栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

小学1年の夏休みまでに立ち歩きが続く、読み書きが定着しない子は発達障害を疑わないといけません

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

7月半ばとなり、もうすぐ夏休みですね。小学1年生はこれまでの人生におけるかなり大きな環境変化の中でよく頑張ったのではないかと思います。夏休みはゆっくり休んで、たっぷり遊んで、リフレッシュさせてあげてください。

 

今回はその小学1年生の話です。入学したての頃は幼稚園保育園の延長で、授業中に騒いだり立ち歩いたり、教室から脱走したり、先生の指示も聞けない子も多いものですね。しかし夏休みの近付く頃になると落ち着いてきて、着席して授業を受けて先生の話も聞けるようになります。また入学までに自分から興味があって読み書きを習得している子が多くいる反面、全く文字や数字に興味を示さない子もいます。もちろん読み書きが出来ない子は初めに苦労しますが、授業で一番に教えられますから、通常であれば夏休みまでに平仮名の読み書きは定着してくるものです。

 

逆にこの時期にきても、授業中の立ち歩きや脱走をしているのであれば、注意欠陥・多動障害(ADHD)などを、読み書きが定着してこなければ学習障害(LD)や精神発達遅滞などを疑わないといけません。

 

理想は入学前の段階で発達障害(小学校で通常学級での活動に支障をきたす程度の)は診断されて、その子に合った対応を検討されておくべきです。しかし実際は難しいです、多動で少しも言うことを聞けない子が急激に落ち着いてくることが多いのも、入学する6歳前後の時期だからです。学習障害だって読み書きを指導されることがない環境ではわかりません。

 

私は基本的に発達障害の診断は必ずしも必要ではないと考えていますが、適切な対応をうけるためには必要になることもあります。ADHDもLDも脳の生まれついての機能や構造上の問題であるので、本人には何の責任もないし、努力させて解決するものではありません。視力の悪い人や難聴の人が努力しても見えるように、聞こえるようにならないのと同じです。すべての子どもたちには適切な環境下で情緒や知能の発達をしていく機会を得る権利があります。療育教室や特別支援学級といった環境、特性に合わせた学習方法、多動衝動性や過敏性を抑制する薬物治療などを受けるのに診断が必要なら、そこから保護者は逃げてはいけません。それを拒否することは視力の悪い人から眼鏡を、難聴の人から補聴器を取り上げるのと同じことなのです。

 

自分の子が発達障害を疑われて学校から受診を勧められたら、どんな親でも否定したくなるし、学校の努力不足じゃないか、わが子を薬漬けにして楽したいだけなんじゃないかと不信感も持つかもしれません(実際にそういう面がある可能性も否定できませんが)。しかし、発達障害の診断は「一生障害者」という烙印を押されることではありません。将来、社会人として自立できるように手助けすることの第一歩になるのです。何よりも子ども本人のために、診断を受けることを前向きに考えて欲しいと思います。