栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

ダイアップは御守りではない

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

ダイアップ®っていうけいれんを止めたり、予防するための坐薬があります。うちのかかりつけじゃない患者さんが受診したときに、「熱性けいれんの既往があります、手元に以前他院で処方されたダイアップがあります、終わり。」って人を驚くほど見かけます。熱が出てまたけいれんするのが怖いんですけどどうしたら良いですか?って聞かれたりして発覚することが多いんですけど。そもそもダイアップが処方されて手元にあるってことは、どういうふうに使うようにと出されたんですか?ってこちらから聞くと、「御守りとして持っておくように言われた」とか、「使いたかったら使って良いよと言われた(どういう時というのももちろん曖昧)」とか。

 

患者さん側にしか聞いてないので、実際はそれなりの説明があったのかもしれませんけど、少なくとも伝わってないですよね。だいたい御守りって何?(笑)

 

ダイアップはある種のてんかんで、部分的な長い時間持続する発作に対しては発作時に使うことがありますが、いわゆる熱性けいれんで稀に見られるような、長時間続く止めないといけない全身性けいれんに対しては、効くまでに15~20分以上かかるので発作時の薬としては使い物になりません。

 

熱性けいれんに対して処方されるときは、基本的に発熱発覚時にけいれんが生じる前に予防として入れておく薬としてです。熱性けいれんがあれば全例使われるかというとそうではなく、いくつかの条件が揃うと発熱時に予防として使用しましょうということになります。ほとんどの熱性けいれんは起きても心配ないものなのですが、中に長時間止まらず呼吸抑制なども伴い脳に障害を残したり、てんかんへ移行する(そもそも熱性けいれんではなく初めからてんかんかもしれない)可能性があったりするからです。ひと昔前に、1回だけ短く安全な熱性けいれんがあっただけでもダイアップ坐薬で何年も予防させるケースが増えた時期があり、学会でダイアップの使用に関してガイドラインが出されました。

 

あくまでガイドラインなので、完全にその通りにする必要はありませんから、私などはガイドラインの内容を説明しつつ家族の考えや不安なども鑑みて、ダイアップを使うかどうかを決めます。使うことになったからには、絶対にけいれんを起こさないという覚悟をもって予防してもらいます。発熱と考える基準体温から、坐薬の量、回数まできっちり決めます。手元に必ずダイアップがある状態を維持すること(以前使ったあと処方してもらってないとか、無くしたとかはダメです)、基準の体温を見た時は機嫌が良かろうが眠っていようが関係なく必ずダイアップを入れること(解熱剤とはわけが違います)、副作用が強くて不安だとかで勝手に止めないこと(量や回数を調節出来るから)、予防しててもけいれんしてしまったり、けいれんしてから発熱に気付いてダイアップが間に合わなかったなどあれば必ず相談すること、などなど厳密です。

 

熱性けいれんって良性疾患と言われてますけど、ある種の難治性てんかんと同じ遺伝子異常が見つかっていたりと、個人的には油断できない疾患と思っています。何らかのけいれん性疾患の可能性を考えたとき発作を起こさせないことは、将来の難治化を防ぐために非常に重要なのです。