栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

子どもが好きではないんですけど小児科医になっても良いですか?

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

小児科医って当然子どもが好きだったから、その道を選んだのだと思われてる思いますが、実は私はそうでもなかったんです。

 

子どもが嫌いというほどではなかったんだけど、それほど好きではなかったのです。うるさいのが苦手だったし、どう接して良いのかもわからないしで。例えば新幹線に乗るときは賑やかな子どもがいない喫煙車両に自分は吸わないのにわざわざ選んで乗ってました(今では全車両禁煙ですが昔は喫煙車があった)し、オーケストラ部の活動で幼稚園に演奏に行っても子どもと交流しようとせずに、終わったら自分だけさっさと帰ってました。

 

だから医学部に入ってしばらくは自分が小児科に入るとは全く予想していませんでした。それが、いろいろ医学を勉強するうちに小児の病気に興味を持ちました。このへんホームページにも書いてますけど、小児の病気って本当にミゼラブル(という言い方を医者はしますけど、直訳すると悲惨なという意味)なのが多くて、生まれて間もない時から苦しい経験をして結局短い生涯を終えるという。この何とも受け入れ難い理不尽な運命に強い対抗心が芽生えて、小児科を志すようになりました。それが神様が決めた運命なら、それを変えてやろうと。

 

実際に入局するときは気になって「子どもが好きではないんですけど小児科医になっても良いですか?」と、実習のときに小児科の先生たちに聞いたら、「いや、実は僕もそんなに子ども好きではないよ」って言われて案外そんなものかと思って図々しく小児科医になりました。

 

入ってみると、むしろ本当に子ども好きだと無理だなって場面がたくさんありました。私は最初の3年ほどは特にですが大学病院やNICUで重症を診ることも多く、気管挿管だとか輸血だとか、手術をお願いするとか、坦々と科学的に素早く判断をすることがしばしば必要で、そういう時にかわいそうだとか情が入るととても決められませんでした。もう無意識に、人の子と思わないで何か絶対にミスしてはいけないゲームをしているような感覚?でやってたときもありました。で、実際にその方が私の場合は上手くいってました。小児科医がみんな同じかはわかりませんけど。

 

今はどうかというと、そういう重症の子を診ることも減ったし、年齢的にもおじいちゃんに近くなってきたのもあってか、すごく子どもがかわいく見えるようになりました。特に仕事ではなく買い物で外出したときなどに、小さい子どもを見かけるとずっとにやにやしながら眺めてしまうので、家族に不審に思われないよう気を付けてないといけないくらいです。