栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

なぜ小学1年生の夏休みがポイントなのか

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

前回の続きです。なぜ小学1年生の夏休みなのか。それはそれ以降も授業に参加出来ない、読み書きが出来ないことが続くと、今後の学業習得に大きく影響するからです。特に読み書きはすべての科目に関わってきますよね。

 

小学校入学以降の学業はとても大切です。発達障害に限りませんが、今後どれだけつまづいても(友人関係のこじれ、授業に参加できない、不登校などなど)、学業の遅れが著しくなければ焦ることなく時間をかけて解決していくことも可能です。しかし、学業不振があると社会性などの問題を解決させても、もとの生活に戻るときに障壁になり得るからです。もっと長い目で見ても、学業が出来るほど将来の選択の幅が拡がります。

 

ADHDアスペルガーなど自閉症スペクトラムではIQ120以上など極端に知能が高い子もいるので、そういう子は授業など受けなくても高成績を取れるから良いです。しかし平均的な知能でも多動性や学習障害がある子はそのために学業不振となり、本人の自己評価も下がり自信を失っていることが多いのです。適切な対応をすれば平均的な成績をとれるのに、もったいないことです。以前私の診ていた小3のADHDの子は、薬を増量したとたんに(当時はコンサータはまだなくリタリンを少量で他医により処方継続されていた)、テスト満点を連発して最下位からクラストップの成績に急上昇しました。もちろん環境調整という名の御膳立ても抜かりなく行ってからですよ。ちなみにその子は、その後半年以内に本人の希望で薬を中止しましたが、成績はトップクラスのままでした。

 

私の発達外来に来られている患者さんたち(の保護者)にはしつこく学業の重要性を話しています。学業さえ維持出来れば、学校に行けない時期が長くても、友達が一人もいなくても、ゆっくり時間をかけて解決していけば良いのです。小学校入学後は学業に対するケアが遅れないように注意しましょう。