栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

「脅すんじゃねえよ」という突っ込みに対して、「脅してるんじゃありません本当のことです」という返答を準備して、ヒブと肺炎球菌ワクチンの大切さを書いてみた

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

年が明けてから、それこそ水痘だとかインフルエンザだとか感染症が増えてきました。その中でも小さい子(というのは、3か月未満の乳児期早期の赤ちゃん)の発熱が多いようです。RSウイルス感染もありますが、何かわからない熱も。風邪症状があるので感染症には違いないでしょうけど。

 

一昔前、というのは10年くらい前なら3か月未満の乳児の発熱を診たら我々は大騒ぎでした。深夜だろうが何だろうが、そういう子が来たら即入院でsepsis workupと呼ばれる細菌感染の徹底的な検査と治療をするのでした。血液、尿、髄液、便など体のあらゆる部分からとれる検体で細菌を含めた検査を行い、強力な抗生剤治療をするのです。乳児期早期の赤ちゃんの細菌感染は高率に重症化するからです。特に細菌性髄膜炎は市中病院クラスでも年間数例はおられたし、これを見逃して治療が遅れると重大な脳の後遺症につながる、見逃すことは小児科医としての生命を絶たれかねない病気の代表格でした。

 

ところが、原因菌の多くを占めるヒブと肺炎球菌のワクチンが出来てから、細菌性髄膜炎は激減します。そのため、乳児期早期の赤ちゃんの発熱を診ても、以前よりは冷静に慎重に判断できるようになりました。まあ、sepsis workupは今でもやるときはやりますけど。

 

ただし(ここから重要!)、これはワクチンでヒブや肺炎球菌が減ったからではありません。今でも、保育園に通ってる汚い鼻水が続く子で細菌培養検査に出すと、ほとんどにヒブや肺炎球菌が出てきます。つまりウジャウジャいるんですよ。麻疹はワクチンでその存在そのものが減ったけど、ヒブと肺炎球菌に関してはワクチンは重症化(髄膜炎合併)を予防するだけで、ちまたの菌を減らす効果はほとんど無しです。

 

麻疹風疹ワクチンはその接種を拒否している方も、そのワクチンの恩恵に預かってますが、細菌性髄膜炎については接種したものだけが得をするのです。だから、接種歴が無い高熱の赤ちゃんには、小児科医は以前と同じように検査(sepsis workup)をためらわないことでしょう。何度も注射して血を取り、背骨の中まで針を刺し、尿道に管を突っ込んで、赤ちゃんに「ごめんね、熱でつらい中、痛い検査ばかりで。これも君のパパとママが君にワクチンをしてなかったせいだからね」と心の中でつぶやきながら。