こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。
not doing wellという小児科でよく使われる症状を示す言葉があります。日本語に訳すと「なんとなく元気がない」ですけど、実際には「何がというのはないけど、いつもと違って何かおかしい」でしょうか。熱や咳鼻や下痢といったわかりやすい症状は無い状態ですね。
これが意外と怖い悪い状態だったりします。特に新生児や4か月未満くらいの乳児期早期の赤ちゃんでは敗血症や菌血症(細菌が血液に入り込んで全身に拡がっている状態)といった、重症感染症のサインのことも多いです。通常の感染症は咽頭炎や気管支炎や胃腸炎など、体に侵入してすぐは局所の症状や熱が出ますが、乳児期早期までの赤ちゃんは免疫力が弱いので、熱といった防御反応も出来ずに容易に血液内に侵入されるます。まじで死ぬかもしれない病気です。さらに、通常の脳の血管は血液脳関門(英語だとblood brain barrierというかっこいい名前がついてます)があって、大切な脳への病原体と侵入を特に防ぐ機構があるのですが、赤ちゃんはそれが未熟なので簡単に脳へ侵入され髄膜炎となり、死ななかったとしても後遺症を残すこともあります。
このnot doing wellって診察室で診ただけではわかりにくいことも多いです。元気がなくてぐったりしてるのか寝てるだけなのか、機嫌が悪い時間なんて1日のうちに何度もあるでしょうし。お母さんが、何かいつもより元気がないとか様子がおかしいという情報をもとに、確かに言われて見るとちょっと顔色が悪いかなとか、泣き方もしんどそうかなとか思うくらいだったりします。因みにこういうので外来で血液検査しても異常でないか、ごく軽度異常のことがほとんどで全然あてにならないです。こういうときはお母さんの感覚重視で大きな病院に紹介しています。それでやはり血液から細菌が検出されたケースは開業してから何人もおられました。お母さん、さすがです、連れてきてくれなかったら、赤ちゃん死んでたかもしれません。
特に1人目の子どもだと、いつもより元気が無かったり機嫌が悪かったりしても、まあこういう日もあるかな、赤ちゃんってこんな感じなのかなくらいで様子見ようとなる保護者の方もいるかもしれません。でも、上述したような怖いこともあるので嫌な予感がしたら、遠慮なく相談、受診してください。まともな小児科医なら、こんなんで受診するなと怒ったり、心配し過ぎとバカにすることは絶対にありませんので。