栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

風邪にテルギン、ペリアクチン、クレママレット、タベジールは出しません

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

連休をいかがお過ごしでしょうか?天気も良いからなのか、私は今さらながら花粉症で鼻水が止まらなくなっています。仕事も無いし長時間運転する予定も無かったので、何年も前に人体実験(自分に)のために出してたペリアクチンという第一世代抗ヒスタミン剤を改めて飲んでみたら、もうずっと眠いし喉は乾いて痰がからむし最悪でした。

 

というわけで、今回は抗ヒスタミン剤(第一世代) に関して。ずっと前にも書きましたが大嫌いな薬の1つです。ペリアクチンの他に、テルギンG、クレママレット、タベジールとかもそうです。私は他院で薬をすでに出されている患者さんが受診された時は、極力そのまま出ている薬を続けながら薬を追加するなどで対応してますが、この第一世代抗ヒスタミン剤が出ているときはバッサリ止めてもらうことが多いです。滋賀医大小児科系列の先生はほとんど出されませんが 、耳鼻科や他大学系列小児科、御年配の先生などからはよく出されています。処方された薬で鼻水は減ってよく寝るようになったけど、鼻が詰まったり咳が増えたという方は、この抗ヒスタミン剤が入っていることがあります。

 

この薬は名前のごとく体内のヒスタミンっていう物質の作用を抑えるのですが、このヒスタミンは鼻水などのアレルギー症状を出す悪行だけでなく、食欲や睡眠を調節したり、発熱時に生産される脳をけいれんしやすくさせる物質の作用を抑える良い役割もしています。要するに、抗ヒスタミン作用で熱性けいれんもしやすくなるってわけです。この辺りは過去記事参照ください(下にリンク)。

 

第ニ世代抗ヒスタミン剤と言われる、アレジオン、アレグラ、ザイザルなどは同じ抗ヒスタミン作用はありますが、眠気はほぼ出ないし強い口渇も無いようです。脳への移行が少なくて眠気が出ない上に、抗コリン作用というもう1つの薬効(副作用)が抑えられてるから強すぎる分泌抑制(=口渇)が出ないのでしょう。それならみんな第ニ世代を使えば良さそうなものですが、急性症状(風邪の)に保険が通ってないのであまり気楽には使えないのです。私はしばしば使いますが。

 

鼻汁や痰は気道のウイルスや菌などの異物を含んでるものなので、鼻汁や痰は基本的には柔らかくサラサラにして、適度な咳で排出するのを助けるのが、いわゆる小児の風邪治療の基本と思っています。当院では極力痰を柔らかくする薬のみ処方して、まだ鼻をかめない子にはなるべく鼻水吸引をして帰ってもらってます。流れ出る鼻水を止めるがために分泌を抑える抗ヒスタミン剤の治療をすることで、逆に粘っこい鼻水や痰にしたら、鼻詰まりや咳は悪化するし、そもそも風邪自体の治りが遅れる気がしませんか。

yoshi830.hatenablog.com

yoshi830.hatenablog.com

抗生剤を適切に使っていくのはとても難しい

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

4月になって風邪症状で受診される方も減りぎみだったのですが、後半から急に増えてきて冬場とあんまり変わらないくらいになってました。4月から保育園や幼稚園に行き始めた子たちが、初めての集団生活でウイルスや菌をもらいまくってやられてるようです。もうこれはしょうがない、誰しも通る道でこうやって強くなっていくと思いましょう。

 

で、問題は治療なんですけど、この手の保育園風邪がどこまで症状にウイルスか細菌が関与しているかで抗生剤を使うか悩みます。以前にも書いたように、こういう子たちの鼻汁の菌を調べると肺炎球菌やヒブがうじゃうじゃ検出されます。ただ菌は出ても、どこまで咳鼻や熱の原因になってるかわからなくて、そこにいるだけで何も悪さをしてないかもしれない。それなら安易に抗生剤を度々使うとなまじ菌を鍛えてしまうことになって(耐性化)、本当に菌を殺さないといけない時に薬が効かなくて困ります。でも、あんまりウイルスと見込んで自然治癒を待ちすぎると蓄膿や酷い中耳炎になってしまいます。

 

感染症の専門家は、風邪の9割はウイルス性であるし仮に細菌でも軽度なら抗生剤は必要ないと言っておられますが、これは少なくとも乳幼児に関しては絶対に違う。私の現在の感覚では2-3割は適切に抗生剤を併用する方が良いように思っています。

 

でも、メイアクトとかフロモックスとかの第三世代セフェム系、あれだけ腸からほとんど吸収されない(これは実際に調べてる研究結果と思うので真実でしょう)から意味ないって言われてるのにしばしば処方されてるのは何故なんでしょう。これらの薬は効かない以外にも弊害があるので正直出して欲しくないです(以下のリンク参照)。私はもう何年も出してません。

yoshi830.hatenablog.com

湿疹が良くなったかどうかの判断は意外と難しい

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

乳児湿疹でもアトピー性皮膚炎でも、治療はステロイドなどの塗り薬でガツン一旦良くしてしまって、良い状態をキープしながら薬を弱くしたり、塗る回数を減らしていきます。その治療を弱くする過程で悪化したら、一旦また戻して(強い治療にして)良い状態にしてからゆっくり落としていきます。最終的には保湿剤だけまでにするのが目標です。この中で、スキンケア(保湿)や内服(かゆみ止め)を併用したりもしますが、やっていることは意外と単純なのです。だから、極端な話、2段階くらいの強さのステロイド外用剤を処方して、良くなったら弱い薬に変えて続けて、さらに良くなったら塗る回数を減らして、、、、などと説明して、患者さんだけで勝手に治療されても出来ないこともありません。

 

しかし、実際にそれをやろうとするとほとんど上手く行きません。「良くなったら」というのが極めて主観的な判断になるからです。一見良くなっているのように見えても、よくよく見たり触ったりすると軽く湿疹が残っていることもあります、どんなによく見て皮膚の表面がきれいでも、皮膚の下では炎症(湿疹の元)がくすぶっていることもあります。「この薬を1日2回塗って、お母さんから見て良くなったら1回に減らして良いですが、それ以後はどんなに良くなったように見えても1日1回で次回外来まで続けて下さい」といった説明をよくしますが、それでも「きれいになったんで薬やめました」といって次の外来に来られる方がしばしばいます。それで本当にきれいになっていれてば良いですが、ほとんどで少しずつ軽い湿疹が復活し始めています。かなりひどい湿疹の状態を経験しているからか、軽い湿疹と全く湿疹が無い状態との見分けがつきにくくなるのかなと思います。でも、その軽い湿疹のうちに弱めの薬でしっかりを抑えて健全な皮膚を維持することが、湿疹や乾燥になりにくい強い皮膚にしていくのにとても重要なのです。

 

風邪でもないのに病院に来る回数は出来るだけ少なくしてあげたいので、上記の例のように部分的にご家族の判断に任せて薬を増減変更してもらうこともありますが、基本的には外来で一緒に判断して調節していきたいと思っています。

記録するだけで良くなります

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

発熱、便秘、夜尿などの治療で、当院では必ず記録表をお渡ししています。すべての病気で言えることですが症状の経過を正確に把握することは、診断治療では非常に重要です。

 

「全然熱が下がらないんです!」と言って受診される患者さんでも、よくよく経過を確認すると初めは39℃台が一日中続いているのが、徐々に朝は解熱して夜だけ上がるようになっていたり、熱のピークが39℃台後半から39℃前半、38℃台と連日徐々に下がるようになっていることもあります。患者さん自身がその経過に気付いてないこともあり、とにかく熱(37.5℃以上)が続いてることに対して心配していることもしばしばです。

 

発熱時は熱の経過表(熱型表といいます)を書く習慣にして、朝昼夕眠前など定期的に体温測定をするようにすれば、それだけで同じ熱が続いていても危険な状態なのか様子を見ていてよいのかが分かります。

 

便秘の記録表は排便した日時、量、硬さ、痛みや出血の有無、内服状況などを書き込むようになっています。便秘治療中で毎日出ていると思っていたけど、急に硬くなって出なくなったというときに、よくよく排便の記録表を見ると、少し前から内服を忘れがちで、便も少しずつ硬めになってきていたとわかることがあります。それなら、また薬を増やすなどせずに、現在の服薬をしっかり忘れずにしてもらうだけで良いということになります。

 

記録をするというだけで、状態をしっかり観察しようとするし、服薬も忘れにくくなり、我々の診断治療も確実で効果的に出来ます。面倒くさいかもしれませんが、早く良くするためにも頑張りましょう。

小児在宅医療のこれから

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

先日のびわこ放送で放映された小児在宅医療を特集した番組が公式にyoutubeに挙がってたのでリンクしておきます。私が訪問して診ている患者さんとそのお姉ちゃん、お兄ちゃんが遊んでいる様子がとても可愛く映ってます。施設に入ってしまうと、こんなに兄弟で遊ぶ時間はほとんど取れないわけで、ああいう風景を見ると在宅医療のお手伝いが出来て良かったなと思います。

 

今日たまたまある会で、滋賀の小児科の多くの先生たちと話したんですが、テレビの効果もあってか、すごく在宅医療に関して期待してるようなことをみんなから言われました。少なくとも滋賀の小児科業界全体から(患者さんからではなく)自分が求められてるのは、感染症でも予防接種でもアレルギーでもてんかんでも発達障害診療でもなく、小児在宅のようです。

 

私としては、地域のかかりつけ医として感染も予防接種もアレルギーも発達も、もっと診ていきたいと思ってるんですけどね。もちろん、てんかんも。小児在宅医療をもっとやれということなら、今のままでは限界なので医者を増やさないといけません。それはそれで大きな決断になります。悩ましいです。

youtu.be

ロタワクチンを受け無かったことをちゃんと後悔して欲しい

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

かなり久しぶりの更新になってしまいました、すいません。小児科繁忙期ですからね、という言い訳しておきます。この間、インフルエンザはいまだに多いし、近所の保育園ではロタ腸炎が流行してました。これからはインフルB型が増えてきそうですね。

 

ロタ腸炎で来られる方はやはりワクチンを受けている方は症状軽いです。私の中での分類では、重症ってのは脳症で寝たきりになったり、腎不全、心不全になって集中治療室で生死の境をさまよったりっていうのであり、数日下痢嘔吐で苦しんでぐったりしたり、脱水で入院したりのレベルくらいは軽症と思っています。でも今流行のワクチン済みのロタ腸炎は、ちょっと白っぽい下痢が続いてるけど元気で食欲もあるっていう程度の一般的にも十分軽症と感じられるものが多いようです。

 

以前書いたことがありますが、ノロ腸炎だと嘔吐が止まって下痢主体になると大概そのまま良くなって行くのですが、ロタは下痢だけでもダラダラ続いて脱水になっちゃいます。だから油断出来ない、怖いんです。脱水になっても点滴すれば治るとか思われるかもしれませんが、ウイルスをなめてはいけません。ウイルスは身体中の臓器機能を破綻させ、血管はボロボロになって、いくら点滴したって穴の空いたバケツに水を入れてるだけになり、漏れた水で顔も体もパンパンに腫れて死んで行くんです。

 

病初期に来られたロタ腸炎の方にはワクチンを受けてるか確認して、未接種の方には正直に怖い話しをしますし、もしワクチン接種してたら随分安心して見ていれたのにねって話をします。

 

はい、親を責めています、過ぎたことを言っても仕方ないのにね。ひどい小児科医と思われるかもしれません。ワクチンデビューの時にあれだけロタワクチンも勧めたのにっていう医療者としての気持ちがあるのも正直なところです。しかし何より、ちゃんと後悔してこれから生まれる弟妹はもちろん、これから親になる親戚友人に接種を勧めて欲しいのです。そして怖いウイルスはロタだけではありません、麻疹風疹、水痘、おたふく、インフルエンザと本気出されたら人類には勝ち目のないウイルスに対するワクチンを、今後は確実に接種して行ってくれることを願っているのです。

治せる薬が簡単に手に入る国と時代に生まれたのだから

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

高血圧だとか糖尿病とか大人は持病に対してずっと薬を飲み続けている方が多いと思いますが、子どもも喘息、てんかんアトピーなどと症状がなくても良い状態を保つために薬を続ける必要がある病気がけっこうあります。

 

症状が無い状態で薬を続けることが難しい患者さんもしばしばいます。外来では薬を毎日飲めてるか必ず聞いていますが、たまに忘れると答える方には具体的な頻度を確認します。月に1回忘れることがあるか無いかくらいなら問題ないことが多いですが、週に2-3回忘れるという方は厳しいです。本当に週2-3回ならギリギリ大丈夫でも、そう言う方の大半は実際にはほとんど飲んでない(飲ませてない)。それが抗てんかん薬なら血液検査で薬物濃度を測れるので簡単にわかります。

 

時々薬を飲めてない子どもに対して外来で叱る保護者の方もいますが、小中学生が自分だけで薬を管理するのはまだ難しいです。基本的に小学生は親管理、中学生は親子で、さすがに高校生以上には自分で自覚して飲むように伝えています。

 

続けるって言ったって、てんかんなら数年、喘息なら数ヵ月で終われることが大半です。逆にそれが出来ないと一生治らない病気になってしまいます。幼くして毎日薬を飲まねばならないのは不運なのかもしれませんが、治せる薬があってそれが簡単に手に入る国と時代に生まれたことを不幸中の幸いと思って、頑張って続けてくれたらと思います。