栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

相手の目を見て挨拶なんか出来なくていい

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

この日曜は東京に乳幼児健診の研修に行ってました。講演者の1人は以前私が発達障害の勉強のため、外来に付いて教えていただいた先生でした。その講演の中で、健診の時に子どもと話すときはface to faceではなくside by sideの方が(つまり正面から顔を見て話すのではなく)、子どもは緊張せずに話が出来るって話をされていました。そういえば、私がその先生の外来に付いた1日目に、自閉症の診察は目を合わせて話しかけてはだめだよって教えてもらったことを思い出しました。かれこれ10年以上も前の話です。

 

自閉症の子は視線を合わせないっていうのは結構有名な話ですね、乳児期から見られることもある特徴です。目を合わすことに不安を感じるようです。これは感覚的なものなので、簡単には治しようがありません。

 

以前、自閉症の子が通う幼稚園の先生が、「まずは朝、目を合わせて挨拶することを目標にしたいと思います」と、意気揚々に言われたのでびっくりしたことがあります。なるほど、目を合わすのが苦手だからそれを練習させようということみたいで。その先生は目を合わせることはコミュニケーションの基本だと思っているようでした。

 

「挨拶は目を合わさないでも出来たら良しとしてあげて下さい、お辞儀しながらだったら違和感ないでしょう。」とお願いしました。

 

発達障害の子の苦手なことは感覚的(生まれつきで変えようのないものと言う方が分かりやすいでしょうか)なものが多いので、練習して治すには相当な苦痛を伴います。あなたが黒板を爪で引っ掻く音になれるように毎朝聞かされるのと同じです。慣れる前に精神がおかしくなりそうですね。

 

発達障害の子(大人も)が生きやすくするには、彼ら自身が苦手なことを上手に避けて生きていく術を身につけることと、また、多くの人には簡単なことでもそれを苦手で出来ない人がいることを許容する社会にしていくことだと思います。