栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

発達検査をやりすぎだと思ってるんです

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

発達検査を受けて数値が高かった、低かった、トータルの数値は悪くないけど発達の凸凹があったとか無かったとか言われたって聞くことあります。発達検査自体、人の能力の一部を見ているだけなので、結果の評価は慎重にしないといけないです。例えばWISCなどの知能検査では社会性やコミュニケーション能力は評価出来ないし、読み書きといった学習につながる要素ですらわかりません。でも、実際は数値が独り歩きして、障害者かどうか、特別児童扶養手当がもらえるかどうかの指標になっているのは恐ろしい気がします。

 

確かにK式だとかWISCだとか有名どころの検査結果は、現在の日本で義務教育として教えられる項目の習得能力を予測するのには最も有効なのだろうし、それによってほぼ全部の子どもたち放り込まれる9年間の義務教育環境にどれだけ適応出来るか、出来ているかがわかるのは、本人にとっても周囲にとっても助けになるんだろうとは思います。そして数値が低く出た子にとって、本人の能力やペースに合わせた教育が受けられるという点では良いのでしょう、でも同時に知的障害または境界域という烙印を押されるということに関しては、将来への影響が心配になります。

 

私はね、発達検査をやりすぎだと思ってるんです。特にこの数値が出るということに関してですけど。学校の先生が家族に医療受診を考えさせるきっかけにするためだったり、療育手帳や扶養手当をとる目的とかで安易にやりすぎなんじゃないかと。義務教育についていけるかとか、本人と一緒にいる時間が長い教育者であればわかると思うし、わからないといけないと思うんですよ。発達障害自閉症スペクトラムADHD学習障害など)を疑ってるのに、とりあえず知能検査をするのも本当にナンセンスと思います。付け焼刃の知識で発達外来をしている一部の先生とかでやたら発達検査したがる方はおられますが、ちゃんと小児の神経や発達を専門的に勉強してきた医師は外来診察中にいちいち数値化せずに評価します(数値化しようと思えば出来るし、家族の納得を得るためにすることもありますが)。

 

病院や学校や公的機関で「WISC」とか「K式」とかやっちゃうと完全に記録に残るし、実際は知的能力の一部を評価しているに過ぎないのに、その子の知能全部を示す数値と多くの人が思っているのを見ると、子どもたちの人権が侵害されているのではないかとまで思ってしまうのです。