子どもの早期の外国語学習と言葉の発達について(前編)
こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。
子どもの外国語学習についての話です。有名な研究(パトリシア・クールという名前で検索すれば出てきます)なので、テレビなどで見たことがあるかもしれません。赤ちゃんは生後10か月くらいまでは、あらゆる言語の音素を聞き取ることが出来るのだそうです。例えば英語のLとRの違いは日本人にはなかなか聞き取れない音素ですが、もともと赤ちゃんはそういう母国語では区別しないような音素でも聞き取れたのです。でも、10ヵ月以降は次第に母国語で区別が必要ない音素は聞き取れなくなっていくようです。
しかし、その時期に外国語を話しかけられる環境があると聞き取る能力は維持される(または10か月を過ぎても子どものうちなら再獲得できる)そうです。ただし、それもただ外国語の音声だけや、DVDなどの映像と音声だけの語りかけではなく、実際の外国人が直接に語りかけた場合でのみ可能であることが実験で証明されています。
これは子どものうちに外国語の聞き取り能力を身に付けさせたければ、DVDなどの教材を見せるだけでは意味がなく、実際の外国人との会話が必要であり、おそらくそれは赤ちゃんが外国語を話す生身の人間とのコミュニケーションをモチベーションとしたからではと考えられています。
子どもの言葉の発達がゆっくりで心配されているお母さんに、私が外来でよく普段の遊びは出来るだけコミュニケーションを介した遊び方を多く取り入れるのを勧めていますが、コミュニケーションが子どもの言語理解や発語を引き出す重要な要素であるからなのです。
以上のように外国語の聞き取り能力の獲得には早い方が良いようですが、外国語の単語を早いうちから覚えさせることに関してはちょっと問題があるかもしれません。長くなるので、別の機会にお話ししようと思います。