栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

開業するために小児科専門医は必要か?

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

医師の肩書きで「小児科専門医」、「神経内科専門医」などと看板やホームページに書いてあるのは、何も小児科などを専門にやってきましたと自称しているわけではなく、通常所属する学会が研修実績、症例レポート、筆記試験、面接試験などをパスして認定されたことを意味しています。取得するのがそれなりに大変な専門医もあれば、簡単な書類と講習を受けてお金を払えば取れてしまうインチキみたいな専門医も多くあります。小児科専門医に関しては、日本小児科学会に入って5年間認定された研修施設で臨床やって、小児科の全分野(循環器、神経、血液腫瘍、内分泌、新生児、腎臓、、、、)をすべて経験した証明としてそれぞれの分野の症例レポートを出して、施設の指導責任者にサインもらって、筆記試験と面接試験に受かればもらえます。一応、まっとうな方の専門医です。結構大変そうですが、大学の小児科医局に入って普通に診療やってれば普通に取れる資格です。

 

その専門医制度ですが、これまでのそれぞれの学会が管理していたものを国が管理するように制度が近々変わることになっていて、それに向けて取得条件も変わってきています。開業する1年ほど前にその小児科専門医取得条件の改正案に関して意見を求められたことがありました。その案はかなり取得が厳しくなる、特に研修施設の縛りが相当に強くなるものだったので、そんなに厳しくなったら、もう専門医なんて要らないって誰も取ろうとしなくなるんじゃないかって私は意見しました。すると、そのときの偉い先生は、これからの時代は小児科専門医くらいとらないと開業も出来ない(開業しても患者が誰も来ないって意味で)から、そんなことにはならないって返されました。

 

そして開業1年たっての感想ですが。おそらくほとんど誰も小児科専門医かどうか確認して受診なんかしていません。私は他にもいくつか専門医を持っていますが、唯一専門医であることで患者さんが選んで来てくれたと思えるのは「てんかん専門医」くらいです。大丈夫、小児科専門医なんか無くても開業して食べていけます。

 

でも、やっぱり小児科専門医をとって開業した方が良いと思いました。といいますか、専門医を取れるくらいの経験と知識はやっぱり必要でした。確かに超低出生体重児白血病、心奇形、脳炎、代謝異常の治療も診断もすることは無いですが、それらの病気の初期に遭遇するのはもちろんですが、病後の子も多く来られます。その子たち最も大変な未来や過去の状況をイメージして診療することがとても大切で、それが出来るのはその病気の大変な時期を経験した医師だけだと思ったからです。

 

最近の流れとして小児科でもプライマリケアが重視されて、専門医療中心の大学病院小児科を避けて、市中病院の一般小児科中心の医局に入る研修医も多いようです。でも、本当にプライマリケアを出来るようになるために、専門医療の知識や経験が必要なのではないかと思っています。というわけで、医大の小児科に入るか、〇〇市立病院や〇〇総合医療センターに入るか迷っているなら若い先生がおられたら、医大小児科に入ってきっちり全分野の専門治療を学ばれるのをお勧めします。そして、今現在、開業医を目指しているのにマニアックな専門医療ばかりさせられていると思っている若手の先生方、決して無駄ではないので自信を持って続けて欲しいと思います。