栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

言葉が出てないとき半年後にまた確認させてくださいとなったとき、小児科医は何をみてるのか

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

前回に続いて、健診で経過観察となったときのことに関してです。今回は精神発達の遅れを指摘されたときのことを、1歳半で意味のある言葉が出てない、もしくは3つ無いときを例にします。

 

通常1歳半健診で発語に関しては3つ以上の意味のある言葉が出てるかどうかがチェックされます。そのときはまず、そもそも耳が聞こえているのかを確認します。言われたことはわかってると家族は主張されることもありますが、子どもはその場の空気や口の動きを読み取るなどして、言われたことを理解していることもあるので、注意深く音への反応を確認します。疑わしければ聴力検査をして、難聴であれば補聴器の導入などを検討していきます。なお、新生児期の聴力検査で異常なしとなっていても難聴のこともあります。

 

聴力に問題なければ、精神発達の遅れとしてフォローしていきます。でも1歳半の時点であれば大概半年後(2歳になる頃)くらいに再チェックというのが多いと思います。個人差もあり、確実な遅れと判断するのは1歳半は少し早いですね。

 

発語の遅れを診るときに、ただ精神発達が全体に遅れているゆえなのか、そこに自閉性があるのかを診ます。自閉性は発達の質的障害(不自然な発達の仕方といいましょうか)があると疑われます。そこで発語という言語性コミュニケーション(さらにその中でも表出)以外の社会性、情緒面であったり、非言語性コミュニケーションの発達を診ていきます。指差しをするかとか、バイバイできるか、どういう遊びを好むかなど聞かれますよね。自閉性があると、発語が少ない以外にも日常生活で困難さやトラブルがあることがあるので、そこへのより良い対応を家族と検討していきます。その時点で、発達障害自閉症スペクトラム)の診断は確定出来ることもあれば、難しいこともあります。大切なことは診断を確定することではなく、その時点の困難さを抽出して適切な解決策を検討して、日常で発達を促せるような接し方などを提案していくことです。それは子ども一人ひとりの個性により変わるので、必ずしも診断名は必要ないのです。

 

私は発達障害の診断は、自分の中ではいろいろ思っても、特別な理由(診断名が無いと療育を受けられない、投薬が必要など)がない限り、出来るだけ就学前まではしないことにしてます。理由は普通に自信が無いからです。どうみても自閉症と思った子が後に発達が伸びて、普通に就学していくことも多々ありました。そういう子って、ずっと先(小中学校以上)になってから社会性の問題が発生することもありますが、それはその時にならないとわからないですし、対応もそのときの状況によりますしね。

 

ていうか、2,3歳ではっきり保護者に診断名を言える先生って凄いです(皮肉です)。診断した以上、地域や心理士任せにせずに、ちゃんとフォローしてあげて下さいね(定期的に患者さんを外来で診て、状況を確認して保護者の不安や困りごとを聞くという)。