栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

何でもかんでも将来の発達障害の原因につなげてものを言うのは、妊娠中や育児中のお母さんたちを追い込む卑劣な行為である

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

久しぶりに発達障害関連についてです。発達障害の診断ってとても難しい。まず血液やMRIや脳波検査でわかるものでもないし、自閉性にしても多動性にしてもそれがその子の生活上で障害にならなければ診断に至りません。自閉性が10としても日常生活に問題なければ診断されないし、自閉性が1としても生活で困難さがあれば診断され得ます。生活上の障害になるか否かは、障害のタイプにもよるし、その子が置かれた環境によっても変わるし、時期によっても変わるわけです。ちなみに質問紙法はそのときの生活上の特徴をチェックしているだけで、発達障害の脳特性を直接診断しているものではありません。

 

だから、世間で研究報告されてエビデンスがあるとされるもの含め、すべての「○○すると(しないと)、発達障害になる」という説はすべて胡散臭く思えてしまいます。それは例えば、ワクチンでも、母乳栄養でも、妊娠中の喫煙でもアルコールでも抗てんかん薬でも。知能ならわかります、知能は知能検査である程度正確にIQとして評価できますから(一般的な知能検査がすべての知能を評価しているわけではありませんけど)。しかし環境要因を除外して脳特性(自閉性にしろ多動性にしろ)を正確に評価する方法は、私の知る限り存在していません。個人的には発達障害の脳特性のほとんどは遺伝子レベルで決まっていて、ワクチンや栄養などの外的要因はごくごくわずかだろうと考えています。

 

私は母乳育児はメリットは多いという意見には賛成ですが、それを将来の発達障害の発生と関連して言うのは強く止めて欲しいと思います。完全ミルク栄養でも将来の発達障害の発生率は変わりません。何でもかんでも将来の発達障害の原因につなげてものを言うのは、妊娠中や育児中のお母さんたちを追い込む卑劣な行為であることを自覚して欲しいです。