こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。
先日、患者さんとの話の中で、スワドルというものを知りました。生まれて間もない赤ちゃんが良く眠れるように、腕が伸びないように拘束してモロー反射を抑制するおくるみのようなものです。モロー反射を知らない人のために簡単にいうと、生まれて4か月くらいまで見られる反射運動の一つで、音などの感覚刺激により素早く両腕を大きく伸ばす動きです。健診では赤ちゃんを仰向けで頭を手で支えてたところから、支えを離して後方に倒れさせて誘発して確認します。人間が猿だったころに、木から落ちそうになったときに素早く手で枝を掴もうとした動きの名残と考えられています。
で、確かに寝ていた赤ちゃんがモロー反射でびっくりしたように目覚めてしまうことをはあると思いますが、このモロー反射の動きを拘束して抑え込んで眠れるようにするという発想にとても驚きました。腕の動きを抑制するだけでモロー反射が抑えられるわけないやん、とちょっと冷笑してしまいました。反射というものは突然の感覚刺激に対して考える時間もなく筋肉が収縮するものです。腕を拘束して伸ばせないようにしたって腕の筋収縮は間違いなく発生している(体を動かさなくても筋肉を収縮させることは出来ますから)のだから、そんなんでモロー反射を抑えられるわけが無いのです。
でも、ネットで調べると、思った以上にこのスワドルが売られていて、これはこれで本当に効果があるのかとわからなくなりました。ひょっとしてモロー反射は抑制出来てなくても腕を大きく伸ばす動きを止めれば、赤ちゃんは良く眠れるというのは事実かもしれません。でも、本当にそんなことやって良いの?というのが正直な感想です。モロー反射の動きを無理やり抑え込むだけでなく、寝ているときの体の動きを制限するというのも大丈夫なのでしょうか?
こういうスワドルだけでなく、手にはめるミトンとかスリングとかバンボとか歩行器とか、赤ちゃんの発達に悪いという明らかなエビデンス(過去の研究結果)はどれも無いのだろうけど、子どもの発達を多く見てきた立場からすると、どう考えても発達に良いわけないやろっていう商品が本当に多くあるなあと思います。
スワドルをもう買っちゃったよって方は、使うにしてもなかなか眠ってくれないときなどに限るのが良いんじゃないかなと思います。