栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

終戦記念日を前に、知らないことの恐ろしさ、知ることの大切さを改めて考えました

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

今日は夏季休診明けで予想はしていましたが、患者さんがとても多くて、それにしても多すぎるなと思って確認したら、近隣の多くの小児科耳鼻科がお盆休みでした。夜診療はかなり早い段階で予約停止になってしまいました。申し訳なかったです。それでも最後の患者さんが終わったのはとっくに21時をまわっていました。

 

私は沖縄が好きで、ここ20年近くほぼ毎年行ってるんですが、今年初めて戦跡の一つであるひめゆりの塔に行ってみました。塔があって簡単な資料館があるくらいかと思ってたら、全然違ってかなり見応えのある資料館でした。膨大なひめゆり学徒隊の生の声の記録を見ているうちにあっという間に時間が過ぎてしまい、そのあとに平和祈念公園(書きながら気づいたのですが記念じゃなくて祈念なんですね)や斎場御嶽にも行くつもりにしてたのが全部取りやめになってしまいました。

 

中でも、ある学徒の「あの時代にあっても、本当の戦争というものを知ってはいなかった、知らないままに戦場に入っていってしまった」という言葉が最も印象に残りました。今の日本にあって本当の戦争を知っている人なんてほとんどいなくて、その知らない人たちどうしで、軍備増強だの憲法改正だの決定されていくのって本当に恐ろしいことだと思いました。

 

知らないことの恐ろしさ、知ることの大切さを改めて考えることになりました。広島の原爆資料館は有名ですが、ひめゆりの塔資料館にも機会があればぜひ皆さんに行って欲しいと思います。那覇からリゾートホテルエリア(読谷村恩納村あたり)に行くよりずっと近いですから。

訪問看護ステーション「かたつむり」は、原因となった病気や事故などが発生したときから退院するまでの、本人家族、病院スタッフの気持ちにも想像して寄り添える、そして在宅へ移行してからのことを安心して任せてもらえる訪問看護を目指します

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

うち、1年ほど前に訪問看護ステーション「かたつむり」を開設しました。

 

もともとクリニックを開業したら小児在宅医療をやろうと思っていて、人にもそう言っていたし、実際に開業間もなく在宅医療を始めたのですが、いろんな事情で当初思い描いていたように十分には出来ずに、今でも細々とは続けてはいますが、期待してくれてた関係者さんたちには申し訳なく思っていたのです。そこにあるきっかけで、訪問看護という形で小児在宅医療に貢献する方法に気付いて開設することになったのです。

 

経営母体はうちの医療法人ですが、独立した訪問看護ステーションで、赤ちゃんから高齢者まで幅広く訪問しています。主治医は他の病院におられてもお住まいが近隣の患者さんは、ワクチンやちょっとした体調不良などで当クリニックを受診されている方も多いです。

 

そもそもなぜ、小児在宅医療に関心をもったかといいますと、あるエピソードがありました。今から10年近く前で、誰も覚えてないでしょうけど、私は未だにモヤモヤしてる話です。とある小児在宅医療について話し合う会で、ある小児在宅患者さんを多く診ているクリニックの先生が、「退院して在宅医療に移行した経管栄養の患者さんで1日6回注入の子がいる。1日6回の注入がどれだけ家族に負担がかかるか、退院させた病院のスタッフはわかってないんじゃないか」といったことを発言されました。(何かしらの病気などで脳に傷害を受けた子は循環や呼吸状態が落ちついても、口から食べるのが難しくて鼻から胃への管を入れたまま退院することも多いのです)

 

わかってないのはこの先生の方です。退院させた病院スタッフは何も考えず6回注入で自宅に返したわけがありません。何度も注入回数を減らす試みを繰り返してるに違いありません、ですがこれが1回量を増やして回数を減らすと必ず嘔吐したり、心拍や血圧が変動して苦しくなってしまうことが多いのです。それでも、本人にとって早く家族との生活に戻ることは情緒的な発達においても重要なことであるし、家族も負担は受け入れてでも出来るだけ自宅で看たいと希望されることも多いです。家族に負担がかかることを心苦しく思い、良い状態で退院させてあげられなかった責任を感じながら在宅へ送り出した病院スタッフのことをちっとも想像出来ないんだろうなと思いました。

 

退院後在宅医療に携わるのは、入院中からの、もっといえば原因となった病気や事故などが発生したときから退院するまでの、本人家族、病院スタッフの気持ちを想像して寄り添える、そして在宅へ移行してからのことは任せたよって病院スタッフに思ってもらえるような医療者であって欲しいです。そして、そういう訪問看護ステーションになることを目指していこうと思います。それにはまだまだ協力してくれるスタッフが必要で随時募集中です。共感してくれる看護師、理学療法士作業療法士の方で興味がある方はお気軽にお問合せください。

 

 

ADHDの薬をだまされたと思って始めてみたら、やっぱりだまされたと思うかもしれない

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

外来で、他の医療機関ADHD(注意欠陥・多動障害)の診断をされて、投薬を勧められてるが悩んでいると相談をうけることがしばしばあります。コンサータストラテラ、インチュニブとかです。確かに精神科で使うような薬だし副作用なども含めて、便秘や喘息の薬よりも抵抗感があるのもわかります。

 

あまりに悩みすぎて膠着状態に陥ってるようなことも。それは同時に学校もそんな感じで、医師に投薬を勧められてるということは投薬を開始しない限り何しても無駄、または投薬が始まれば問題行動はそれだけで消える、などと思っているんではないかと感じることがあります。

 

残念ながら現在使われてるADHD薬は、環境調整やソーシャルスキルレーニングといった治療をやりやすくする、ハードルを少し下げる程度です。内服を始めた途端に、人が変わったように問題行動が無くなることはほどんどありません。ですから、悩みに悩んで半信半疑のまま薬を開始しても、全然かわらないって感じる家族は多いと思います。実は客観的な指標で評価すると改善してることが多いのですがね(朝出かける準備の時間とか、授業中の立ち歩きの回数とか)。

 

発達外来で医師がADHD薬を勧めるときは、それまでいろいろ環境調整のみで治療を試みたけれども限界がきてるとき、もしくは、あまりにも患者の多動衝動性などが強すぎて環境調整だけでの治療は絶体困難という判断で初めから投薬を勧めるときがあると思います。後者のように診断してすぐから投薬する場合、意を決して始めた投薬は、スタート地点に過ぎないこともあります。私はセカンドオピニオン的に相談されたら、ほとんど投薬を勧めています。でも、そんなにも家族が悩んで半信半疑で開始するんなら止めた方が良いと話しています。だまされたと思って飲ませてみたら、もの凄く効いたってことは今のADHD薬にはあまりありません。ほらやっぱり効かないじゃんって思うようになったら、怠薬するようになるし、薬以外の治療も上手くいかなくなります。

 

私自身の発達外来で薬を勧めるときは、少しでも家族が渋るようならそれ以上は勧めないことが多いです。無投薬でいきたいなら、それで出来る限り頑張ってみることにしています。大切なのは、薬以外のアプローチを止めないこと、投薬するなら家族が十分納得した上で開始することです。実際には十分納得してくれたと思って投薬開始しても、実はあまり乗り気でなかった、理解が不十分だったということも多々あって難しいです。

 

因みに、私が発達外来を始めた20年近く前は現在のように薬がいくつも無くて、今は使えないリタリンという薬一択でした。これはあまりに切れ味鋭くて、騙されたと思って飲んでも、びっくりするくらい行動がかわりました(ただし短時間で効果が切れる)。この薬は今は徐放剤(長時間かけてゆっくり効く)に改良されてコンサータという名前で使われていますが、全然使用感が違ってリタリンと同じような効き方しませんでした。私はリタリンの、家族も本人も怖いくらい実感できる効果を上手く使って、逆に薬を早期に中止する治療が得意だったので、使えなくなって残念でした。

トレーニングと栄養と睡眠の全てがバランスよく確保されて身体は成長します、スポーツやらせ過ぎてませんか?

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

引き続き子どものスポーツ関連で気になってることを書いてみます。サッカーだとか空手だとか小学生から熱心にされている方は多いですね。この辺ではキックボクシングだとかレスリングだとか、私の子どもの時代には無かったようなのまであるみたいです。

 

よく聞いてみると、平日の遅い時間まで練習が入っていることも多いようです。夜の20、21時近くまでしているところも。その後に夕食食べて、風呂に入って、寝るのは何時になるのでしょうか?疲れた日は風呂にも入れず食事も出来ずに寝てしまうっていう子もいました。それはどう考えてもやり過ぎ。

 

子どもに限らずですが、トレーニングと栄養と休養(睡眠)の全てがバランスよく確保されて身体は成長します。3つとも同じくらい重要です。トレーニングして栄養とらずに寝てたら筋肉は壊れておしまい、成長することはありません。睡眠も同様です。平日夜に2時間練習して食事や睡眠が犠牲になるなら、練習を1時間にしてでも食事と睡眠をしっかりとる方がスポーツのパフォーマンスもむしろ上がると思います。

 

大谷翔平選手だって食事と睡眠をとても重要視していることは有名な話です。大人より身体の成長が必要な子どもなら、なおさらですよね。

 

スポ少の指導者の中にはそういう基本的な知識も無い方も多いようですし、スポーツクラブなどは経営重視です。言いなりにならないように注意しましょう。

校門を出たところで野球のユニフォーム姿で喫煙するコーチが不愉快過ぎて水ぶっかけたくなります

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

毎日、猛暑ですね。この炎天下に子どもに長袖長ズボンで野球させてるの、小学校の前を通りかかるとよく見かけますね、誰か止める人いないんでしょうか?まじで熱中症って死ぬんですよ?知ってますか?

 

そういうことも含めてなのですが、野球でもサッカーでも子どものスポーツチームで、物凄く怒鳴ったり酷い罵声を子どもたちに浴びせてるコーチいますよね。日曜に犬の散歩がてら眺めてると時々目(耳)につきます。それを黙って端のテントでお茶など準備して見守る親たち。何とも違和感、不快感をおぼえます。普通に指示、指導出来ないの?教える相手が同世代の大人だとしてもそんな言葉かけられる?相手が子どもだからやってるの?一部のコーチだけなのかもしれないけど、そういうの今の時代にはいらないって思います。

 

日常生活であんな酷く汚い言葉を発する機会って普通はないですよね、余程あのコーチたちは普段の職場や家庭でストレスを抱えてるんかなって思います。他所の子どもをはけ口にしないで欲しいですね。直接の暴力は論外ですけど、暴言も立派な言葉の暴力です。子どもたちは、自分に向かってくる暴言を浴び続けると慣れてきて、そのうち自分でも使うようになるでしょう。

 

ついでに言うと、練習場の学校の校門を出たところでユニフォーム姿で喫煙するコーチも本当に不愉快過ぎて、水でもぶっかけたくなります。子どもを指導するなら、子どもの見本になる大人にお願いしたいものです。

熱が続くときは熱型表をつけましょう!

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

今日は発熱についてです。小児科を発熱で受診することはどのお子さんでもあることですが、一言に熱と言っても小児科医がどういう情報が欲しいか、どういう情報はどうでもいいと思ってるかを書きたいと思います。

 

まず発熱というと、一般的に37.0℃以上と思われてる方が多いと思いますが、子どもはもともと体温が高めだったり、活動により変動しやすかったりで、私たち小児科医は37.5℃以上を発熱と思っていることが多いです。ですから、「37.3℃で咳と鼻が出てて。。。」と保護者が説明しても、「熱はなくて、咳鼻だけですね~」なんて医師からは言われるかもしれません。

 

発熱してすぐに来られる患者さんで、解熱剤を使っても全然下がらないことを心配して強調されることがありますが、これもだいたいの小児科医は聞き流しています。初期の発熱の勢いが強いときは、解熱剤でもなかなか下がらないものですし、それで病気の重症度が決まるものでもありませんから、心配しないでください。

 

熱が続くときですが、これが一番困るところで、今回伝えたかったことです。発熱が続くと受診されるときに、「1週間、ずっと熱が下がらへんのです!」とざっくり言われることがしばしばあります。熱が続くときは確かに異常な状態で、感染症以外にもいろんな病気を考えないといけません。何℃の熱なのか?一日中高熱が続くのか変動するのか?1日の熱のピークが変わらないのか徐々に下がってきてるのか?変動してるなら解熱してる時間が増えてきてるのか?など。そういう情報で、熱の原因が感染症なのか免疫などの他の病気なのか?感染症ならどういった細菌やウイルスなのか?熱源が肺なのか鼻や耳なのか脳なのか?などを推察します。また熱が続いているにしても、改善してるのか悪化してるのかを判断し、次の検査や治療を決めていくのです。

 

ですから、ざっくり熱が続くと言われたら、私は1日ずつ熱のピークを聞いて、少しでも情報を得るようにしてます。

私「1週前の熱が出た土曜日は何℃まで上がりました?」

保護者「39℃くらいです」

私「39.0がピークですか?」

保護者「うーん、39.4℃だったかな」

私「では、その翌日の日曜日は何℃まで上がりました?」

保護者「日曜日もそれくらい」

私「それくらいって、日曜日は39.4℃がピークですか?」

保護者「いえ、39℃まで行ってなかったかな」

 

とまあ、こんなやりとりしてるので、嫌みを言われてるように思われてるかもしれません。本当はその日の朝昼夜の体温の動きまで知りたいくらいなのですが、土曜日などに経過直接を見ていないお父さんやお祖母ちゃんが連れてこられたときはさっぱりわからないこともしばしばです。でも、これ本当に重要な情報なのですよ。

 

うちでは発熱で受診された患者さんには全員に熱型表(熱のグラフ)をお渡しして、今後熱が続くときは記録してもらうようにお願いしています。手元に熱型表が無くても、発熱時は何時に何℃あったかを記録して受診してもらうと非常に助かります。よろしくお願いします。

発達検査をやるやらないで悩んで立ち止まっている時間がもったいない、検査しなくても現在の課題の対応を検討することは出来るから

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

なんか発達関係の話を書くと喜ばれるみたいなので、ネタが思い浮かんだときはなるべく書くことにしました。

 

時々、園や学校から発達検査を勧められてるが迷っているという相談を受けます。集団生活が他児と同じように出来ないから発達障害の疑いがあるという理由が多いようです。実際はもうちょっと遠回しに言われてるみたいですけど。

 

発達検査もいろいろありますが、だいたい一般的にされてるのは幼児だと新版K式、小学校以上だとWISC-Ⅳという発達指数(知能指数)が出る検査です。これらの検査では発達(知能)レベル(→何歳児レベルか)は評価出来ますが、発達障害の特徴である社会性・コミュニケーションの障害、多動衝動性、注意持続性、書字・読字能力などは正確に評価出来ません。つまり発達障害かどうかはわからないのです。検査結果を細かく見たときに、発達障害に特徴的なパターンを示すことはあります。例えば発達の凸凹が目立つとかですね。しかし、凸凹が無くても発達障害のこともあるし、凸凹が目立っても発達障害でないこともあります。

 

発達検査で得意、苦手の傾向がわかって、今後の生活や学習の指導方法を考える手掛かりになることはあるので、私は基本的には勧めることが多いですが、抵抗があるならやらなくて良いと思います。発達レベルは幼児なら生活を見てれば、学童以上なら学業成績もあるし、年齢相当かどうかはだいたいわかります。手帳の取得などで数値が必要なら検査しないといけませんが、そういう必要性が無いなら検査をやるやらないで悩んで立ち止まっている時間がもったいないなと思います。検査しなくても現在の課題(困りごと)への対応を検討することは出来ますから。

 

発達障害は、発達歴と診察でのみ診断されます。明確な数値が出るものではないので、診る医師によっては多少診断結果が変わることもあります。それでは困ると思われるかもしれませんが、そういうものなので許してください。でも診断名が何かであるより、いかに今の問題を解決して、その子なりの発達を伸ばしていくかを検討する方がずっと重要です。

 

因みにこのブログに割り込んでくる広告で、発達障害を脳波やMRIで診断して治療するとうたっている怪しい自費診療クリニックが出てきますが、全部詐欺なので騙されないようにしてくださいね。