくなります。

 

すでに湿疹の治療で受診しているのに上手く行ってない方は、処方をうけている病院で薬の塗り方などをよく質問して確認しましょう。しっかりとした回答をしてもらえなければ病院変えた方が良いかもしれません。

保護者を虐待の加害者にさせないために何が出来るか

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。看護師、事務、脳波技師ともにまだまだ募集中です。

 

最近また虐待問題が話題になっていますね。こういうときは毎回、虐待を疑わせる状況を見つけたら児童相談所に通報しましょうとか、児童相談所にもっと強制力のある権限(子どもを安全に確保するために)を持たせるべきとか、児童相談所と警察が連携するべきとか、良く言われます。虐待加害者という犯罪者になった親から子どもを守るためにということですね。

 

しかし、本当にやるべきことはもっと前の段階で親を犯罪者にさせない、虐待加害者にさせないことです。先日の事件も被害者は5歳の女の子でした、いつから虐待が始まったのかわかりませんが、おそらく少なくても1~2歳までは立派に育ててたんじゃないかと思います。なぜ虐待するようになってしまったのか?子どもが病気がちだったり発達が順調に進まなかったり、育児が上手くいかなくて深刻に悩むようになったかもしれない。子どもと関係のないところで経済的問題や家族関係などに困難を抱えていた可能性もある。親自身の身体または精神状態の乱れの可能性も。

 

つまり定期健診、もしくはそれに準ずる機能で、親子を見守り、早い段階で問題に気付いて対応することが必要です。一般的に1か月、4か月、1歳半、3歳半での健診があり、さらに地域ごとに10か月や2歳半などもしていたりします。でも、4~5歳でやっているところは少ない気がします、就学前に幼稚園など行っていれば良いかもしれませんが、義務ではないので通園していない子まできっちり把握しようとすると就学前までは地域がフォローした方が良いのではと思います。

 

診療所としては何が出来るか?現在当院では、最近看護師の人員に余裕が出来たこともあり、予防接種のときに身長体重計測を希望者に積極的にするようにしています。といっても乳児はほぼ全員希望されます。その中で、母乳や離乳食、スキンケア、便秘、出べそなど、いろんな悩みの相談があります。ほとんど看護師が、たまに必要なときは私が対応しています。実際に授乳して乳首の吸わせ方を確認したり(→これはさすがに私は出来ない)や母乳量測定することも。不安があるようなら次回ワクチンまで待たず1~2週後にフォローすることもしばしばです。

 

乳児期早期の育児を始めたころからの疑問や悩みに適切に対応することで、その後の育児を自信をもって続けることの助けになり、少しでも保護者が虐待の加害者になることを防ぐことが出来れば良いなと思っています。

経済的な事情のために乳児期から入園させないといけない家庭には、国から子育て支援として金銭的補助をする方が保育園を整備するよりも親子にとってはハッピーなのではないか

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。
 
本当にお久しぶりの更新です。どうしてこんなにブログを書けない体になってしまったのでしょう。ネタは日々の診療でいくらでも浮かんでくるのですが。楽しみにしてくれている方もおられると聞いていますので、少しずつでも書いていこうと思います。ブログは停滞していても、医療事務と脳波技師は引き続き募集中なのでよろしくお願いします。
 
毎年ですが4月の後半くらいから、どうにもこうにも咳鼻が遷延する乳幼児の患者さんが増えてきます。ヒトメタニューモウイルスといったしつこいカゼウイルスが流行することも原因の一つですが、保育園に入りたてで、それまで自宅のきれいな環境にいた乳幼児がいきなり細菌とウイルスの海に放り込まれて立て続けに感染を浴びまくることが大きな要因です。一つの感染が治る前に別の感染が重なるし、咳をしていても元気なら外で自由に遊んでいます。自宅にいる時のように汚い鼻水を拭ってもらえません。保育園に行っているんだがからしょうがないし咳鼻くらい放っておけば良いと言う人もいますが、気道が過敏になり咳が延々続いたり蓄膿や中耳炎になったりと、本当に放っておくわけにもいきません。
 
抗菌薬を始めると一旦治る子もいますが、1か月もしないうちに元通りになることが多いです。そりゃそうです、抗菌薬で身体に入った菌は殺せても、登園している以上すぐにまた感染するのですから。そんなことを繰り返しながら強くなっていく子もいますが、何か月も続く子も多いです。仕方ないので長期で継続しても副作用が少ない去痰剤を長めに投与したり、自宅での鼻吸引を勧めたり、漢方薬を試したり、どうしようもなく繰り返し抗菌薬を追加したりと、あがきながら治療しています。
 
特に2歳未満の人間という生物には、免疫力的に集団生活を健康に生き抜くには無理があるのではないかと思います。お金のためではなく仕事復帰するために早くから保育園に入れる方も多いでしょうし、それは仕方ないとは思います。でも経済的な事情のために乳児期から入園させないといけない家庭には、国から子育て支援として金銭的補助をする方が、保育園を整備するよりも親子にとってはハッピーなのではないかと、いち小児科医としては思います。