こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の院長の吉岡誠一郎です。
年末に報じられた、海老名市でお母さんが小中学生の子ども3人を殺した事件の話です。小学生の長男の不登校とかんしゃくで悩んでいて、児相やスクールカウンセラーとも相談していたようですが、最悪の結末になってしまいました。すべての不登校や発達障害が医療機関にかかる必要があるとは思いませんが、このケースは母親がここまで追い詰められているならやはり医療介入は必要だっただろうし、実際治療が受けられていたのか気になります。
不登校はともかく、かんしゃくというのは本当に大変ですよね。発達障害特性のある子のかんしゃくというか興奮状態は、大人が抑えようとしても独特の動きですり抜けて、力も信じられないくらい異常に強いし、待ってれば落ち着いてくるかというとそうではなく延々興奮し続けるといったものが多いです。小児科外来でも注射や、インフル検査で無理やり鼻に綿棒突っ込んだ後とかに、しばしば見られます。これが日常的にあって、そのたびに対応しないといけないお母さんたちは本当に大変だと思います。
これは脳の特性、例えば過敏性だったり、こだわりなどからくる要素が大きいので、家族が声かけだとか環境調整だとか頑張っても限界があります。1,2歳頃からひどい子はひどくて、この症状に発達障害(自閉症)の病名で使える薬もあるんですけどほとんどが6歳以上で、現実には小さい子には漢方薬を出すくらいしかありません。
脳の興奮性を抑えるという目的で、私が専門でよく使っている多くの抗てんかん薬などは、上手く使えばこの症状を強力に抑えられるんですけど、発達障害という病名に適応がないため堂々とは使えません。でも、こういうニュースを見るとね、もう嘘の病名つけてでも抗てんかん薬で抑えてあげた方が良いのかなと思ったりします。バレたら私が厚生局や保健所から怒られることになりますが。
あと、母親(父親のこともあるでしょうけど)のメンタルケアですよね。子どもの問題行動が原因であることが明白でもなかなかすぐに解決出来るものではないし、その中で一番近くにいる家族である母親の心の安定を保とうとすると、母親だけのためのフォローが必要と思います。これは子どもの主治医が子どもの治療のついでにするのではなく、出来れば母親の主治医が別にいるくらいの方が良いんじゃないかと思います。
子どもはね、いろいろ問題があっても日々脳が成長してるので、時間が過ぎれば自然に解決していくことも少なくないんですよね。そういう意味では、家族を孤立させずケアしていくことは子ども以上に重要なのかもしれません。