栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

「熱が出たときのけいれん=熱性けいれん」ではありません

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

事務、看護師とも採用が決まりましたが、看護師、事務、脳波技師ともにまだ募集中です。よろしくお願いします。

インフルエンザがいまだに終息する気配が見えないこの頃です。インフルエンザによる発熱は熱性けいれんを起こしやすいことで知られていますが、やはりこれだけ流行するとけいれんで搬送になる子も多いようで、当院でインフル診断した患者さんも何人かけいれんを起こしたと聞きました。

そこで熱性けいれんの症状について確認です。典型的な熱性けいれんは「全身の左右差のない数分以内に止まるけいれん」です。この典型的なタイプを専門的になりますが「単純型熱性けいれん」と呼びます。非典型的には「10分以上続くけいれん、24時間以内に何度も起きるけいれん、左右差があったり、手足や顔などの体の一部だけのけいれん、ぼーっとするだけの症状(厳密にはけいれんとは言わないですが)」といったけいれんで「複雑型熱性けいれん」と呼んでいます。典型的な単純型けいれんであれば、救急車で運ばれても症状を確認されてすぐに帰されることになりますが心配ありません。しかし、典型的でない複雑型であれば熱性けいれんではなく、「てんかん」や「脳症」などの症状の始まりのことがあります。救急車でけいれんの子が運ばれてくると、ちゃんと熱性けいれんの診断のトレーニングを受けた小児科医なら必ず保護者にけいれんの様子を細かく確認します。もし複雑型に属するけいれんなら、状況にもよりますが入院してさらなる検査や経過観察を、自宅に帰すにしても十分注意して後日外来で経過を確認するなどするものです。

ところが最近、発熱にともなうけいれんで救急搬送されても、ろくすっぽ細かく症状を確認されずに「熱性けいれんだから大丈夫、帰っていいよ」って帰されている子をよく見かけます。よく確認すると、どう考えても単純型ではないことがあります。かなり心配しています。「てんかん」なら、その日だけ発作を見逃すくらいならそれほどの不利益はありませんが、「脳症」を見逃すことになると、その子の命と人生に関わってきます。

「熱が出たときに起きるけいれん=熱性けいれん」ではありません。こんなこと患者さんに言ってもしょうがないかもしれませんが(小児科医に言わないといけないのですが)、せめてけいれんの症状は手足がどうなっていたとか、顔はどうだったかとか、どのくらい続いたとか、細かく医者に説明しましょう。