栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

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市販の保湿剤ではカサカサが治らないと受診される患者さんへ

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

季節が進んで肌が乾燥しやすい時期になってきたせいか、市販の保湿剤ではカサカサが治らないと受診される患者さんが見られるようになりました。うちでは保湿剤単剤では処方しませんよと、診察前に看護師から断ってもらった上で診させてもらっています。実際に市販の保湿剤より処方出来る保湿剤(ヘパリン類似物質入り)の方が効くといったことはほとんどありません。

 

市販の保湿剤はお金がかかるし、ただで欲しいからという理由は論外として。

 

診察してみると一番多いのは、すでに乾燥肌にとどまらず湿疹が多発した状態です。部分的にがさつきがひどくて発赤してて皮膚が厚くなってるような部分です。湿疹化してしまったら、ごく軽度で初期の段階を除けば、どの保湿剤をどれだけ塗っても治りません。しっかりとステロイド剤を使用して治してください。なお、ステロイドは皮膚を乾燥させるほうに働くので必ず保湿剤の併用も忘れないように。

 

他には、そもそも塗る回数や塗る量が少なすぎることも多いです。1日2回以上で朝も塗ることと、ちょっと気持ち悪いくらいベトベトにたっぷり塗りましょう。お風呂で熱い湯に長時間入ってることが原因のこともあります。体温より少し高いくらい38~39℃で出来るだけ短時間にしましょう。でないと、子どもの皮膚は刺激で痒くなったり、保湿成分である脂も落ちてしまいます。子どもは大人が思うほど湯冷めしないので、寒いからといってホカホカになるまで温めなくて大丈夫です。

 

保湿剤としてワセリンのみしか使ってない方もいます。シンプルで安全と思われてるのかもしれません。ただワセリン自体に、セラミドやらヘパリン類似物質といった保湿成分が含まれておらず、皮膚にフタをしてそれ以上乾燥しないようにするという効果が主体です。だから、風呂上り直後のよく水分で潤ったときに使うのは良いですが、カサカサした肌に塗ってもそれ以上乾燥はしないけど潤い効果は期待できません。専門的にはエモリエントといって広義では保湿剤ですが、私の中では保護剤の位置付けです。口周りとか、よだれや飲食物の刺激でかぶれやすいところにワセリンをこまめに塗ると皮膚を保護してくれるので有効です。ずっと前にこのブログで紹介したワセリンパックも時々乾燥肌がコントロール出来ない赤ちゃんとかにはいまだに勧めることもあります。

yoshi830.hatenablog.com

 

というわけで、保湿がうまくいってない方の参考にしていただければと思います。

産院退院時や1ヶ月健診で軟膏5gチューブを1個だけ出してもらったら

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

生まれて間もなくから湿疹が出始めて、産院退院時や1ヶ月健診で非ステロイド系軟膏(スタデルムとか)や弱めのステロイドをごく少量(キンダベートなど5gチューブ1個とか)もらって、2ヶ月近くなるまで塗り続けてるけど治らないと受診される方をしばしば見かけます。

 

乳児湿疹(というかアトピー)は後々難治になる子は発症時期が1ヶ月未満など早いことが多く、両親のいずれかにアトピーがあると特に要注意です。難治化が予想されるアトピーは発症して出来るだけ早期に抑え込んでいきたいです。酷くなってからでも治療は出来ますが、コントロールするのに強い薬を長期間必要とするなど大変苦労します。食物アレルギーの合併も高頻度で見られます。

 

もし重症アトピーの初期だとすると、やはり初めから治りにくかったり、みるみる拡がったりします。数日塗れば完治しておしまいなんてことは残念ながらほとんどありません。湿疹の範囲にもよりますが、5gの軟膏なんて適正な量を塗り続けてたらとても1週間ももちませんし、数週間続けても余ってるなら、全然全く塗る量が足りていないです。

 

これは産院の先生が悪いんじゃありません、専門じゃないから仕方ないんです。専門外の処方は安全第一なので弱めの薬(無難な薬)を少しだけ出すというのが医師の間では常識です。私だってたまにお母さんに眠剤出して欲しいとか言われますけど、弱めのを短期間しか出せません。基本的に、とりあえず処方はするけど、すぐに治らなかったら小児科か皮膚科に行ってくれるものとして出してくれてると思ってください。

 

5gのキンダベートでも2〜3日塗ってすっかり治ってるならそれで良いですが、それ以上続けても良くならなかったり、塗れば治るけどすぐに再発するなら、同じ軟膏を塗り続けるのではなく、小児科を受診するようにして下さい。

治癒証明のための受診は、我々の負担だけでなく保護者の時間を奪い、子どもに新たな感染をもらうリスクを負わせ、診察が必要な患者さんが受診出来なくさせているという罪の深さに保育園は気付いて欲しい

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

インフルエンザ、アデノウイルス、溶連菌、たまに新型コロナと本当にいろんな感染症が流行しています。どれも感染力が強いので症状が消失してもすぐに登園登校が出来ないように決まりがあります。インフルエンザなら発熱翌日から5日間+解熱後2日間(幼児は3日間)を満たしてから登校可とか。

 

そのためか、最近患者さんに治癒証明書をもらうために受診を指示する保育園が多くて困っています。少なくとも厚労省からの通知で新型コロナとインフルエンザについては医療機関に治癒証明書を求めないようにと通知が出ています。こちらとしても受診してもらって診察所見で治癒証明をするのではなく、単純に患者さんにいつから熱が下がってるか聞いて書いてるだけなので、保育園で聞いて確認してもらうのと変わらないんです。

 

「簡単な証明書なんだから、そのくらい文句を言わず書いてやれよ」って思われるかもしれませんが、チリも積もれば山となります。そういう無意味な受診を増やすことで、我々の負担だけでなく、保護者の時間を奪うことにもなり、病院に来るということはそれだけ新たに子どもに別の感染をもらうリスクを負わせます。今どこも小児科外来は混雑していて診察する患者数を制限してるところも多く、そういう外来では無意味な治癒証明受診のために、本当に診察の必要な患者さんが診れなくなるのです。

 

いいかげんに、罪の深さに気付いて欲しいです。

 

 

「小児科医たるもの水イボは取るべからず」と誰かが言ってた。

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

「小児科医たるもの水イボは取るべからず」

 

以前、小児科医の友人が言ってて激しく同意した言葉です。水イボってご存じでしょうか?ある種のウイルスが原因で主に乳幼児に出来るイボです。詳しくはぐぐって下さい。で、このイボ、体中にたくさん増えることもあってびっくりしますけど、絶対に自然に治ります。1年以上かかることもあるけど治ります。それなのに取り除く治療がされることも多いです。昔と違って今は麻酔テープなどを使ってなるべく痛くないようにするらしいけど、それでも痛みはあるだろうし、何個もとらないといけないこともあるし、やられる方からしたら恐怖ですよね。

 

ほっといても治るものを、なぜ痛くて怖い思いまでさせて取らないといけないのか?見た目を本人が気にしたり、他児にいじめられたりする年齢でもないでしょうに。無知な保育園やスイミングスクールなんかがプールを制限したりしますけど、それはその保育園などの無知さを責めるべきで、そのために子どもが犠牲になることはありません。

 

水イボだけではなく、経口補水療法(胃腸炎で嘔吐するときにちょっとずつOS1などを飲む治療)で治るものを外来で点滴するのも、結果により方針は変わらないのに採血してアレルギー検査をしたり(すでに少量食べられているなどで)、鼻に綿棒突っ込んでウイルス検査(状態が悪くない児の治療薬のないウイルスとか)をするのも同じ。

 

何もしなくて治るなら何もしない、内服で治るなら注射はしない、周りの大人の興味だけで痛い検査はしない。やらないで良いことを見極められる小児科医でありたいです。

 

なお、あくまで私の個人的な考えと方針であり、小児科で水イボを取るところはそれ相応の考えでされていると思います。決してそういう小児科を批判するものではありません。

 

 

日本から何の援助をすることも出来ず、理不尽に子どもたちを殺し続けるイスラエル政府にただ憎しみの念を送ることしか出来ないことが悲しいです

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

イスラエルパレスチナの戦争が激化しています。というか、イスラエルの攻撃が激化していってるんですよね。ガザの多くの子どもを含めた民間人が傷つき殺されていく映像を見るたびに悲しみと怒りを覚えます。

 

誰に?そりゃ映像ではイスラエルが攻撃してるんだからイスラエルでしょう。でも、その前にハマスが非人道的な奇襲攻撃をしていて、でもさらにその前にイスラエルパレスチナ人に。。。

 

ロシアとウクライナの戦争はわかりやすかった。領土の取り合いでロシアが攻撃を仕掛けた、それに対して世界のほとんどがロシアを非難してウクライナを援助した。米国を含む日本の友好国は軒並みウクライナ支援だった。今回の戦争では米国は完全なイスラエル支持で、日本は国連の休戦を求める決議に賛成ではなく棄権した。とても残念な気持ちになりました。

 

いろいろと歴史的な背景や過激派組織の蛮行もありますが、間違いないく言えるのは今殺されていってるガザの子どもたちにとっては、宗教や民族の歴史的問題もハマスの行いも、一切知ったこっちゃないということ。そして、ウクライナのときのような支援金窓口もなく、日本から何の援助をすることも出来ず、理不尽に子どもたちを殺し続けるイスラエル政府にただ憎しみの念を送ることしか出来ないことが悲しいです。

いつでもいつまでも家族や患者の気持ちに寄り添ってくれる発達外来って

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

良い発達外来ってどういうイメージを持たれてますか?家族の話をよく聞いてくれて、共感してくれて、つらい気持ちに寄り添ってくれる外来(医師)をイメージして、そしてそれを期待して受診していませんか?

 

発達障害を扱う発達外来、心身症外来、成人なら精神科もおそらく同じと思いますが、医師がやってるその手の外来は、多分みなさんが思ってるよりも客観的に俯瞰的に患者さんや家族を診ています。なぜなら、発達障害は脳の障害なので、肺や心臓や皮膚を診るのと同様に、病歴や診察で診断してそれに対する治療を考えてます。治療は薬物もですが、日常の環境設定や患者さんへの接し方が主体となり、そこは家族に指示を出すしかないわけです。だから、いくら家族が良かれと思ってやっている対応でも、それが間違っていれば指摘するし、正しい対応が家族にとって多少難しいものでも、あえて指示することもあります。

 

家族の言うことを否定せず、ひたすら共感を示しながら話を聞いてもらえれば、家族は救われた気になるし、とても良い先生だと感謝されるかもしれません。でも、それなら聞き上手で親切なママ友とかでも良いわけです。医師は科学者として心の問題を脳の病気として捉えます、家族の気持ちに寄り添って話を聞いてるだけでは治療になりません。

 

後々の治療を上手く進めるために、初めだけあえて共感に徹して信頼を得ようとする先生もいるとは思いますし、それが良いんでしょうけど、発達外来でも緊急を要するときもあるし、ずっとそういうわけにはいかないです。もし話をよく聞いてくれて共感して寄り添ってくれるけど、いつまでも家族の対応を少しも否定もしないし指示もしない医師の外来は、長期的に見て問題解決につながる外来ではないかもしれません。

 

当院以外の精神科や発達外来を初診で受診したけど(うちはかかりつけ登録患者さん以外の発達外来初診は止めてるので)、印象が良くなかったといって再診に行くか迷うご家族が時々おられるので書きました。初診からいきなり否定されて嫌な気分になったかもしれないけど、少し我慢して続けて受診するのが良いと思います。