栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

保育園児の鼻の中のばい菌たち(一部、医師向け)

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

抗生剤の不適切使用により世界的に薬剤耐性菌が増加している問題に対して、日本でも抗生剤を必要な場合に限り適切に使用することの呼びかけが政策として行われてます。早い話が、風邪なんてほとんどがウイルス性で自然に治るものであり、抗生剤は効かないんだから、むやみに使うなってことです。

 

でも、実際は小児においては、ず~~~~~~っと、ほぼ半永久的に(ちょっと大げさですが)、咳鼻が続いている子がたくさんいて、我慢できずに抗生剤使うとぴたっと良くなることがしばしばあります。だいたいが保育園にいる小さい子です。で、良くなっても1ヵ月もしないうちにまた悪くなります。登園してれば他児からまた感染しますからね。

 

そこで、今後に抗生剤を使うにしても出来るだけ耐性菌を作らない、下痢など副作用が出にくいものを使えるように、私は抗生剤開始前によく鼻腔内の細菌検査(迅速検査ではなく培養)をしています。その結果のうちの4人の結果が下に貼ったものです(すべて1歳児)。解説すると、英語(日本語)で書いてるのが菌の名前で、下の欄はアルファベットが抗菌薬の略称でそれぞれの薬剤が、それぞれの菌に対して効くのを「S」、効かないのを「R」(薬剤耐性菌)と表記されています。

 

肺炎球菌とかモラキセラとか、保育園児の鼻の中にはこんなに菌がいて、それなりに抗生剤に耐性もあります。意地悪なこと言いますが保育園によっても偏りがあります、感染対策を努力しているところと、無頓着(あきらめている?)のところがあるなあって思います。今のところ効く抗生剤が無いわけでは無いので治療は可能ですが、軽度の鼻炎や中耳炎のたびに使ってるとそのうち多剤耐性菌になって使える薬が無くなります。だから、ここぞという酷くなりそうなとき以外は出来るだけ抗生剤は使わずに、去痰剤や鼻汁吸引などで酷くならないように、菌との共存を目指すのが重要と考えています。

 

以下は、実は読者が多いらしい同業の医師向けの話です。当院界隈では鼻腔の細菌培養するとほぼ全例に肺炎球菌が出て、モラキセラやヘモフィリスも多いです。提示してるように溶連菌も出ます(この例は咳がひどく、熱や皮疹といった溶連菌の症状は全くありませんので、常在してると思われます)。黄色ブドウ球菌も常在菌でしょうけどなかなかの薬剤耐性で重症のとびひになったら厄介かもしれません。注目は肺炎球菌は全例でマクロライド耐性です、耳鼻科が少量長期投与も含めて出しまくってますしね。マイコやクラミジア以外で抗菌作用を期待してのマクロライドは当地区では悪手のようです。βラクタマーゼ産生するモラキセラやヘモフィリスも出てて難しいですけど、多くの副鼻腔炎や中耳炎の原因菌になってそうな肺炎球菌は、ほぼペニシリン系で感受性があるのでオゼックス®やクラバモックス®はむやみに使わないほうが良さそうです。参考にしていただければ幸いです。ちなみに当院は小学生未満は包括なので、検査費用は全部持ち出しです。

4人分、すべて1歳児の鼻水です