栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

首が座ってないから来月も来てくださいとなったとき、小児科医は何をみてるのか

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

乳幼児健診の話をします。健診では発達の進み具合をチェックされるわけですが、発達は大きく運動と精神に分けられます。運動発達は首が座ったり、立ったり歩いたりといった体を動かすことの発達で、精神発達はあやし笑いをしたり、言葉が出たりといった知能に関連した発達です。今日は運動発達に遅れが指摘されたとき、医師はどう診ていくのかを書いてみます。

 

例えば、4か月健診ではほとんどの子は首が座っています(体を起こしても頭がだらんとしない)。これは筋力と筋緊張の発達程度を診ています。筋力と筋緊張の違いが分かりにくいかもしれませんね、筋緊張というのは体(筋肉)の硬さのことで筋力とは別箇に評価します。筋力が正常でも体がぐにゃりと低緊張だと首が座ってないと評価されます。

 

首が座ってないと受診された子には、小児科医はまず全身を診ます。実は首だけではなくいろんな体の部位で筋力と筋緊張を評価できます。それで、筋力正常だけど緊張が弱いのか、筋力と筋緊張ともに弱いのか、また逆に首以外の部分で緊張が強すぎるというアンバランスな所見が見られるケースもあります。

 

実際には筋力正常で筋緊張だけ弱めというのが多いです。筋緊張は体質で個人差があるので、そういう子は遅れながらも正常に発達していくので、その確認のためにのんびり経過観察です。

 

筋力と筋緊張ともに低下していたり、部分的に緊張が強すぎる子は筋肉や神経の病気が隠れていることがあり、すぐに検査(MRIやCT、血液など)を進めることもあれば、注意して経過観察を続けます。なぜすぐに検査しないケースがあるかというと、筋肉などの病気を疑われた場合は簡単に検査できない病気も多いです(最近は遺伝子検査で診断される病気も増えてますが)。究極、全身麻酔の手術で筋肉の一部は太腿などから切り取って調べるといった大掛かりな検査(筋生検といいます)となることも珍しくないからです。しかも、わかっても特に治せる薬がない病気が多く、早く診断するメリットがあまり無いということです。ただし薬がなければ治療はリハビリ主体になるし、時には呼吸筋まで衰えて気管切開や人工呼吸器が必要になるので、その開始タイミングを見誤らないように注意して観察していきます。

 

喜ばしいことに最近では脊髄性筋萎縮症という疾患については、症状の出現や進行を薬で予防出来るようになりました。それは一方で我々小児科医はその病気を絶対に見逃してはいけなくなったということでもあります。なかなかのプレッシャーです。