栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

子宮頚がんワクチンを始めます

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

突然ですが、子宮頚がんワクチンを始めようと思います。今までも止めていたわけではありませんでしたが、問題になっている副作用に関して一部は心因反応とは思えない患者さんがいることから、まさに国と同じ様に積極的に勧めることはしませんでした。しばらく様子を見てれば何かわかってくるかもしれないと他力本願で待っていましたが、状況は変わりそうにありません。このままではワクチンにより子宮頚がんから守られる機会を、女の子たちから奪うことになります。このままで良いわけがありません。

 

先日、ワクチン販売会社の担当者にお願いして子宮頚がんワクチンの勉強会をしました。まず一人の女性が生涯で子宮頚がんを発症する率は1.3%(76人に1人)です、このがんの原因は性行為などで感染するヒトパピローマウイルスによるものです。このウイルスにはたくさんの型がありますが、その6割を占めるのはHPV16型、18型であり、この型のウイルス感染を防ぐのが子宮頚がんワクチンです。何もしなければ1.3%で子宮頚がんになるところを、ワクチンで原因となるウイルス感染を半分以下の確率に減らすことが出来ます。これが接種するベネフィットです。

 

一方で接種した方の0.08%で副反応が発生し、回復していない重症例は0.005%です。副反応といっても失神なども含む様です、注射で気持ち悪くなって失神する人くらいいくらでもいるし、このワクチンの副反応とすること自体が不思議です。回復していない重症例も私の個人的な予想では多くが心因反応であり、ワクチンとは無関係と思います。だから多く見積もって0.005%です。それでもかなり低い確率と思いますが、他のワクチン副作用における重症後遺症の確率はもっともっと低いので、そこが長らく私がひっかかっていたところです。

 

0.005%の回復しない副作用のリスクのために、76人に1人が将来罹患する子宮頚がんを予防する機会を捨てるかどうか。私は断然接種すべきと思います。そのために出来るだけわかりやすく本当の情報を伝えて、接種を決断して欲しく思っています。でも、最後に決めるのは接種する本人または保護者です。

 

実際に本格的に開始する際はホームページなどで告知させていただきます。

点頭てんかんを疑った時はロタワクチンやBCGを接種する前に必ず相談して下さい

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

最近なぜか赤ちゃんの点頭てんかん(west症候群)疑いの患者さんが相次いでいます。どういう症状かというと、ビクンと両手を伸ばして、頭もうなづくようにする一瞬の発作で気付かれます。モロ反射という音などにびっくりして同じような動きをする無害の不随意運動もありますが、モロと違って何の音も無いのにビクンとするようになり、ネットを調べると点頭てんかんが出てきて心配されて受診されます。

 

典型例だと発達退行(笑わなくなったり、目で追わなくなるなど)を伴ったり、シリーズ化といって発作が連続して短い時間に続くことが多いので、それらが無ければほぼ点頭てんかんでは無いのですが、なかなか症状と診察だけでは完全否定はしづらいです。もし本当に点頭てんかんなら治療開始の遅れが一生に関わる脳障害を引き起こすので、我々も慎重になります。ただこのてんかんは脳波がとても特徴的なので、ほんの短い時間でも脳波が録れれば確実に白黒つきます。ですから、点頭てんかんを疑う患者さんが来られた時は、しのごの言わずに早めに脳波を録るようにしています。

 

もし点頭てんかんだった場合は多くで特効薬的な免疫療法が行われます。それで気になったのはワクチンです。ヒブ、肺炎球菌、四種、B肝などの不活化ワクチンは良いですが、ロタワクチンやBCGなどの生ワクチン接種後だと、しばらくその免疫療法が出来ないことがあり治療が遅れてしまうのです。前述のように点頭てんかんは治療が遅れると修復困難なダメージを脳に与えます、だから治療は少しでも早く開始しないといけないのにです。

 

接種してしまった後に発症したのなら仕方がありませんが、接種前から点頭てんかんかもしれない発作症状がある場合は、ロタワクチンやBCGの前に必ず相談して下さい。かかりつけ医さんにと言いたいところですが、小児科でもてんかんのことをよく知らない先生がいるので、この件に関しては私に相談して下さい!

なぜ小学1年生の夏休みがポイントなのか

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

前回の続きです。なぜ小学1年生の夏休みなのか。それはそれ以降も授業に参加出来ない、読み書きが出来ないことが続くと、今後の学業習得に大きく影響するからです。特に読み書きはすべての科目に関わってきますよね。

 

小学校入学以降の学業はとても大切です。発達障害に限りませんが、今後どれだけつまづいても(友人関係のこじれ、授業に参加できない、不登校などなど)、学業の遅れが著しくなければ焦ることなく時間をかけて解決していくことも可能です。しかし、学業不振があると社会性などの問題を解決させても、もとの生活に戻るときに障壁になり得るからです。もっと長い目で見ても、学業が出来るほど将来の選択の幅が拡がります。

 

ADHDアスペルガーなど自閉症スペクトラムではIQ120以上など極端に知能が高い子もいるので、そういう子は授業など受けなくても高成績を取れるから良いです。しかし平均的な知能でも多動性や学習障害がある子はそのために学業不振となり、本人の自己評価も下がり自信を失っていることが多いのです。適切な対応をすれば平均的な成績をとれるのに、もったいないことです。以前私の診ていた小3のADHDの子は、薬を増量したとたんに(当時はコンサータはまだなくリタリンを少量で他医により処方継続されていた)、テスト満点を連発して最下位からクラストップの成績に急上昇しました。もちろん環境調整という名の御膳立ても抜かりなく行ってからですよ。ちなみにその子は、その後半年以内に本人の希望で薬を中止しましたが、成績はトップクラスのままでした。

 

私の発達外来に来られている患者さんたち(の保護者)にはしつこく学業の重要性を話しています。学業さえ維持出来れば、学校に行けない時期が長くても、友達が一人もいなくても、ゆっくり時間をかけて解決していけば良いのです。小学校入学後は学業に対するケアが遅れないように注意しましょう。

小学1年の夏休みまでに立ち歩きが続く、読み書きが定着しない子は発達障害を疑わないといけません

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

7月半ばとなり、もうすぐ夏休みですね。小学1年生はこれまでの人生におけるかなり大きな環境変化の中でよく頑張ったのではないかと思います。夏休みはゆっくり休んで、たっぷり遊んで、リフレッシュさせてあげてください。

 

今回はその小学1年生の話です。入学したての頃は幼稚園保育園の延長で、授業中に騒いだり立ち歩いたり、教室から脱走したり、先生の指示も聞けない子も多いものですね。しかし夏休みの近付く頃になると落ち着いてきて、着席して授業を受けて先生の話も聞けるようになります。また入学までに自分から興味があって読み書きを習得している子が多くいる反面、全く文字や数字に興味を示さない子もいます。もちろん読み書きが出来ない子は初めに苦労しますが、授業で一番に教えられますから、通常であれば夏休みまでに平仮名の読み書きは定着してくるものです。

 

逆にこの時期にきても、授業中の立ち歩きや脱走をしているのであれば、注意欠陥・多動障害(ADHD)などを、読み書きが定着してこなければ学習障害(LD)や精神発達遅滞などを疑わないといけません。

 

理想は入学前の段階で発達障害(小学校で通常学級での活動に支障をきたす程度の)は診断されて、その子に合った対応を検討されておくべきです。しかし実際は難しいです、多動で少しも言うことを聞けない子が急激に落ち着いてくることが多いのも、入学する6歳前後の時期だからです。学習障害だって読み書きを指導されることがない環境ではわかりません。

 

私は基本的に発達障害の診断は必ずしも必要ではないと考えていますが、適切な対応をうけるためには必要になることもあります。ADHDもLDも脳の生まれついての機能や構造上の問題であるので、本人には何の責任もないし、努力させて解決するものではありません。視力の悪い人や難聴の人が努力しても見えるように、聞こえるようにならないのと同じです。すべての子どもたちには適切な環境下で情緒や知能の発達をしていく機会を得る権利があります。療育教室や特別支援学級といった環境、特性に合わせた学習方法、多動衝動性や過敏性を抑制する薬物治療などを受けるのに診断が必要なら、そこから保護者は逃げてはいけません。それを拒否することは視力の悪い人から眼鏡を、難聴の人から補聴器を取り上げるのと同じことなのです。

 

自分の子が発達障害を疑われて学校から受診を勧められたら、どんな親でも否定したくなるし、学校の努力不足じゃないか、わが子を薬漬けにして楽したいだけなんじゃないかと不信感も持つかもしれません(実際にそういう面がある可能性も否定できませんが)。しかし、発達障害の診断は「一生障害者」という烙印を押されることではありません。将来、社会人として自立できるように手助けすることの第一歩になるのです。何よりも子ども本人のために、診断を受けることを前向きに考えて欲しいと思います。

2ヶ月のワクチンデビュー赤ちゃんの2割以上に治療が必要な湿疹が見られます

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

生まれたばかりの赤ちゃんに、私たち小児科クリニックが初めてお会いするのが2ヶ月のデビューワクチンの時であることが少なくありません。その場はワクチンだけ行う外来ですが、何かしらの問題に気がついて保護者に確認することもしばしばでちょっとした2ヶ月健診になっています。


体重増加不良やへそヘルニア(出べそ)などを見かけますが、最も多いのは皮膚の問題です、ざっと全体の2-3割くらいでしょうか。かなりひどい湿疹でも、お母さんにその自覚がなくて放置してるか、保湿剤を塗っているのみの方が多いです。

 

ワクチン接種後に次回接種の説明後、ところでこの湿疹は、、、。といった感じで話をして、治療意思を確認出来れば具体的な治療の説明をします。薬の塗り方が最も大切なので一番に説明します。スキンケア(保湿剤の使い方、ワセリンパックとか)や体の洗い方なども知っておいて欲しい重要事項ですが、いっぺんにたくさん説明されても実行出来ないことが多いので、とりあえず湿疹の薬(ステロイドなど)である程度良くしてから、次回受診時(ひどめの時は1週間以内)にさらにスキンケアなどの説明を加えて行きます。

 

2ヶ月くらいならその時点でかなりひどい湿疹でも、適切な治療でほとんどきれいに出来ます。しかし、昨今常識くらいに言われている、乳児期早期の荒れた皮膚が食物アレルギーの原因になっている説を考えると、もっと早く治療に入れれば食物アレルギーも確実に防げたかもしれないと思うと残念に思います。


生まれて2ヶ月間くらいは急激に皮脂量が変化するので、皮膚の状態も変化が激しいのです。1ヶ月健診の時はごく軽い湿疹でも、その後に急に悪化することも多いです。生後から2週間毎くらいに健診をするようにすれば、皮膚を正常に保つだけでなく、体重増加不良やへそヘルニア(必ずしもテープ圧迫療法は必要ではないですが)にも早めに気づくことが出来て良いんじゃないかと思ってます。

ワクチンを否定するおじいちゃん、おばあちゃんの意見に耳を貸す必要はありません。

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

子どもを育てる上で、祖父母(保護者の父母)の助言というのは時にとても頼りになるものですね。そりゃ子育ての先輩ですからね。保護者のあなたよりも1人か2人か3人か(多くても5人くらい?)多く子どもを育てて来られていますからね。

 

ちょっと皮肉っぽいですね。いえ、確かに1人でも育てた経験があるだけで全然違うことがらもあります、夜中に熱が出た時の対処とかね。でも、数人育てた経験から言われるワクチンに関する祖父母の助言は全く意味はありません。

 

そもそもワクチンは数十〜数千人に1人とかに発生する重篤な事態を予防するものです。数人の経験から語れることは何もありません。

 

「私たちの時代にはそんなの無かったけど大丈夫だったから、そんなワクチン受けなくてもいい」という、おじいちゃん、おばあちゃんの意見には全く耳を貸す必要ありません。お父さん、お母さん自身が、かかりつけ医の説明を聞いたり、信用できる医療機関(国公立など)のサイトで調べるなどして、納得されれば接種すれば良いのです。

 

そして、もしかしてこれを読んでるかもしれない、ワクチンを否定する祖父母の方へ。あなたの子どもが大丈夫だったのは運が良かっただけです。お孫さんが不運から守られる機会を奪わないで下さい。

勇気を出して子宮頚がんワクチンを始めないといけない時期が来ているのか

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

下のリンクのように久しぶりに子宮頚がんワクチンの記事がありました。子宮頚がんワクチンに関して、私は基本的に慎重派です(反対派ではない)。そう言うとかっこ良く聞こえますけど、要するに怖くて接種出来ないというヘタレ小児科医です。

 

ワクチンの副反応とされている患者さんのほとんどは心因性であって全く接種に問題は無いという主張は少しわかります。確かに全報告数のうちの多くが頭痛とかめまいとかっていう、まあ思春期女子によくある不定愁訴の子たちかなという患者さんのようですが、不随意運動(体が勝手に動く)や知能障害、歩行障害など示す患者さんは、思春期によくある症状とはとても思えない。

 

やっぱり私はこのワクチンには何かあるんじゃないかと思ってしまうんです。けれども冷静にそういった重篤な副反応かもしれない症状が出現するリスクと、子宮頚がんを発症するリスクを天秤にかけると、誰がどこから見ても子宮頚がんワクチンは接種すべきなのです。

 

数年待てば何かわかるかな、私のこの不安が解消するかな(他力本願ですいません)と思い、接種を特に勧めることなく時間を過ごしました。でも何も進展しないし、推進派と反対派の醜いディスりあいが続いているだけです。

 

上述のようにリスク(確率)を冷静に判断して、そろそろ勇気をだして接種を拡げていく時期が来ているのかなと思うようになってきました。私たち医療者は自分の感覚だけでなく客観的データも合わせて総合的に判断して、子どもたちの将来も含めた健康を守る義務があるのですから。

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