栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

発達検査では発達障害の診断はつかないので、安易に検査を勧めるべきではないと思う

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

新年初めての更新です。あけましておめでとうございます。といっても、もう5日なんですね。当院は明日から診療開始です。

 

新年最初は発達関係のお話です。発達障害ですが、最近は神経発達症という言い方に変わったりもしてますが、混乱するといけないので発達障害と呼びます。発達の質的障害で、注意欠陥多動性障害ADHD)と自閉症スペクトラム障害ASD)と学習障害(LD)があり、それらを合併することも多いです。気を付けることは、発達遅滞(知的障害)とは別概念です。発達遅滞は例えば実年齢は5歳だけど、知能は3歳レベルだとかです。いまいちどう違うかわからないかもしれません。発達障害と発達遅滞を合併することも多いですしね。

 

例を挙げると、落語を1回聞いただけですべて暗唱できるような高い記憶力を持つ子が、「おかえり」「ただいま」「いただきます」「ごちそうさま」といった簡単な会話は混乱して使えないみたいな。言語の記憶力は平均より非常に高いけど、コミュニケーションの道具としてほとんど使えないということです。極端な例ですが、わりと近い子はいますし、自閉症スペクトラム障害と診断されてることが多いです。こういう子に一般的な発達(知能)検査をすると、高い数値が出てしまうことがあります。

 

つまり今回言いたかったのは、発達(知能)検査で発達障害の診断は出来ないということ。教育現場の先生にしても行政にしても、そういうことを知ってか知らずか発達検査を勧め過ぎなのではないかと感じます。発達指数(DQとかIQとか)が高くても低くても、発達障害であるときもあるし、そうでないときもあります。発達指数がどの辺かは本人の診察と家族の問診で小児科医はもちろん、たくさんの同世代の子を見ている園や学校の先生方もわかるんじゃないかと思います。発達検査ははっきり数値で出てきますが、その解釈は難しく、発達障害のある子ならとりわけ検査日の調子や気分、検査者の技量などで大きく結果にバラつきが出ます。それなのに1回の検査の低い数値(IQ)だけでもインパクトをもって家族の心をえぐります。高値なら高値で、発達障害も否定されたと誤解させることもあります。

 

もし家族に発達に問題があることを気付かせる手段として検査を勧めているなら、出来るだけ控えて欲しいです。もっと他に方法があると思います。

 

なお、反論がありそうなのであらかじめ書いておくと、発達障害があると検査項目間でのバラつきが出やすい傾向はありますが、バラつきがあっても発達障害でない子も多くいます。検査時の子の様子の記録から、発達障害の特徴をうかがうことは出来ますが、これは数値化されないし検査者の技量や主観の影響が入りやすく、それが目的なら普通に面談するだけで十分です。また言及している発達検査はWISCとか新K式など言われる一般的な検査であり、発達障害に含まれる各障害を評価するのに特化した検査は存在します。