栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

開業医は必要なフィードバックを得られない

こんばんは。

滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

今日はちょっとワクチンから離れます。滋賀医大で7年ほど小児神経分野を専門として診療していたのですが、年に数例ほど「辺縁系脳炎」を診ていました。どういうのかというと、何かしらの感染(カゼとか)の後などに、数日~数週してから意識障害やけいれんで発症する脳炎です。通常の脳炎と違うのは、通常の脳炎は高熱が出てすぐにけいれん重積となりそのまま意識が戻らなくなるみたいな急速に進行する経過が多いですが、辺縁系脳炎は何となく元気がない、反応が悪い、いつもと違う不可解な行動があるといった、ちょっとわかりにくい意識障害から発症します。

 

だから典型的な経過として、①家族が何となくいつもと様子がおかしいと思って近所の開業医に連れていく、②医者は一見普通に見えるので、ストレスだと心の問題だとか言って様子を見るように勧める(ひどいときは心療内科に回されたり、その場で抗精神病薬が処方されたり)、③その夜に本格的に意識がおかしくなったり、痙攣するなどで救急車で運ばれる、といった感じです。その後は軽症だったら数週で完治することもありますが、重症のときは完全に寝たきりの植物状態になってしまうこともあります。

 

だいたい、ご家族は早いうちからおかしいと思って受診してるのに、心の問題として処理されて重症化したことに関して憤慨しています。「後医は名医(後から診た医者の方が、症状がわかりやすくなって正しい診断を下しやすいので名医に見えるという、医者の世界では有名な言葉)」ですし、初めの段階で診断するのは非常に難しかったと我々からもフォローしていました。が、あまりにもそれは無いよなっていう対応(上記のような)をされている方もいました。

 

よほど、よく知っている開業医さんならまだしも、「先生が診たあの子、脳炎でしたよ」と面識の無い開業医さんに伝えることはされません。紹介入院であれば返信はされるでしょうけど。開業医というのは必要なフィードバックを得るのがなかなか難しいんです。

 

今、自分が開業医になって脳炎に限らず重大な病気を見逃してないか細心の注意を払って診療していますが、自分が知らないままひどいことになっている患者さんがいないか心配しています。近隣の大きな病院の先生たちには、どうか私が診た患者さんで重症化してる子がいれば、絶対不機嫌になったりしないので教えて欲しいなと思います。