栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

風邪の後になんだか寝てばかりいる、ぼーっとしてる、へんてこな言動をするときは、亜急性脳炎かもしれません

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

私は専門施設で小児の神経分野を研修した後は、大学病院などで急性期の神経疾患を主に診ていました。その中で「脳炎/脳症」をしばしば診ることになりました。どういうものかというと、主にウイルス感染により脳が壊されていく病気です。意識障害や痙攣などを起こして、多くは後遺症を残し、ひどいときは植物状態や亡くなることもあります。もともと体が弱い子がなりやすいということもなく、数日前まで元気だった普通の子どもにいきなり発症します。有効な治療はほとんどありません。インフルエンザ、ロタ、水痘、おたふく、アデノ、、など皆さんが少しでも名前に聞き覚えのあるウイルスは、ほとんどすべて脳炎に伸展する可能性があります。

 

ちょっと医療に詳しい一般の方や専門でない医師の方も、脳炎はいきなり痙攣から始まって意識障害が進んでという、急激に発症するイメージを持っているかもしれませんが、実はそうでない経過も多いのです。カゼで熱が続いた後に、解熱して落ち着いてきのだが、数日しても何となく元気がなくぼーっとしたり、寝てばかりいる、おかしなことを言ったり、変な行動をとるなど。病院を受診しても、初期だと会話も出来て、これといった異常を認めないから帰されるのだけど(ひどい例だと心療内科に紹介されて精神病薬を出されていた子もいました)、家族からみるとやっぱりおかしいという状況が続いて、とうとうけいれん重積など起こして病院に運ばれてくるといった感じ。そこまで進んでから治療開始してもほぼ手遅れです。

 

こういう脳炎のことを「亜急性脳炎」と言ったりするのですが、これに本当に悩まされてきました。出来るだけ早い段階で治療に入れると軽症で済むことが多いのですが、受診しても早い段階で気付ける開業医も少なく(そもそもそういう脳炎の存在もあまり知られてない)、私自身も確実に見分ける方法がわかりません。ただ、勘を頼りに疑わしければ入院でMRIや脳波を録りながら異変の出現に備えるくらいです。

 

ここ最近なぜかそういった、感染症後で何となく元気がなく寝てばかりいるという患者さんに続けて出くわしています。病院勤務なら不安なら入院で診ることも出来るのですが、クリニックではそれは簡単ではありません(とはいえ、1人は入院させてもらいましたが)。自分の神経科医として技術と経験と勘をフル稼働して診ていますが、なかなか大丈夫と断言できません。病院紹介にしないときは、自宅でどういう点に注意して観察して、どうなったらすぐにまた受診してもらうかを説明して帰ってもらっていますが、そういう子を診た日の夜は私も気になって悶々と過ごすことになります。