栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

「咳止めテープ多めにください」なんて言われて、ホイホイ出すような医療はしてませんのでご了承ください。

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

小児科にしろ内科にしろ耳鼻科にしろ、風邪ひいて受診すると風邪薬をもらうと思いますし、咳止め、鼻水止め、去痰剤、喉の腫れ止めなどいろいろありますが、実はこれらのほとんどは効果を証明されてないんです。これは「効果がある」ということが証明されてないことであり、「効果がない」と証明されてるのは一部を除きありません。要するに、ほとんどの風邪薬は効果があるかもしれない薬なのです。

 

これを受けて、風邪薬を一切出さない方針の小児科も世の中にはありますし、本当はそれが良いのかもしれません。で、私はというと、証明はされてないけど経験上効果があるような気がする薬は処方します。効果が証明もされてなければ、私の中でこれは1ミクロンも効果が無いなと思ってる薬は出しません。一部の症状に効果はあるけど、副作用が大きい薬は症状の程度や診察所見とを吟味して処方するかを決めます。薬によっては問題になってる症状を悪化させる薬もありますよ。処方された風邪薬をストックしておいて後日風邪ひいたときに自己判断で飲ませることが、効果がなかったり、ときに悪化させる可能性があることをご理解いただけるでしょうか。

 

ちなみに眠くなるタイプの鼻水止め(第1世代の抗ヒスタミン剤)は死んでも出しません、これは発熱して熱性けいれんが出現した際に、止まりにくくすることは証明されているからです。これは小児には処方禁止にした方が良いと思っています。巷では結構出されてますが。

 

当院をたびたび受診してくれてる患者さんはお気付きかと思いますが、受診のたびに風邪薬でも内容や日数が違います。これは経過と症状と、さらに肺音や喉の状態などを診察して、上記のようなことを考えながら薬の内容を決めてるからです。「咳止めテープ多めにください」なんて言われて、ホイホイ出すような医療はしてませんのでご了承ください。

子どもが好きではないんですけど小児科医になっても良いですか?

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

小児科医って当然子どもが好きだったから、その道を選んだのだと思われてる思いますが、実は私はそうでもなかったんです。

 

子どもが嫌いというほどではなかったんだけど、それほど好きではなかったのです。うるさいのが苦手だったし、どう接して良いのかもわからないしで。例えば新幹線に乗るときは賑やかな子どもがいない喫煙車両に自分は吸わないのにわざわざ選んで乗ってました(今では全車両禁煙ですが昔は喫煙車があった)し、オーケストラ部の活動で幼稚園に演奏に行っても子どもと交流しようとせずに、終わったら自分だけさっさと帰ってました。

 

だから医学部に入ってしばらくは自分が小児科に入るとは全く予想していませんでした。それが、いろいろ医学を勉強するうちに小児の病気に興味を持ちました。このへんホームページにも書いてますけど、小児の病気って本当にミゼラブル(という言い方を医者はしますけど、直訳すると悲惨なという意味)なのが多くて、生まれて間もない時から苦しい経験をして結局短い生涯を終えるという。この何とも受け入れ難い理不尽な運命に強い対抗心が芽生えて、小児科を志すようになりました。それが神様が決めた運命なら、それを変えてやろうと。

 

実際に入局するときは気になって「子どもが好きではないんですけど小児科医になっても良いですか?」と、実習のときに小児科の先生たちに聞いたら、「いや、実は僕もそんなに子ども好きではないよ」って言われて案外そんなものかと思って図々しく小児科医になりました。

 

入ってみると、むしろ本当に子ども好きだと無理だなって場面がたくさんありました。私は最初の3年ほどは特にですが大学病院やNICUで重症を診ることも多く、気管挿管だとか輸血だとか、手術をお願いするとか、坦々と科学的に素早く判断をすることがしばしば必要で、そういう時にかわいそうだとか情が入るととても決められませんでした。もう無意識に、人の子と思わないで何か絶対にミスしてはいけないゲームをしているような感覚?でやってたときもありました。で、実際にその方が私の場合は上手くいってました。小児科医がみんな同じかはわかりませんけど。

 

今はどうかというと、そういう重症の子を診ることも減ったし、年齢的にもおじいちゃんに近くなってきたのもあってか、すごく子どもがかわいく見えるようになりました。特に仕事ではなく買い物で外出したときなどに、小さい子どもを見かけるとずっとにやにやしながら眺めてしまうので、家族に不審に思われないよう気を付けてないといけないくらいです。

ジャニーズ事務所の性的虐待について思うところ

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

ジャニーズ事務所における性的虐待問題について思うところを書こうと思います。本日、2回目の記者会見が行われて、今後事務所は被害者の補償のみを行う会社となり、以後は廃業すると。まだまだ真実は明らかにしてないことや、十分認めてないことがありそうですが、これ以上追及しても傷つく人が増えるだけな気もします。なにせ加害者は死んでるし、法的にも時効となっていますし。

 

私が気になってるのは、この歴史上まれに見るような大規模で最悪な性的虐待が、つい最近までこの日本で行われ続けていたという、事の重大性が社会に十分浸透してないことです。若い女性がインタビューで「ジャニーズという名前は愛着があるので無くなるのはさみしい」とか言ってるのを見て、中学生ほどの多くの少年が芸能界デビューを餌にされて何度も何度も性的虐待を受けていたことを想像出来てるのかなと、それが自分自身や家族だったらと考えられないのかなと思うのです。

 

本日の会見で現在のジャニーズ事務所のタレントはすべてジャニーズから離れることが発表されましたが、昨日まで私は一度テレビ局もジャニーズ事務所のタレントが出ている番組やCMをすべて中止するくらいやれば良いと思ってました。東日本大震災のときにほとんどTV番組が無くなり、ニュースと公共広告機構のCMだけになったときのように。TV局もファンも苦しいし、ジャニーズタレントは被害者のはずなのに理不尽ですけど。でも、そのくらいして社会全体がショックをうけてこの事件について考えないと、必ず同じことはどこかで小さい規模でも続いていくのだろうと思うのです。

 

私は同じような性的虐待は他にも間違いなく起きていると思うし、人権が守られることを約束されたうえで被害者が声を挙げられて、これから明るみになってくることを期待しています。もし今回のジャニー喜多川の件だけで終わるようなら、何も変わらないでしょう。

今や主流のプロアクティブ療法ですが、保護者が薬だけ処方されて独自でやるのは絶対上手くいかないので、必ず定期通院で医師が一緒に皮膚の状態を確認しながら治療してくれるところで行ってください

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

うちでは軽度のものを除いて乳幼児の乳児湿疹やアトピー性皮膚炎はプロアクティブ療法を行うために定期的に通院してもらい治療を行っています。軽度というのは体のごく一部(顎だけとか、足首だけとか)に弱めのステロイド外用で2~3日以内に良くなって、1週間以上はスキンケアのみで再発せずに良い状態を保てるものとしています。

 

ステロイド剤のプロアクティブ療法というのは、外用で湿疹が良くなってもすぐに中止せずに、湿疹が出てない状態を保つために外用剤を数日間隔で続けるという治療です。詳しくはネットで調べたらいっぱい出てきますので、ググってください。

 

治療開始時がどんな感じになるか紹介してみたいと思います。まず最初に私と看護師から、スキンケアと薬の塗り方、プロアクティブ療法の説明を行い、ほぼ全例で「1日2回、ステロイドを外用⇒きれいになったらそこで中止せずに1日1回はきれいでも外用を継続」として1週後くらいに再診予約します。そうすると、1週後に来院されると以下のようなパターンが発生して、治療を調整します。

 

①すぐに良くなったので指示通り1日1回にして外用を続けている

⇒医師から見ても良くなってるのでさらに減量する(隔日外用にするとか)

⇒医師から見ると十分に良くなってないので1日2回に戻すか薬を変える

②良くなったが不安なので1日2回のまま続けている

⇒医師から見て十分良くなってるので減量する

③良くならないのでずっと1日2回を続けている

⇒薬の塗り方、塗ってる量などを確認して不十分なら改めて説明

⇒他の皮膚病(感染症など)の可能性を検討しつつ、治療薬を変更する

④良くなったのでもう薬は塗ってない(塗り方の説明は理解している前提で)

⇒きれいになったところにステロイドを続けるのに、保護者に抵抗があるなら無理にプロアクティブを進めず、「湿疹が出たら塗る、消えたら止めるを繰り返す(リアクティブ療法)」治療に潔く切り替える。

 

いずれも想定内で、期待してるのは一番上のパターンですが、実際には半分も無いかもしれません。でも、他のパターンでも初めの1週くらいなら全く問題なく修正出来て長期的には影響ありません。ただし困るのは④のときですが、治療は保護者の納得の上でしか進められないので仕方ありません。リアクティブ治療で100%治らないわけではないし、納得される範囲で治療進めていくしかありません。

 

そして、この後は症状に応じて1~4週間隔で通院してもらい治療を継続します。2~3か月ほどで終われるときもあれば、年単位で続けることもあります。少なくとも言えるのは、今や主流になってるプロアクティブ療法ですが、保護者が薬だけ処方されて独自でやっていくのは絶対上手くいかないので、必ず定期通院で医師が一緒に皮膚の状態を確認しながら治療してくれるところで行ってください。

 

ちなみに、ある患者さんで初診後の1週後の再診に来られずに、たっぷり外用して再診してくれると信じてたくさん処方した薬を1年以上ちびちび使い続けて、ひどい湿疹のままで薬が無くなったと受診されたときは絶望的な気持ちになりました。

深刻に考えてもらうのに深刻に訴える以外に方法がありますか?笑顔でやさしく訴えて深刻に考えるようになってくれますか?

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

今更ですが、子ども育てるのってすごく大変なことです。なかなか思い通りに育ってくれません。適当にやっても勝手に成長発達してくれる子もいれば、一生懸命やってもなかなか大きくならなかったり発達しない子もいます。個人個人でも、上手く行く時期もあれば苦労する時期があったりします。

 

その苦労する時期の最初が乳児期後半から1歳過ぎ頃だと思います。生まれてすぐはひたすら母乳かミルクだけをあげてれば勝手に大きくなっていたのが、5か月頃からは離乳食を始めることになり、子どもも少しずつ自我が出てきて、何でも食べて飲む子もいれば、母乳ミルクも含めてあまり飲みたがらない子も出てきます。離乳食を進めようと思ったらアレルギーが発症しちゃったり、食性が変わるので便秘が増えるのもこの時期でそれにより食欲が落ちることもあります。そういったことから体重が増えなくなったり、ひどいと減少する子がいます。体重が増えないというのは大きな問題です(その時点の体重ではなく増加率のこと)。脳神経の発達も含めてこの時期に必要な栄養が得られてないことを示しているからです。少しくらい小さくても元気ならいいじゃないかなどと言ってる場合ではありません。低栄養で脳萎縮するほどになれば将来にかかわる障害となります。

 

乳児期の体重増加不良はいろんな原因があり、心疾患やホルモン異常、貧血など様々な疾患が隠れていることもありますが、ほとんどは上記にあげた栄養摂取の問題です。母乳ミルクの与え方、離乳食とのバランス、便秘の治療などで改善します。口で言うのは簡単ですが、実際に解決していくのは家族です。私たちは子どもを預かって育てるわけにはいかないですから、いろんな提案をしていくことしか出来ません(母乳ケアや便秘や貧血治療などはしますが)。

 

ときどき体重が増えてないことをあまり深刻に考えていない家族に出くわすことがあります。深刻に考えてない人に普通に説明してアドバイスをしても解決できません。だって深刻に考えてないんですから。深刻に考えてない人に深刻になってもらうには、私たちは深刻に訴えるしかありません。それが冷たくされたように感じたり、怒られたように感じたりするかもしれません。育児で疲れてストレスも抱えているお母さんは傷つけられたと感じるかもしれません。そういうことも重々承知してますが、ゆっくり気持ちに寄り添って説明してるほどの余裕がないくらい危機的状況もあります。どういう状況であっても問題は解決できるように、つまり体重増加が正常となるまで必ずフォローするので、信じて話を聞いて欲しいと思っています。

結局自分は何をやりたいのかって考えてたら

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

連投すみません。もうちょっと寝かせてから書けば良かったと後悔しそうなこと書きます。

 

開業医になって8年過ぎて、開業時の借金も返して経営もそれなりに安定しました。でも、毎日の外来は変わらず朝から夜まで12時間以上の労働で、毎日寝不足だし、腰は痛いし、口コミにはひどいこと書かれるしで、結局何がしたくて続けてるのかなって自問自答することがあります。

 

しんどいなら他に医師雇えば良いじゃないかっていう人もいると思いますが、それじゃ意味ないんですよ。私じゃなくて良いなら他の小児科クリニックに行ってもらえば良いんです。医師をたくさん雇って、外来拡大したり分院作ることなんて、小児科クリニックが多いこの地域では求められてないし、これ以上収入も名声もいらないし承認欲求も全く無いんです。このブログだって記事の半分は自分のガス抜きで書いてますが、なぜか楽しみにして読んでくれて、書いて欲しいって言ってくれる人がいるので、恥ずかし気もなく書き続けてるだけなんです。

 

今週、たまたま市の乳幼児健診と地域の休日診療所の当番がありました。当院によく来る患者さんではもうほとんどひどいアトピーの子っていないんですけど、健診や休日診療所で外来すると、本当にかわいそうになるくらい酷いアトピーの子によく出会います。それを主訴で受診してるわけではないので、言われない限りはそれについては触れずに終わります。重症アトピーの治療は少なくとも保護者の強い治療意欲と定期通院が必要で、中途半端に薬を1回出してあげても余計に治りにくくするだけですし。

 

でも、やっぱり毎日痒くてつらいだろうなとか、思春期になったら悩むんだろうなって思うと何とか治してあげたいなって普通に思います。アトピーは外見でわかるけど、喘息にしてもてんかんにしても便秘にしても同じです。そういえば勤務医だったころにインフルエンザ脳症の子をたくさん診て、ワクチンうってればこんなことにならなかったのに、開業したらなるべく多くの子にワクチンを打ってもらえるように頑張ろうって思ったことを思い出したりもしました。

 

自分には研究をして万人を救うような薬や治療を開発するような才能が無かったから、私なりに子ども一人ずつ病気を治したり予防することをやっていきたいなと思いました。

診察前にわたす問診票には、症状の期間と頻度は出来るだけ具体的に書いてもらえるとうれしいです

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

どんな理由で受診するときにも(ワクチンや健診以外)、たいていどの病院でも診察前に問診票を書かされると思います。医師は診察前にそれを確認して、おおまかに方針を考えてから診察に入ります。他院へ紹介するかとか、検査するかとか、薬は何を使おうかとか。

 

しばしば困るのが、内容(特に期間と頻度)が曖昧過ぎることがあります。例えば、「ずっと咳が続いてる」とか「ときどき頭痛がある」とか。

”ずっと”っていつから?1週前から?3か月前から?生まれたときから?

”ときどき”ってどのくらい?1日で何回かある?週に1回?半年に1回?

 

そのくらい直接聞けば良いだろって思われるかもしれないし、実際にそうしてるんですけど、あまりに予想外の回答だったら、その場で方針を考え直さないといけなくなります。専門性の高い病気を疑うときは紹介先を調べて探したり連絡をとる必要があるときもあります。診察に入って患者さんの目の前でそれをするのはなかなか大変です。

 

すべての症状を詳細に書いてとまでは言いませんが、期間と頻度はなるべく具体的に診察前に教えておいてくれるとありがたいです。多分、小児科に限らず全国の医師はみんなそう思ってます。

 

ただ以前読んだある漢方医のブログで、「病歴も症状も言わなくていい、診察すればすべてわかるから」と書いてた先生がいて、めちゃくちゃかっけーなと思いました。私には絶対無理。