栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

生まれたばかりの赤ちゃんは感染しないという都市伝説

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

どうも近隣のとある保育園でRSウイルスが大ブレイクしてるみたいで、今日はその保育園から続々と患者さんが来られる1日でした。しかも、そのうちの数人は生まれたばかりの赤ちゃんのきょうだいに感染してしまい、そこまで状態は悪くなかったですがちょっと心配しています。

 

時々、生まれたばかりの赤ちゃんは風邪ひかないと思っていて、自分の子どもが感染をうけると驚かれる方がいます。特にお父さんに多いような。確かに一部の感染症、例えば麻疹(はしか)とか水痘(水ぼうそう)とかは、お母さんが抗体を持っていればそれが胎盤から移行して、生まれて1年くらいは感染から守られるとされています。インフルエンザやコロナも同様に多少は重症化が減らせるとも言われています。でも、それはお母さんが抗体を持っていればの話で、お母さんが麻疹も水痘もワクチン未接種で罹ったこともなければ、生まれたての新生児といえども普通に感染します。

 

ほとんどの風邪ウイルスは終生免疫にはならない(何度も同じウイルスに感染する)ので、お母さんからの移行抗体はあてになりませんし、RSウイルスのような大人が罹っても軽い風邪で終わるけど、赤ちゃんに感染すると重症化するものもあるので、周りは十分注意しましょう。

 

あと、ちょっと難しい話かもしれませんが、感染症は細菌とウイルスに分けられます。このうちの特に細菌の方に生後3か月未満は特に弱いのです。普通の大人や子どもの鼻の中や腸内にいる菌の感染で、比較的簡単に敗血症(菌が全身にまわり重症化する)や髄膜炎になってしまいます。外からの菌の侵入に対する防御がまだ未熟であるし、特に脳には血液脳関門というバリアが本来人間にはあるんですが(超大事な場所なので)、赤ちゃんはそれが脆弱で菌に突破されやすいんです。このあたりの感染から守るために0歳児のワクチンは行われていますが、それも2か月になってからようやく開始です。

 

あなたの、ついさっき鼻くそをほじったその指に付いた肺炎球菌やらヒブやらが、トイレのあと適当に水でぬらしただけの手に残ってる大腸菌が、赤ちゃんを死に追いやるかもしれません。家族ではない生まれて間もない赤ちゃんと接するときは、きちんと手を洗ってマスクもするくらいの方が良いと思います。