栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

ADHDの薬をだまされたと思って始めてみたら、やっぱりだまされたと思うかもしれない

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

外来で、他の医療機関ADHD(注意欠陥・多動障害)の診断をされて、投薬を勧められてるが悩んでいると相談をうけることがしばしばあります。コンサータストラテラ、インチュニブとかです。確かに精神科で使うような薬だし副作用なども含めて、便秘や喘息の薬よりも抵抗感があるのもわかります。

 

あまりに悩みすぎて膠着状態に陥ってるようなことも。それは同時に学校もそんな感じで、医師に投薬を勧められてるということは投薬を開始しない限り何しても無駄、または投薬が始まれば問題行動はそれだけで消える、などと思っているんではないかと感じることがあります。

 

残念ながら現在使われてるADHD薬は、環境調整やソーシャルスキルレーニングといった治療をやりやすくする、ハードルを少し下げる程度です。内服を始めた途端に、人が変わったように問題行動が無くなることはほどんどありません。ですから、悩みに悩んで半信半疑のまま薬を開始しても、全然かわらないって感じる家族は多いと思います。実は客観的な指標で評価すると改善してることが多いのですがね(朝出かける準備の時間とか、授業中の立ち歩きの回数とか)。

 

発達外来で医師がADHD薬を勧めるときは、それまでいろいろ環境調整のみで治療を試みたけれども限界がきてるとき、もしくは、あまりにも患者の多動衝動性などが強すぎて環境調整だけでの治療は絶体困難という判断で初めから投薬を勧めるときがあると思います。後者のように診断してすぐから投薬する場合、意を決して始めた投薬は、スタート地点に過ぎないこともあります。私はセカンドオピニオン的に相談されたら、ほとんど投薬を勧めています。でも、そんなにも家族が悩んで半信半疑で開始するんなら止めた方が良いと話しています。だまされたと思って飲ませてみたら、もの凄く効いたってことは今のADHD薬にはあまりありません。ほらやっぱり効かないじゃんって思うようになったら、怠薬するようになるし、薬以外の治療も上手くいかなくなります。

 

私自身の発達外来で薬を勧めるときは、少しでも家族が渋るようならそれ以上は勧めないことが多いです。無投薬でいきたいなら、それで出来る限り頑張ってみることにしています。大切なのは、薬以外のアプローチを止めないこと、投薬するなら家族が十分納得した上で開始することです。実際には十分納得してくれたと思って投薬開始しても、実はあまり乗り気でなかった、理解が不十分だったということも多々あって難しいです。

 

因みに、私が発達外来を始めた20年近く前は現在のように薬がいくつも無くて、今は使えないリタリンという薬一択でした。これはあまりに切れ味鋭くて、騙されたと思って飲んでも、びっくりするくらい行動がかわりました(ただし短時間で効果が切れる)。この薬は今は徐放剤(長時間かけてゆっくり効く)に改良されてコンサータという名前で使われていますが、全然使用感が違ってリタリンと同じような効き方しませんでした。私はリタリンの、家族も本人も怖いくらい実感できる効果を上手く使って、逆に薬を早期に中止する治療が得意だったので、使えなくなって残念でした。