栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

38℃以下でなんで検査するねん!

こんばんは。「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。看護師、医療事務、脳波技師を引き続き募集中です。

 

「熱が38℃以下でも注意、「隠れインフルエンザ」かも」という見出しのヤフーニュースを見て、今頃あちこちでこの記事見て怒り狂っている小児科医がいるんだろうなって思いながら書いています。

 

インフルエンザって強力な感染力を持ったウイルスですからね、感染している人の近くにいればそりゃウイルスが体に入ってきます。そこで、その人のもともとの免疫力が強かったり、ワクチンの効果だったりでウイルスが増殖せずに症状も出ずに(またはとても軽症で)終わることも多々あるわけです。家族がインフルエンザで高熱が出たのに自分には何の症状も出なかったからといって、ウイルスが体に侵入しなかったというわけでは無いのです。

 

ですから、38℃以下なら風邪症状があったって、そこにインフルエンザウイルスがいようがいまいが、検査で陽性だろうが陰性だろうが、インフルエンザ感染症と思わなくて良いし、タミフルリレンザも不要ですからね。普通の風邪と同じように治ります。ていうか、なんで38℃以下で検査するねん!

 

38℃以下の隠れインフルエンザなんて記事出されたら、37℃ちょっとなのに喉が痛いだけでインフル検査して欲しいとかいう人が外来に殺到したらどうしてくれるんだと、私含めて小児科医(内科医もか)はみんな怒っています。迅速検査キット会社の陰謀かと思いましたよ。

絶対に誤接種をしないために

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」で看護師、医療事務、脳波技師それぞれ募集中の吉岡誠一郎です。

 

当院では午前9~12時、夕17~19時を一般外来とし、午後14~16時を予防接種または発達外来、最近では訪問診療にあてています。予防接種を一般外来と分けたのは、特に感染に弱い乳児が多く来られるからが大きな理由です。一般外来時間帯でも当院は待合、診察室ともに感染用と非感染用で分けているので、それだけでも感染予防にはなるのですが、より確実を期してのことです。

 

もう一つの理由は、一般外来中に予防接種をして業務が煩雑になって誤接種が発生するリスクを避ける目的でした。特に開業当初はスタッフ全員が慣れていないので慎重でした。予防接種ルールは本当におかしなところが多くて、例えば生ワクチン接種後4週間は他のワクチンを接種出来ないです。間違えて接種したらルール違反として、定期接種として行政から公費を受けられない上に、何らかの副作用で健康被害があった際の補償を受けられない可能性があります。同時接種として数分間隔で複数のワクチン接種は許されるのに、日付が変わったら誤接種になるのです。おかしな話です。でも、現状ルールなんだから仕方ありません。

 

最近では予防接種スケジュールやルールがスタッフの頭に染み込み、誤接種リスクが開院時よりはるかに小さくなっていると判断して、どうしても学校や仕事で夜遅くや土曜にしか来れない方のために一般外来中でも数を制限しつつも接種するようになりました。それでも当院ではこれまでのところ1回も誤接種はありません。事務の予約受付時、看護師の母子手帳確認、医師(私)の接種直前確認と何重にも、接種間隔、時期、量などチェックして接種しています。それでも、接種直前に間違いに気付かれたことは何度かありました。

 

ワクチン接種だけでなく診療全体でも、ミスを無くすためにはミスしにくいシステムを作ることも重要ではあるけど、一人一人がひょっとして間違えているんじゃないかと不安に思い確認する気持ちを持ち続けることが最も大切と思っています。人間なんだから間違えるのは仕方がないという言いわけが許されない医療の世界で、この心構えを忘れてはいけないと思っています。

headlines.yahoo.co.jp

インフルエンザの熱でおかしな言動が出たときは、

 

 

 

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。看護師、医療事務、脳波技師それぞれ絶賛募集中です。少しでも興味があればホームページ経由メッセージでも、facebook経由でも、直接お電話でも良いのでお気軽にご連絡ください。

 

インフルエンザもちらちら出てきて、今日も一人タミフル出しました。そんな中、タミフル他のインフルエンザ薬での異常行動に関して厚労省が通知を出すというニュースを見ました。これはまあ以前から言われていたことですが、異常行動がインフルエンザによるものとか高熱によるものとかではなく、薬の影響だとする根拠はどうなっているのでしょうね。無投薬群と投薬群で、熱の有無などの条件を揃えて比較した結果で、やはり薬が原因だということになったのでしょうか。

 

現場でもインフルエンザ患者さんの意味不明な言動を心配して受診される方は多いです、当院ではほぼ全例にインフルエンザと診断した際は、何らかの抗インフルエンザ薬を処方していますし、ほとんど発熱しているので(そりゃインフルエンザですからね)、正直どれが一番関連性があるかはわかりません。でも、おそらくは熱のせいだと思います。なぜなら解熱している患者さんにはほとんど見られないから。高熱のせいでおかしな言動が出るのを「熱せん妄」っていいます。他の風邪での熱でもありますが、なぜかインフルエンザの熱で多いので多少はインフルエンザウイルスの関与もあるんでしょう。不思議ですけどね。

 

インフルエンザで熱があるときに、意味不明な言動が出てきて心配になったら、とりあえず解熱剤で熱が下がったときにどうなるかを見てみましょう。解熱時にいつも通りであればまず心配ないと思います。脳炎などなら熱に関係なくずっとおかしいはずです。その時は急いで病院へ行きましょう。

訪問ワクチン接種のすすめ

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。看護師、医療事務、脳波技師ともにまだまだ募集中です。

 

久しぶりに小児在宅医療の話です。あんまり記事にしていませんが続けています。でも、これ以上訪問先を増やす余裕がなくて新規の受け入れはストップしています。ですから、発達外来と同じ状況とも言えるのでブログに書くのも少し恐縮してしまいます。とはいえ、たまには現状報告しようと思います。

 

一般外来とワクチン外来の合間をぬって定期訪問診療をしています。患者さんの状態が悪いときには、1時間に満たない休憩時間にダッシュで臨時往診して帰ってきたり、夜外来が終わってから訪問に行ったりもしていますが、どうにも外来を離れられず訪問看護師と相談して直接主治医の病院(当院ではなく)を受診してもらうこともしばしばです。そんなので小児在宅医療をやっていると言えるのか、在宅医療専門クリニックであればどんな時でも具合が悪くなればすぐに往診してあげるのだろうに、と思ったりもします。実際のところ在宅患者さんはどう思っているのかなと。

 

そんな折に、最近久しぶりに新規患者さんの訪問をしました。定期訪問は現在増やせない状況なのですが、その患者さんはインフルエンザワクチン接種だけお願いしたいとのことでした。何でもワクチン接種のために病院受診すると緊張して具合が悪くなってしまうそうで、慣れた自宅で接種して欲しいとのこと。それならお安い御用というわけで、お引き受けしました。とはいえ、自宅だから少しも緊張しないことは無いだろうし、自宅で状態が悪化したら怖いなと思いながら、1回目のときは終始和やかな空気を演出しつつ(出来ていたかどうかは別として)、モニターをチラチラ見ながら接種しました。病院でするよりずっと落ち着いていたとのことで安心しました。そのときは当院看護師も同行したのですが、2回目接種は都合がつかず私一人での訪問でした。接種時に急変があったときに医療者が一人だと不安だったので、訪問看護師さんにお願いして同じ時間に訪問してもらいました。おかげで2回目も無事終了し、そのときはお母様の接種もしました。在宅患者さんがいると家族もなかなか病院に行けないですからね、他の訪問先のご家族も訪問時に接種させてもらっています。

 

小児在宅医療はこういった需要もあるので、興味はあるが定期訪問までは無理という小児科クリニックさんは、訪問ワクチン接種だけでもやっていただければ喜んでくれる在宅患者さんは多いと思います。ぜひとも。今回みたく医者一人訪問でも訪問看護師さんが協力してくれますしね。

 

電動鼻汁吸引器のすすめ

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。看護師、医療事務、脳波技師ともにまだまだ募集中です。

 

寒さが本格的になってきて、まだインフルエンザはそれほど出てませんが、RSウイルスや夏風邪の手足口病プール熱までいろんな感染症が流行ってます。そういう流行りのウイルス感染は放っとけばそのうち治るのですが、放っといてもなかなか風邪症状が治らないのが保育園性鼻炎です。保育園や幼稚園に行っている子がずーっと咳鼻が続くものです。もちろん、そんな名前ありません、私が勝手に名付けているだけです。鼻水くらいならと開き直って放っていると、中耳炎や副鼻腔炎を繰り返します。治らないと言っていますが抗生剤を4-5日飲めばスパッと良くなります、でも1-2週間もするとまた鼻が出てきます。細菌検査をしてみるとヒブとか肺炎球菌といったワクチンでお馴染みの菌が出てきます。

 

おそらく抗生剤で菌を殺しても、鼻の中で少し生き残っているか、また保育園でお友だちからもらってきているのでしょうね。完全に菌がいなくなることはないようです。抗生剤が効くといっても2週毎に使い続けていればそのうち効かなくなります。耳鼻科の先生が次々と複数の抗生剤をかわるがわる使い続けてるのをよく見ますが、あまり効果的でないようです。結局、菌と共存していくしかないのですよね。

 

でも菌がいても中耳炎や副鼻腔炎にならなければ良いわけで、つまり耳や鼻の奥に膿(鼻水)が溜まらないようにすれば良いのです。大人のように鼻をかんで外に出すのが出来ると良いですが、乳幼児はそれが出来ないのでくしゃみでもしない限りは溜まりっぱなしです。当院では鼻水がたまってると出来るだけ奥まで吸引して帰っていただいています。薬飲むより多分最も効果的。でも半日もしないうちにまた溜まっていることでしょう。毎日通院してもらって鼻吸引するのも良いですが、それも大変ですよね。お母さんが口で吸いあげる鼻汁吸引器も市販されていますが、吸引力が弱いせいかあまり効果的でないようです。

 

もう思い切って電動鼻汁吸引器を各家庭で購入されたら良いと思います。アマゾンで安いので1.5万円くらいで出てました。1.5万円って難しい額ですよね、高いといえば高いけど、これで鼻炎や中耳炎が減って、たびたび受診したり、薬を飲ませる手間が無くなることを思えば安いんじゃないかとも思います。お父さんに忘年会を1回分あきらめてもらって、おじいちゃんからのお年玉を足せば何とか買えませんかね。もしくは乳幼児世帯に行政が支給するとか。医療費削減にもなるし、抗生剤処方も減って耐性菌も減らせるんではないでしょうか。

 

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脳の機能異常のために気が付いたら動いてしまっている子に、言い聞かせて出来るようにさせようとするのは

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。看護師、医療事務、脳波技師ともにまだまだ募集中です。

 

発達外来は新患をストップしているのに発達障害に関して記事を書くのは気が退けるのですが、需要があるみたいのなので、たまには書こうと思います。自閉症スペクトラムASD)はそれそのものを理解するところからして難しい上に、患者さん個々でも大きく異なることが多いので、一律にどう対応するかを論ずるのは難しいのですが、ADHD(注意欠陥・多動障害)は比較的理解しやすいです。ADHDASDが併存している子も多いので簡単ではないですが、今回はADHD(特に多動優勢)のみあってASDや知的障害(MR)の要素が少ない例に関して考えてみようと思います。

 

通常私たちは目や耳から入ってくる情報・刺激を、ほぼ無意識に脳で必要か不要かを判断して生活しています。周りで話をしている他人がいても、テレビがつきっぱなしでも、目前の会話相手の言葉を理解することが出来ます。ADHDの子たちはそれが難しい、どんどん入ってくる視覚聴覚の情報・刺激を脳で上手く処理できない、それで気が付いたときには目前の会話相手をそっちのけで、刺激にまっしぐらに向って行ってしまいます。ポイントは気が付いたら動いてしまっているというところです。保護者や先生たちはADHDの子に、席から立ち歩いてはいけません、列から離れてはいけませんと、懇々と言い聞かせるかもしれません。そのときは彼らは素直に聞いてても、再度実際に現場に入ると刺激に引っ張られて、立ち歩き、列から離れてしまいます。もう一度言います、気が付いたら動いてしまっているのです。

 

脳の機能異常のために気が付いたら動いてしまっている子に、言い聞かせて上手く出来るようにさせようとするのは、眼の見えない人によく見るように言い聞かせること、耳の聞こえない人によく聴くように言い聞かせるのと同じことなのです。全く無意味ですよね。これで上手く出来ない度に叱られていたら自己評価は下がる一方です、高い可能性で症状は悪化していきます。

 

じゃあ、どうすれば良いか?

 

一つはまず入ってくる余計な刺激を減らすことです、周囲に人がたくさんいて好き勝手行動していて、おもちゃがごちゃごちゃに散らばっていて、テレビが点いていてという状況ではADHDの子は刺激が多すぎて処理できません。だから刺激を減らすのです、少ない人数、静かな環境、整然とした部屋など。通常学級でADHDの子を最前列で教師の目の前の席にするのは、この最も初歩的な方法です。後ろの席では他児の様子が、窓際や廊下側では外の様子が気になってしょうがありません。必要であれば特別支援学級に移ることも、長い将来を考えればためらうべきではありません。刺激の少ない環境で、少しずつ刺激を調整する訓練をするのです。完全に出来るようにならなくても将来社会で自立していけるレベルには持って行けます。

 

もう一つは薬物療法です。ADHDだけ(ASDやMRや学習障害やいじめや虐待などが無い)の児で最も効果が出ます。眼の見えない人の眼鏡に、耳の聞こえない人の補聴器に匹敵するほどです。これは上述の外部刺激を減らすという努力との併用が前提です。通常学級に押し込んでおくために投薬しようとする保護者や先生がいますが、それこそ本末転倒です。

 

あと、薬物治療に関して重要なことがあります。保護者が十分納得理解していない段階で薬を始めては絶対にいけません。学校が保護者に薬を飲むように説得しようとするケースを時々見かけます(教育者として薬に頼らずに良くしてみせるくらいのプライドを少しは持って欲しいもんですが)。子ども本人は自分の状況をよく理解出来ていないので服薬を希望させるまで持って行くのは難しいこともありましょうが、少なくとも保護者が疑問を持っていたら上手く行きません。

 

まとめます。必要なのは、刺激を少なくして落ち着いて行動しやすい環境を調整すること、保護者が十分納得した上での薬物療法です。希望を持って愛情かけて根気よく言い聞かせ続けても、出来る日は来ないかもしれません。だって、気が付いたら動いてしまっているんですから。

子どものてんかんについての講演会します

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

告知です。以下のように講演会します。まだぼんやりとしか決めてませんが、あまり教科書的なことばかりでなく、なるべく具体的な症例を多く紹介して「てんかん」という病気の見通しを持てるような内容にしようと思ってます。

 

ご興味、お時間おありの方はどうぞ。

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