栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

発達障害と薬物治療と製薬会社と

今日、税理士先生と話をしていて発達障害とかアスペルガーとかいう言葉が出てきたのでびっくりしました。ずいぶんと広まったものです。今から10年以上前頃には小児科の中ではトピックスではありましたが、一般にはまだまだ知られていませんでした。そのわかりにくい概念からほとんどの小児科医は、外来に患者が来たら腫れ物にでも触るように専門外来へまわしていました(子育て相談とか標榜している開業医までも!)。小児科医としてプライドのかけらも無いなと軽蔑していました。

 

いろんな事情でそれまでのメインの治療薬であるリタリンが使えなくなり、剤形が変わって2007年にコンサータが出てきました。桁外れの薬価とともに。その2年後の2009年には新しい薬であるストラテラが出てきました、これまた凄まじい薬価とともに。凄まじいのは薬価だけではありませんでした、それまで見向きもしなかった製薬会社が物凄い勢いで宣伝し始めました。まず医者から。それまで全く手を出さずに専門外来に押し付けてた小児科医に対して、薬を処方すれば誰でも治せるよって。勘違いした小児科医も薬を処方して自分が治したような気になってしまいました。これがもしてんかんであれば、診断が間違っていれば通常薬は効きませんが、困ったことに発達障害に関してはコンサータストラテラも診断が間違っていてもいくらか症状が良くなるんです。たとえ、発達障害に見える症状が他の重大な病気であったり、虐待の影響であったとしても。

 

そのうち、製薬会社は一般市民に対しても「発達障害は薬を飲むだけで治る、飲まないと治らない」というような宣伝を始めます。先の勘違いした小児科医も薬を飲むように本人と家族に説得するという治療を始めました。学校の先生たちまで、「おたくの子は発達障害だから病院行って薬出してもらって来てください」と平気で言うようになりました。それでも当初はこれらの薬は成人に適応はありませんでした(成人になるまでに止めないといけないってこと)。そう言われなくても、もともと専門でやっていた私たちは薬物療法は開始しても、早期終了を目指して日々のカウンセリング、周囲への指導を積み重ねてきました。薬を出すことで治療した気になってる軽蔑すべき医師たちは、もちろんそんなこと出来ないので、製薬会社と一緒になり成人適応を通してしまいました。これで患者は一生受診し続けるし、薬も売れ続けることになりました。

 

私は決してアンチ薬物派ではないです、状況によっては薬物治療を勧めることがあります。ただし、これらの薬の長期的な悪影響がわかっていない現状では恐る恐る使い、出来れば早期終了を目指しています(少なくともコンサータは誰がなんと言おうと覚醒剤ですからね!)。あえて、薬を使わずに治療をしたいという希望があればそれに付き合います。決して、みんなして薬を飲むように説得することはありません。一部の学校関係者の方には申し訳ありませんが。

 

もうブログ始めて1ヶ月が過ぎたし、たまには強気記事も良いかと思って書いてみました。