栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

今年のインフルエンザワクチン接種に関して

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

ぼちぼちインフルエンザワクチンの問い合わせを受けるようになりました。すいません、まだ詳細が決まってなくて、正式にお伝えすることが出来ません。私が悪いんじゃありません、卸からどのくらい数量確保出来るかとか、価格がどうなるかなど決まらないんです(笑)。インフルワクチンは毎年接種枠を変えていて迷惑おかけしてますが、今年も変わります。今回はネットからの予約可能枠は土曜(隔週くらい?)の午後にして、出来るだけたくさんの方を接種する予定にしてます。それ以外にもかかりつけ患者さんとご家族で土曜の都合が悪い方は、別の曜日の接種枠も用意します。例年通り定期受診中の患者さんは受診に合わせて接種しますし、定期接種のある方はその際に付き添い家族を含め接種します。つまり希望者には全員接種してもらおうという気概で臨んでおります。

 

インフルワクチン接種開始時期は10月半ばとなります、インフルの流行はここ数年は遅めでしたが、今年は本来冬のウイルスであるRSウイルスが今のうちから流行ったりと予想が全く出来ません。出来るだけ年内に接種し終わりましょう。相変わらず「どうせ効かない」と接種を拒む方もいるでしょうが、今年の春夏のアデノなどの流行の壮絶さ(クラスがほとんど全滅しないと終わらないっていう)を見るとインフルワクチンは効いてたんだなと思います。さらにインフルエンザは脳症やけいれん重積の合併率がとても高いです。必ずワクチン接種しましょう。

 

9月入って早々に詳細をホームページおよびfacebookで告知しますので、もう少々お待ちください。

育休明けに保育園に入れないといけないなら、それまでにツルツル肌にしておきましょう

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

先日、1歳半健診に行った際にひどいアトピー性皮膚炎の子がいました。「この湿疹はどう(治療)してますか?」と聞いたところ、「県外の小児科に行ってる」「これでも治ってきている」「ステロイドはもちろん何も塗ってない」と。この段階ですでにお母さんの答え方が臨戦態勢に入っていました、何度もいろんな人に言われているんでしょうね。健診の場なので戦う時間もないけれど、「ステロイドをしっかり使えば治りますよ」と言ったところ、「でも(完全に)治ることはないですよね」と完全に攻撃態勢になってきたので、ここで終了。

 

本当は「完全に治りますよ」と答えたかったんです。1歳半でまだ保育園に行ってなければ、ほぼ確実に治せる。

 

アトピー(乳児湿疹含めて)の治療は「ステロイドをしっかり塗って少しずつ減らす」ただそれだけ。あとは痒みに対して内服併用したり、薬を減らすときに再発しないようにスキンケアをしたり、が加わる程度です。上手く行くかどうかは保護者の塗り方と、治療を継続できるかです。上で保育園に行ってなければと述べたのは、保育園や幼稚園、小学校などに行き始めると、その時間帯に薬をぬったり、スキンケアが出来なくなるからです。だから、全部の時間を保護者と一緒にいてるのであれば自信たっぷりに治りますよと言えますが、離れている時間が多くなるにつれ治療は難しくなることがあります。

 

でも育休期間が終わったら保育園に預けて働かないといけないお母さんも多いと思います。それならば、せめてその時までに丈夫な皮膚にしておきましょう。丈夫な皮膚とは湿疹がなく完全なバリア機能を持った皮膚のことです。入園時点でそのくらいのツルツル肌にしておけば、保育園で多少ダメージを受けても、夜と朝のケアだけで皮膚の良い状態を維持できる可能性が高いです。

 

育休明けに保育園に預ける予定なら、1歳未満の乳児のうちにしっかり湿疹を治療しておきましょう。時期は早ければ早いほど良いです、1か月未満でも湿疹かなと思ったら受診しましょう。必ず治りますからね。

まずは便秘を治療しましょう

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

今回は便秘について。

 

少食でなかなか体重が増えない子、そして便秘もあり
→まず便秘を治療しましょう(考えてみれば当たり前ですね、出て行かないと入らないです)

 

夜尿が治らない、そして便秘もあり
→まず便秘を治療しましょう(小児科医には有名な話です)

 

疳の虫が強くて夜泣きや人見知りが極端にひどい、そして便秘もあり
→まず便秘を治療しましょう(なぜか過敏な子には便秘が多いようです、少しでもストレスを減らしましょう)

 

なかなかオムツが外れない、そして便秘あり
→まず便秘を治療しましょう(便秘がひどいままでトイレトレーニングしても上手く行きません)

 

便秘は体質的なものなので、水分増やしたり野菜やヤクルト飲んだりといった食事療法には限界があります。一旦内服治療を開始すると数ヶ月以上は継続することが多いです。剤型や効き方も違ういろいろな薬がありますので相談して決めましょう。

子宮頚がんワクチンを始めます

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

突然ですが、子宮頚がんワクチンを始めようと思います。今までも止めていたわけではありませんでしたが、問題になっている副作用に関して一部は心因反応とは思えない患者さんがいることから、まさに国と同じ様に積極的に勧めることはしませんでした。しばらく様子を見てれば何かわかってくるかもしれないと他力本願で待っていましたが、状況は変わりそうにありません。このままではワクチンにより子宮頚がんから守られる機会を、女の子たちから奪うことになります。このままで良いわけがありません。

 

先日、ワクチン販売会社の担当者にお願いして子宮頚がんワクチンの勉強会をしました。まず一人の女性が生涯で子宮頚がんを発症する率は1.3%(76人に1人)です、このがんの原因は性行為などで感染するヒトパピローマウイルスによるものです。このウイルスにはたくさんの型がありますが、その6割を占めるのはHPV16型、18型であり、この型のウイルス感染を防ぐのが子宮頚がんワクチンです。何もしなければ1.3%で子宮頚がんになるところを、ワクチンで原因となるウイルス感染を半分以下の確率に減らすことが出来ます。これが接種するベネフィットです。

 

一方で接種した方の0.08%で副反応が発生し、回復していない重症例は0.005%です。副反応といっても失神なども含む様です、注射で気持ち悪くなって失神する人くらいいくらでもいるし、このワクチンの副反応とすること自体が不思議です。回復していない重症例も私の個人的な予想では多くが心因反応であり、ワクチンとは無関係と思います。だから多く見積もって0.005%です。それでもかなり低い確率と思いますが、他のワクチン副作用における重症後遺症の確率はもっともっと低いので、そこが長らく私がひっかかっていたところです。

 

0.005%の回復しない副作用のリスクのために、76人に1人が将来罹患する子宮頚がんを予防する機会を捨てるかどうか。私は断然接種すべきと思います。そのために出来るだけわかりやすく本当の情報を伝えて、接種を決断して欲しく思っています。でも、最後に決めるのは接種する本人または保護者です。

 

実際に本格的に開始する際はホームページなどで告知させていただきます。

点頭てんかんを疑った時はロタワクチンやBCGを接種する前に必ず相談して下さい

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

最近なぜか赤ちゃんの点頭てんかん(west症候群)疑いの患者さんが相次いでいます。どういう症状かというと、ビクンと両手を伸ばして、頭もうなづくようにする一瞬の発作で気付かれます。モロ反射という音などにびっくりして同じような動きをする無害の不随意運動もありますが、モロと違って何の音も無いのにビクンとするようになり、ネットを調べると点頭てんかんが出てきて心配されて受診されます。

 

典型例だと発達退行(笑わなくなったり、目で追わなくなるなど)を伴ったり、シリーズ化といって発作が連続して短い時間に続くことが多いので、それらが無ければほぼ点頭てんかんでは無いのですが、なかなか症状と診察だけでは完全否定はしづらいです。もし本当に点頭てんかんなら治療開始の遅れが一生に関わる脳障害を引き起こすので、我々も慎重になります。ただこのてんかんは脳波がとても特徴的なので、ほんの短い時間でも脳波が録れれば確実に白黒つきます。ですから、点頭てんかんを疑う患者さんが来られた時は、しのごの言わずに早めに脳波を録るようにしています。

 

もし点頭てんかんだった場合は多くで特効薬的な免疫療法が行われます。それで気になったのはワクチンです。ヒブ、肺炎球菌、四種、B肝などの不活化ワクチンは良いですが、ロタワクチンやBCGなどの生ワクチン接種後だと、しばらくその免疫療法が出来ないことがあり治療が遅れてしまうのです。前述のように点頭てんかんは治療が遅れると修復困難なダメージを脳に与えます、だから治療は少しでも早く開始しないといけないのにです。

 

接種してしまった後に発症したのなら仕方がありませんが、接種前から点頭てんかんかもしれない発作症状がある場合は、ロタワクチンやBCGの前に必ず相談して下さい。かかりつけ医さんにと言いたいところですが、小児科でもてんかんのことをよく知らない先生がいるので、この件に関しては私に相談して下さい!

なぜ小学1年生の夏休みがポイントなのか

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

前回の続きです。なぜ小学1年生の夏休みなのか。それはそれ以降も授業に参加出来ない、読み書きが出来ないことが続くと、今後の学業習得に大きく影響するからです。特に読み書きはすべての科目に関わってきますよね。

 

小学校入学以降の学業はとても大切です。発達障害に限りませんが、今後どれだけつまづいても(友人関係のこじれ、授業に参加できない、不登校などなど)、学業の遅れが著しくなければ焦ることなく時間をかけて解決していくことも可能です。しかし、学業不振があると社会性などの問題を解決させても、もとの生活に戻るときに障壁になり得るからです。もっと長い目で見ても、学業が出来るほど将来の選択の幅が拡がります。

 

ADHDアスペルガーなど自閉症スペクトラムではIQ120以上など極端に知能が高い子もいるので、そういう子は授業など受けなくても高成績を取れるから良いです。しかし平均的な知能でも多動性や学習障害がある子はそのために学業不振となり、本人の自己評価も下がり自信を失っていることが多いのです。適切な対応をすれば平均的な成績をとれるのに、もったいないことです。以前私の診ていた小3のADHDの子は、薬を増量したとたんに(当時はコンサータはまだなくリタリンを少量で他医により処方継続されていた)、テスト満点を連発して最下位からクラストップの成績に急上昇しました。もちろん環境調整という名の御膳立ても抜かりなく行ってからですよ。ちなみにその子は、その後半年以内に本人の希望で薬を中止しましたが、成績はトップクラスのままでした。

 

私の発達外来に来られている患者さんたち(の保護者)にはしつこく学業の重要性を話しています。学業さえ維持出来れば、学校に行けない時期が長くても、友達が一人もいなくても、ゆっくり時間をかけて解決していけば良いのです。小学校入学後は学業に対するケアが遅れないように注意しましょう。

小学1年の夏休みまでに立ち歩きが続く、読み書きが定着しない子は発達障害を疑わないといけません

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

7月半ばとなり、もうすぐ夏休みですね。小学1年生はこれまでの人生におけるかなり大きな環境変化の中でよく頑張ったのではないかと思います。夏休みはゆっくり休んで、たっぷり遊んで、リフレッシュさせてあげてください。

 

今回はその小学1年生の話です。入学したての頃は幼稚園保育園の延長で、授業中に騒いだり立ち歩いたり、教室から脱走したり、先生の指示も聞けない子も多いものですね。しかし夏休みの近付く頃になると落ち着いてきて、着席して授業を受けて先生の話も聞けるようになります。また入学までに自分から興味があって読み書きを習得している子が多くいる反面、全く文字や数字に興味を示さない子もいます。もちろん読み書きが出来ない子は初めに苦労しますが、授業で一番に教えられますから、通常であれば夏休みまでに平仮名の読み書きは定着してくるものです。

 

逆にこの時期にきても、授業中の立ち歩きや脱走をしているのであれば、注意欠陥・多動障害(ADHD)などを、読み書きが定着してこなければ学習障害(LD)や精神発達遅滞などを疑わないといけません。

 

理想は入学前の段階で発達障害(小学校で通常学級での活動に支障をきたす程度の)は診断されて、その子に合った対応を検討されておくべきです。しかし実際は難しいです、多動で少しも言うことを聞けない子が急激に落ち着いてくることが多いのも、入学する6歳前後の時期だからです。学習障害だって読み書きを指導されることがない環境ではわかりません。

 

私は基本的に発達障害の診断は必ずしも必要ではないと考えていますが、適切な対応をうけるためには必要になることもあります。ADHDもLDも脳の生まれついての機能や構造上の問題であるので、本人には何の責任もないし、努力させて解決するものではありません。視力の悪い人や難聴の人が努力しても見えるように、聞こえるようにならないのと同じです。すべての子どもたちには適切な環境下で情緒や知能の発達をしていく機会を得る権利があります。療育教室や特別支援学級といった環境、特性に合わせた学習方法、多動衝動性や過敏性を抑制する薬物治療などを受けるのに診断が必要なら、そこから保護者は逃げてはいけません。それを拒否することは視力の悪い人から眼鏡を、難聴の人から補聴器を取り上げるのと同じことなのです。

 

自分の子が発達障害を疑われて学校から受診を勧められたら、どんな親でも否定したくなるし、学校の努力不足じゃないか、わが子を薬漬けにして楽したいだけなんじゃないかと不信感も持つかもしれません(実際にそういう面がある可能性も否定できませんが)。しかし、発達障害の診断は「一生障害者」という烙印を押されることではありません。将来、社会人として自立できるように手助けすることの第一歩になるのです。何よりも子ども本人のために、診断を受けることを前向きに考えて欲しいと思います。