栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

ワクチンを否定するおじいちゃん、おばあちゃんの意見に耳を貸す必要はありません。

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

子どもを育てる上で、祖父母(保護者の父母)の助言というのは時にとても頼りになるものですね。そりゃ子育ての先輩ですからね。保護者のあなたよりも1人か2人か3人か(多くても5人くらい?)多く子どもを育てて来られていますからね。

 

ちょっと皮肉っぽいですね。いえ、確かに1人でも育てた経験があるだけで全然違うことがらもあります、夜中に熱が出た時の対処とかね。でも、数人育てた経験から言われるワクチンに関する祖父母の助言は全く意味はありません。

 

そもそもワクチンは数十〜数千人に1人とかに発生する重篤な事態を予防するものです。数人の経験から語れることは何もありません。

 

「私たちの時代にはそんなの無かったけど大丈夫だったから、そんなワクチン受けなくてもいい」という、おじいちゃん、おばあちゃんの意見には全く耳を貸す必要ありません。お父さん、お母さん自身が、かかりつけ医の説明を聞いたり、信用できる医療機関(国公立など)のサイトで調べるなどして、納得されれば接種すれば良いのです。

 

そして、もしかしてこれを読んでるかもしれない、ワクチンを否定する祖父母の方へ。あなたの子どもが大丈夫だったのは運が良かっただけです。お孫さんが不運から守られる機会を奪わないで下さい。

勇気を出して子宮頚がんワクチンを始めないといけない時期が来ているのか

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

下のリンクのように久しぶりに子宮頚がんワクチンの記事がありました。子宮頚がんワクチンに関して、私は基本的に慎重派です(反対派ではない)。そう言うとかっこ良く聞こえますけど、要するに怖くて接種出来ないというヘタレ小児科医です。

 

ワクチンの副反応とされている患者さんのほとんどは心因性であって全く接種に問題は無いという主張は少しわかります。確かに全報告数のうちの多くが頭痛とかめまいとかっていう、まあ思春期女子によくある不定愁訴の子たちかなという患者さんのようですが、不随意運動(体が勝手に動く)や知能障害、歩行障害など示す患者さんは、思春期によくある症状とはとても思えない。

 

やっぱり私はこのワクチンには何かあるんじゃないかと思ってしまうんです。けれども冷静にそういった重篤な副反応かもしれない症状が出現するリスクと、子宮頚がんを発症するリスクを天秤にかけると、誰がどこから見ても子宮頚がんワクチンは接種すべきなのです。

 

数年待てば何かわかるかな、私のこの不安が解消するかな(他力本願ですいません)と思い、接種を特に勧めることなく時間を過ごしました。でも何も進展しないし、推進派と反対派の醜いディスりあいが続いているだけです。

 

上述のようにリスク(確率)を冷静に判断して、そろそろ勇気をだして接種を拡げていく時期が来ているのかなと思うようになってきました。私たち医療者は自分の感覚だけでなく客観的データも合わせて総合的に判断して、子どもたちの将来も含めた健康を守る義務があるのですから。

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風邪の後になんだか寝てばかりいる、ぼーっとしてる、へんてこな言動をするときは、亜急性脳炎かもしれません

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

私は専門施設で小児の神経分野を研修した後は、大学病院などで急性期の神経疾患を主に診ていました。その中で「脳炎/脳症」をしばしば診ることになりました。どういうものかというと、主にウイルス感染により脳が壊されていく病気です。意識障害や痙攣などを起こして、多くは後遺症を残し、ひどいときは植物状態や亡くなることもあります。もともと体が弱い子がなりやすいということもなく、数日前まで元気だった普通の子どもにいきなり発症します。有効な治療はほとんどありません。インフルエンザ、ロタ、水痘、おたふく、アデノ、、など皆さんが少しでも名前に聞き覚えのあるウイルスは、ほとんどすべて脳炎に伸展する可能性があります。

 

ちょっと医療に詳しい一般の方や専門でない医師の方も、脳炎はいきなり痙攣から始まって意識障害が進んでという、急激に発症するイメージを持っているかもしれませんが、実はそうでない経過も多いのです。カゼで熱が続いた後に、解熱して落ち着いてきのだが、数日しても何となく元気がなくぼーっとしたり、寝てばかりいる、おかしなことを言ったり、変な行動をとるなど。病院を受診しても、初期だと会話も出来て、これといった異常を認めないから帰されるのだけど(ひどい例だと心療内科に紹介されて精神病薬を出されていた子もいました)、家族からみるとやっぱりおかしいという状況が続いて、とうとうけいれん重積など起こして病院に運ばれてくるといった感じ。そこまで進んでから治療開始してもほぼ手遅れです。

 

こういう脳炎のことを「亜急性脳炎」と言ったりするのですが、これに本当に悩まされてきました。出来るだけ早い段階で治療に入れると軽症で済むことが多いのですが、受診しても早い段階で気付ける開業医も少なく(そもそもそういう脳炎の存在もあまり知られてない)、私自身も確実に見分ける方法がわかりません。ただ、勘を頼りに疑わしければ入院でMRIや脳波を録りながら異変の出現に備えるくらいです。

 

ここ最近なぜかそういった、感染症後で何となく元気がなく寝てばかりいるという患者さんに続けて出くわしています。病院勤務なら不安なら入院で診ることも出来るのですが、クリニックではそれは簡単ではありません(とはいえ、1人は入院させてもらいましたが)。自分の神経科医として技術と経験と勘をフル稼働して診ていますが、なかなか大丈夫と断言できません。病院紹介にしないときは、自宅でどういう点に注意して観察して、どうなったらすぐにまた受診してもらうかを説明して帰ってもらっていますが、そういう子を診た日の夜は私も気になって悶々と過ごすことになります。

相手の目を見て挨拶なんか出来なくていい

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

この日曜は東京に乳幼児健診の研修に行ってました。講演者の1人は以前私が発達障害の勉強のため、外来に付いて教えていただいた先生でした。その講演の中で、健診の時に子どもと話すときはface to faceではなくside by sideの方が(つまり正面から顔を見て話すのではなく)、子どもは緊張せずに話が出来るって話をされていました。そういえば、私がその先生の外来に付いた1日目に、自閉症の診察は目を合わせて話しかけてはだめだよって教えてもらったことを思い出しました。かれこれ10年以上も前の話です。

 

自閉症の子は視線を合わせないっていうのは結構有名な話ですね、乳児期から見られることもある特徴です。目を合わすことに不安を感じるようです。これは感覚的なものなので、簡単には治しようがありません。

 

以前、自閉症の子が通う幼稚園の先生が、「まずは朝、目を合わせて挨拶することを目標にしたいと思います」と、意気揚々に言われたのでびっくりしたことがあります。なるほど、目を合わすのが苦手だからそれを練習させようということみたいで。その先生は目を合わせることはコミュニケーションの基本だと思っているようでした。

 

「挨拶は目を合わさないでも出来たら良しとしてあげて下さい、お辞儀しながらだったら違和感ないでしょう。」とお願いしました。

 

発達障害の子の苦手なことは感覚的(生まれつきで変えようのないものと言う方が分かりやすいでしょうか)なものが多いので、練習して治すには相当な苦痛を伴います。あなたが黒板を爪で引っ掻く音になれるように毎朝聞かされるのと同じです。慣れる前に精神がおかしくなりそうですね。

 

発達障害の子(大人も)が生きやすくするには、彼ら自身が苦手なことを上手に避けて生きていく術を身につけることと、また、多くの人には簡単なことでもそれを苦手で出来ない人がいることを許容する社会にしていくことだと思います。

 

このプール熱(アデノウイルス)の暴れっぷりを見るとインフルワクチンは効いてたんだなって思う

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

6月に入ったというのに、プール熱手足口病も、最近では溶連菌なんかも流行しています。実は5月の延患者数は今年に入り最高でした。そう、通常小児科の繁忙期のはずの1~3月よりも多かったのです、しかも5月は連休もあったのに。

 

プール熱アデノウイルス)とか特にひどくて、ある保育園は全滅なんじゃないかってくらい次々に受診に来られました。冬のインフルエンザよりひどい。正確にはどうなのかわかりませんが、アデノはインフルエンザと同等かそれ以上の感染力と重症化リスクがある印象です。その上、ワクチンはなく、効果のある抗ウイルス剤もありません。

 

インフルエンザワクチンの効果について疑問を感じている方も多いと思います。実際毎年いくらかは流行するので。しかし、最近のプール熱の暴れっぷりを見ていると、なんだかんだでインフルエンザワクチンの効果は出てたんじゃないかと思いました。

 

というわけで、全く季節外れですが、インフルエンザワクチンも必ず接種しましょう。製薬会社さん、在庫切れにならないようにしっかりたくさん作っておいてくださいよ!

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抗生剤は何とかして3回飲んでください。

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

問診票に処方薬の内服回数の希望を記入するようになっているのですが、ほとんどの方は朝夕2回を希望されます。学校や幼稚園、保育所で昼に薬を飲ますことが出来ないからですね。去痰剤などの風邪薬程度であれば1日2回でも大きな問題はありませんが、抗生剤に関しては朝夕眠前になっても良いので3回内服でお願いしています。

 

抗生剤を始める時は、細菌にそれまで去痰剤などだけで穏便に対応していたのを止めて戦闘開始する時です。抗生剤はいってみれば武器のようなものです。反撃の余地を与えず、一気に叩きのめさないといけません。小児科でよく使われる抗生剤であるペニシリン系(うちではワイドシリン)、セフェム系(うちでは第一世代のケフラックスやケフラール)は内服してから効果が出て切れるまでの時間がとても短いのです。2時間くらいかけて薬物濃度はピークに達しその後たった1時間で半分に減って効果も早々に切れてしまいます。これは1回の内服量を増やしてもそんなに変わりません。単発のミサイルなのです。本来なら1日3回発射出来るミサイル(ペニシリン系なら4回発射でも可)を2回しか打たないわけですから、その効果が切れてる間に反撃の余地を与えてしまい中途半端な効果で終わり、肺炎や中耳炎、蓄膿などを重症化させてしまうのです。

 

マクロライド系(クラリシッド、ジスロマックなど)やニューキノロン系(オゼックス)は効果持続時間が長い抗生剤で1日2回でも効果があるのですが、マクロライドは当院エリアの主な攻撃対象である肺炎球菌のほとんどがマクロライド系耐性菌で無効ですし(マイコプラズマには有効)、ニューキノロンはその添付文書にもありますが、他の経口抗生剤が無効の時に限り使用する薬になっていて、切り札として温存しておくべき薬とされています。保育所で飲ませられないからという理由で使用する武器ではないのです。

 

早く確実に菌を叩いて病気を早く良くするために、頑張って抗生剤は1日3回内服させるようにして下さい。朝夕眠前になってもいいし、食前食後どちらでも良いし、多少内服どうしの間隔が詰まっても大丈夫ですから。

 

日本脳炎ワクチンをストップしました(涙)

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です

 

またもやワクチン接種制限することになってしまいました。日本脳炎ワクチンの出荷制限により新規予約をストップしました。申し訳ありません、ワクチンを推奨している身としては非常に心苦しく思っております。特に日本脳炎は蚊が媒介となる感染症なので、一年で今の時期に最も接種しておきたいワクチンなのに。とりあえず、すでに予約済みの方や1回目接種後でこれから2回目接種の方の分は確保します。

 

こういうことが年に何度もあるので、クリニックレベルで在庫をうまく調整して接種制限は出来る限りしないようにやっていました。実際、現在、麻疹風疹ワクチンもおたふくかぜワクチンも出荷制限がかかっていますが、当院では通常通り接種しております。日本脳炎ワクチンもギリギリまで制限せずにいたのですが、流通復活の見通しが来年以降だということ、他院が接種制限したために当院に流れ込んでこられる方で需要が増大してきたことから、当院でも制限せざるを得ませんでした。さすがに6ヵ月以上を十分持ちこたえられるほどの在庫は確保出来ていませんでした。

 

本当に悔しくて仕方がないです。もう行政はあてにならないし、自分たちでどうすれば良いかを考えています。何が起きようとも自分たちの患者さんに確実にワクチン接種をして感染症から守ることが我々の使命ですから。