栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

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子どもの人権というものを考えたことがありますか?

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

一時期より減ったとはいえ、まだまだインフルエンザ出てますね。最近驚いたのは他のクリニックで、迅速検査をして結果が陰性でも家族にインフルエンザ患者がいればインフルエンザと診断して薬を出しているところが結構あることを知りました。

 

それ、なんで検査したん?結果に関わらずインフルエンザの診断にするなら検査いらんやん?

 

内科で大人の患者が納得の上でしていることならまだ理解できる(あまりに節操なさ過ぎてあきれますけどね)けど、子どもにやってるところがあるとか信じられなかったです。子どもに怖い思いをさせて、痛い思いをさせて、無理やり押さえつけてまでした検査の意味は?

 

1989年に国連で子どもの権利条約というものが採択されています。子どもの人権の保護とかいうと、戦争に巻き込まれたり、虐待やいじめだったりから守るようなイメージかもしれませんが、私たちのもっと身近なところでも子どもの人権を侵してないか考えることが重要と思います。

 

鼻に綿棒を突っ込む検査、アレルギーの血液検査、下痢嘔吐のときの点滴など、本当にそれが恐怖と痛みの引き換えになるほどの子どもの利益になるのか?私たち大人の安心や社会の都合のためにやってるということはないか?子どもの人権というものを常に忘れず意識しながら診療していきたいと思っています。

www.unicef.or.jp

子どもが通常学級で入学することになったが、発達的に不安を感じている保護者の方へ

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

もうすぐ年度初めということで、新たに小学校や中学校に入学を控えているお子さんも多いことでしょう。最近は、障害者と健常者を分けずに同じ環境で教育していくインクルーシブ教育を目指すことが世界的な流れになっていることや、教育現場の人手不足もあるためか、この子はどう考えても特別支援学級で手厚く見てあげる方が良いだろうと思っていた発達障害を疑う子が、通常学級で入学予定になっていて驚くことが以前より増えたと感じます。

 

私もインクルーシブ教育には大賛成ですが、日本の現在の教育現場には発達障害の子を多くの定型発達の子たちと同じ場で教育していけるほどの環境、それは人手であったり現場の経験値もですが、まだ十分ではないと思っています。

 

まあ今から何言っても、入学クラスは変えられないので、出来る限り無事に楽しく学校生活が送れるように心構えを書こうと思います。

 

まず、何度もこのブログに書いてますが勉強がついていけてるか気にかけましょう。学校生活の大部分が授業時間です、学業に不安があるとその時間帯ずっと苦痛か退屈な時間になってしまいます。それで授業中、立ち歩いたり寝てばかりになるのは無理も無いですよね。特に読み書きに関しては全ての科目や活動に関わるので注意しましょう。状況により塾や家庭教師を検討しても良いと思います(親が教えるのって意外と難しいですし)。

 

友人関係に注意しましょう。相手の気持ちを読めない、突飛な行動や乱暴な言動などが原因で、他児を怖がらせたり、逆にいじめを受けるようになってたりします。先生にこまめに確認したり、同級生のママ友と連絡をとって他児からどう見られてるかを確認しておくのも良いと思います。登下校時や放課後も要注意です。

 

発達障害の子はその特性から周りから嫌われたり避けられることが多いですが、独特の興味や価値観、反応などから逆に人気者になることも少なくありません。発達障害の特性があったとしても、周りから愛されて学校生活を楽しく過ごせれば、それは障害ではありません。みんながそうなれることを願っています。

なにをもたもたと決断できずにいるの?子どもがかわいそうだわ。

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

タイトル見てまた行政か教育機関の攻撃してんだろと思われたかもしれませんが、今回は違います。小6以上の女の子の保護者に対してです。

 

子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)の接種者が最近また減ってきています。国の積極的勧奨が再開され、定期接種期間に受けられなかった人向けのキャッチアップ接種も始まって、もうすぐ2年になりますが、以前言われていたような副反応が増加したという報告はされていません。

 

一時期、このブログにも散々書きましたけど、73人に1人が子宮頚がんになるんですよ。若くして死んでしまうかもしれないんですよ、お父さんお母さんより先に死ぬんですよ、すでに子どもがいたらその子たちを残して死ぬんですよ、死なずに済んでも子どもを産めない体になってしまうかもしれないんですよ。ワクチンはそれを高い確率で予防出来るんですよ。

 

なんだかんだ部活が終わってからとか受験があるからとか、訳わかんない理由で接種する決断を先延ばしにしてるお父さんお母さんへ聞きたいです。お子さんが将来子宮頚がんになって悲劇的な結末になって、予防出来るワクチンを勧められていたにも関わらず接種させなかったことを思い出して、その先どうやって生きて行くのですか?十字架を背負って生きて行けますか?

 

さあ、そろそろ受験も終わる頃でしょう。少しでも早く、女の子の未来のために子宮頚がんワクチンを接種させてあげてください。

アトピーは出来る限り親が主体で治療を出来る年齢のうちに治すのが重要

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

アトピー性皮膚炎でデュピルマブという治療薬があります。これはステロイドやプロトピックのような塗り薬でなく、注射薬(自宅でも出来る皮下注射)で、最近になり6か月以上の子どもにも使えるようになりました。対象は既存の治療(つまりステロイドなどの外用薬)でもコントロール困難な中等度~重症の患者さんになります。

 

当院で診ている長年治療しているものの、なかなか良い状態に出来ないアトピーの子にも検討し始めているところです。モノクローナル抗体薬という種類の高価な薬であることや、注射薬ということもあり、当面は最終的な治療適応の判断や導入のために県内で一番の小児アレルギー専門医の先生に紹介し受診してもらうことにしています。

 

ただ、その重症度の判断が意外と難しいことがあります。特に小学生以上の年長児に関して。既存の治療をしっかりやっても治らないという基準があるのですが、しっかり薬を塗れているか、洗顔や保湿といったスキンケアも出来ているかの評価は難しいです。毎日ステロイドや保湿剤を十分量塗れてないだろうな、部活のあと洗顔してるかもあやしいな、という子も多いです。幼児期のように親が毎日すみずみまで薬を塗ったり、お風呂で体を洗うことも出来ないので、本人に治療の大部分を任せざるを得ません。親が子のアトピーを治したいと思っても、本人自身はそれほど思ってないことが多いですから、外来で本人に注意してもほとんど変わりません。

 

だいぶひどいアトピーだけど、多分薬塗ってないよな~、ちゃんと塗れば普通に良くなりそうなんだけど、これを重症として注射の治療を始めて良いものかと悩むことが増えたのと同時に、アトピーは出来る限り親が主体で治療を出来る年齢のうちに治すのが重要とつくづく思います。

20代の若い女性は精神的にまだ大人になりきれない未熟で不安定な存在なので、社会全体として守っていく意識が必要である

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

このブログを読んでる人には40代以上の方も多いと思いますが、お子さんだったり職場に入ってくる最近の20代の若い子たちって、私たちの頃と比べてすごく幼い感じがしませんか?自分たちの20代の頃ってもっとしっかりしてなかったかなって。

 

それ正しいです。近年、精神的に子どもから大人になりきるまでの期間(モラトリアム期っていうのですが)が長くなってきていると言われています。これは社会の変化(初婚年齢が高くなってるとか、ネット社会で直接人と関わりをもつ機会が減ってるとか)などによると考えられていますが、30歳前くらいまで精神的に未成熟で不安定なことも少なくないようです。

 

しかし、日本の現代社会は30年前(私が成人した頃)と変わらず20代の若者を大人として扱います。女性ならホストクラブに行くのも、ホテルのスイートルームで有名人の飲み会に参加することも、自身の責任のもと行動出来るという前提になっています。精神的に未成熟な子たちは当然ながら、リスクのある場を事前に察することも、望まない性行為の誘いを上手く拒絶することも出来ないし、すぐに警察に相談しないことも全くあり得ることです。発達障害の傾向がある子だったりするとなおさらです。そして、身体的にも地位的にも弱い立場である若い女性はしばしば性犯罪に巻き込まれていきます。最近話題になっている件でいうと、私は個人的には、複数の男性が20代の若い女性を密室に入れて飲酒させ性行為に誘うってだけでも、そこに同意があるなしに関係なく性的虐待と変わらないと思います。大物芸人や日本代表のサッカー選手が実際どうだったかはわかりませんけど。

 

なお、性加害の被害者が起こった事実を受け入れられず、加害者へお礼のLINEを送るような行為は年齢関係なく全く珍しくないことです。それを同意の証拠だとか言って出してくる弁護士もいますが、どんだけ無知なんだって話です。

 

重要なのは、私たちは社会全体で、20代の彼らを既に成人を迎えた社会人として尊重しながらも、まだまだ大人になり切れない不安定で弱い存在として、守っていく意識を持つことではないかと思います。

昨夏に死について勉強してたら、自殺の合理性に行きついた(書籍の紹介)

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

昨年の夏に「死」について少し勉強というか、いくつか本を読んでいました。夏休み明けに子どもの自殺が多いというのが気になって、その前に何かブログに書けないかなと思いまして。でも、あんまりまとまらず、自分の言葉で書くとありきたりな説教くさい記事になりそうで諦めたんです。

 

最近になって、また著名人の自死のニュースがあって、それが、「そんなことで?」というか、まあそれほど本人にとっては苦しいことだったのでしょうけども。ちょっと何か書きたいなとなりましたが、やはり自分の言葉ではハードルが高すぎて読んで印象に残った本の紹介をさせてもらうことにしました。

 

シェリー・ケーガン先生という大学の哲学の先生の講義をまとめた「DEATH 『死』とは何か」という書籍です。そこでは道徳的宗教的な要素を完全に除いて「死」について考察しており、特に自殺については、一言でまとめると「ほとんどの場合において合理的ではない」と述べられています。私が良いなと思ったのは「すべての場合」と言ってないところです、死んだ方がましという状況は稀ながらも存在することも述べています(全く少しも改善の見込みが無い病気の耐え難い苦痛が常にあるなど)。また自殺しようとする人に出会ったら、「その人は苦悩にさいなまれて振舞っているのであって、明晰に考えているわけではなく、情報に通じているわけでもなく、あまり有能なわけでもなく、それなりの理由があって行動しているのでもないに違いないことを想定すべき」と、つまり「死んだ方がまし」と考える人はそういう状況下で正しく自分の状況を評価できていないことがほとんどであることも述べられていました。

 

ちょっと難しいですけど、いわゆる哲学書ほどではなく読みやすいです。興味があったらぜひ読んでみてください。ちなみに自殺以外では、毎晩寝てる間は死んでるのと同じなんだって話が面白かったです。