栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

ミニマムハンドリングと医療と育児と教育と

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

医療の世界でミニマムハンドリングっていう言葉があってですね、かれこれ20年以上前に私がNICUで働いてた頃によく言われてただけなんで、医療といっても小児科、しかも新生児領域でしかそれほど使われてないかもなんですけど。

 

NICUっていうと予定より早くだったり、小さかったり、何らかの病気やトラブルを抱えて生まれた赤ちゃんを診る施設なんですが、そういう子って生まれてすぐはもちろん不安定で、それをいかに不安定ながら何もない状態を維持して時間を経過させるかが重要で、そうするとだんだん安定感が増して大きくなって無事に退院にいたるのでそれを目指します。もちろん異変が起きた時は、それは感染だったり、脳の出血だったり、消化管が壊死したりするんですが、そういう時は遅れなく介入しないといけません。しかし、何もない状態を維持するときに心がけるのがなるべく余計なこと(必要ない検査や治療や処置)をしないってことで、これをミニマムハンドリングとか言われてました。余計なことをしないっていうとほっとくみたいですけど、そうではなくてその分、めちゃくちゃ注意深く観察することが必須となります。

 

今、NICUからは遠く離れた小児科医生活になってますけど、小児科の外来診療でもミニマムハンドリングが大事だなと思うときがあります。そりゃスキンケアとかアレルギー疾患とか発達障害とか、早めの介入が良いこともありますが、感染症とか不登校とか、原因がわからない謎の皮疹とか、下手に積極治療はせず、自然経過で診断につながるか自然治癒するかを見た方が良いことがあります。かれこれ人生の半分ほども小児科医をやってますが、まだまだその見極めに悩むことも多いですが、ミニマムハンドリングの考え方は常に意識において診療しています。

 

そして、この考え方は育児や教育でも重要なことがあり、時として手を出さずに見守るミニマムハンドリングが、その子の将来に功を奏すこともあると思います。ほら、木の上に立って見るのが「親」ですからね。