栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

相手の目を見て挨拶なんか出来なくていい

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

この日曜は東京に乳幼児健診の研修に行ってました。講演者の1人は以前私が発達障害の勉強のため、外来に付いて教えていただいた先生でした。その講演の中で、健診の時に子どもと話すときはface to faceではなくside by sideの方が(つまり正面から顔を見て話すのではなく)、子どもは緊張せずに話が出来るって話をされていました。そういえば、私がその先生の外来に付いた1日目に、自閉症の診察は目を合わせて話しかけてはだめだよって教えてもらったことを思い出しました。かれこれ10年以上も前の話です。

 

自閉症の子は視線を合わせないっていうのは結構有名な話ですね、乳児期から見られることもある特徴です。目を合わすことに不安を感じるようです。これは感覚的なものなので、簡単には治しようがありません。

 

以前、自閉症の子が通う幼稚園の先生が、「まずは朝、目を合わせて挨拶することを目標にしたいと思います」と、意気揚々に言われたのでびっくりしたことがあります。なるほど、目を合わすのが苦手だからそれを練習させようということみたいで。その先生は目を合わせることはコミュニケーションの基本だと思っているようでした。

 

「挨拶は目を合わさないでも出来たら良しとしてあげて下さい、お辞儀しながらだったら違和感ないでしょう。」とお願いしました。

 

発達障害の子の苦手なことは感覚的(生まれつきで変えようのないものと言う方が分かりやすいでしょうか)なものが多いので、練習して治すには相当な苦痛を伴います。あなたが黒板を爪で引っ掻く音になれるように毎朝聞かされるのと同じです。慣れる前に精神がおかしくなりそうですね。

 

発達障害の子(大人も)が生きやすくするには、彼ら自身が苦手なことを上手に避けて生きていく術を身につけることと、また、多くの人には簡単なことでもそれを苦手で出来ない人がいることを許容する社会にしていくことだと思います。

 

このプール熱(アデノウイルス)の暴れっぷりを見るとインフルワクチンは効いてたんだなって思う

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

6月に入ったというのに、プール熱手足口病も、最近では溶連菌なんかも流行しています。実は5月の延患者数は今年に入り最高でした。そう、通常小児科の繁忙期のはずの1~3月よりも多かったのです、しかも5月は連休もあったのに。

 

プール熱アデノウイルス)とか特にひどくて、ある保育園は全滅なんじゃないかってくらい次々に受診に来られました。冬のインフルエンザよりひどい。正確にはどうなのかわかりませんが、アデノはインフルエンザと同等かそれ以上の感染力と重症化リスクがある印象です。その上、ワクチンはなく、効果のある抗ウイルス剤もありません。

 

インフルエンザワクチンの効果について疑問を感じている方も多いと思います。実際毎年いくらかは流行するので。しかし、最近のプール熱の暴れっぷりを見ていると、なんだかんだでインフルエンザワクチンの効果は出てたんじゃないかと思いました。

 

というわけで、全く季節外れですが、インフルエンザワクチンも必ず接種しましょう。製薬会社さん、在庫切れにならないようにしっかりたくさん作っておいてくださいよ!

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抗生剤は何とかして3回飲んでください。

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

問診票に処方薬の内服回数の希望を記入するようになっているのですが、ほとんどの方は朝夕2回を希望されます。学校や幼稚園、保育所で昼に薬を飲ますことが出来ないからですね。去痰剤などの風邪薬程度であれば1日2回でも大きな問題はありませんが、抗生剤に関しては朝夕眠前になっても良いので3回内服でお願いしています。

 

抗生剤を始める時は、細菌にそれまで去痰剤などだけで穏便に対応していたのを止めて戦闘開始する時です。抗生剤はいってみれば武器のようなものです。反撃の余地を与えず、一気に叩きのめさないといけません。小児科でよく使われる抗生剤であるペニシリン系(うちではワイドシリン)、セフェム系(うちでは第一世代のケフラックスやケフラール)は内服してから効果が出て切れるまでの時間がとても短いのです。2時間くらいかけて薬物濃度はピークに達しその後たった1時間で半分に減って効果も早々に切れてしまいます。これは1回の内服量を増やしてもそんなに変わりません。単発のミサイルなのです。本来なら1日3回発射出来るミサイル(ペニシリン系なら4回発射でも可)を2回しか打たないわけですから、その効果が切れてる間に反撃の余地を与えてしまい中途半端な効果で終わり、肺炎や中耳炎、蓄膿などを重症化させてしまうのです。

 

マクロライド系(クラリシッド、ジスロマックなど)やニューキノロン系(オゼックス)は効果持続時間が長い抗生剤で1日2回でも効果があるのですが、マクロライドは当院エリアの主な攻撃対象である肺炎球菌のほとんどがマクロライド系耐性菌で無効ですし(マイコプラズマには有効)、ニューキノロンはその添付文書にもありますが、他の経口抗生剤が無効の時に限り使用する薬になっていて、切り札として温存しておくべき薬とされています。保育所で飲ませられないからという理由で使用する武器ではないのです。

 

早く確実に菌を叩いて病気を早く良くするために、頑張って抗生剤は1日3回内服させるようにして下さい。朝夕眠前になってもいいし、食前食後どちらでも良いし、多少内服どうしの間隔が詰まっても大丈夫ですから。

 

日本脳炎ワクチンをストップしました(涙)

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です

 

またもやワクチン接種制限することになってしまいました。日本脳炎ワクチンの出荷制限により新規予約をストップしました。申し訳ありません、ワクチンを推奨している身としては非常に心苦しく思っております。特に日本脳炎は蚊が媒介となる感染症なので、一年で今の時期に最も接種しておきたいワクチンなのに。とりあえず、すでに予約済みの方や1回目接種後でこれから2回目接種の方の分は確保します。

 

こういうことが年に何度もあるので、クリニックレベルで在庫をうまく調整して接種制限は出来る限りしないようにやっていました。実際、現在、麻疹風疹ワクチンもおたふくかぜワクチンも出荷制限がかかっていますが、当院では通常通り接種しております。日本脳炎ワクチンもギリギリまで制限せずにいたのですが、流通復活の見通しが来年以降だということ、他院が接種制限したために当院に流れ込んでこられる方で需要が増大してきたことから、当院でも制限せざるを得ませんでした。さすがに6ヵ月以上を十分持ちこたえられるほどの在庫は確保出来ていませんでした。

 

本当に悔しくて仕方がないです。もう行政はあてにならないし、自分たちでどうすれば良いかを考えています。何が起きようとも自分たちの患者さんに確実にワクチン接種をして感染症から守ることが我々の使命ですから。

 

風邪にテルギン、ペリアクチン、クレママレット、タベジールは出しません

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

連休をいかがお過ごしでしょうか?天気も良いからなのか、私は今さらながら花粉症で鼻水が止まらなくなっています。仕事も無いし長時間運転する予定も無かったので、何年も前に人体実験(自分に)のために出してたペリアクチンという第一世代抗ヒスタミン剤を改めて飲んでみたら、もうずっと眠いし喉は乾いて痰がからむし最悪でした。

 

というわけで、今回は抗ヒスタミン剤(第一世代) に関して。ずっと前にも書きましたが大嫌いな薬の1つです。ペリアクチンの他に、テルギンG、クレママレット、タベジールとかもそうです。私は他院で薬をすでに出されている患者さんが受診された時は、極力そのまま出ている薬を続けながら薬を追加するなどで対応してますが、この第一世代抗ヒスタミン剤が出ているときはバッサリ止めてもらうことが多いです。滋賀医大小児科系列の先生はほとんど出されませんが 、耳鼻科や他大学系列小児科、御年配の先生などからはよく出されています。処方された薬で鼻水は減ってよく寝るようになったけど、鼻が詰まったり咳が増えたという方は、この抗ヒスタミン剤が入っていることがあります。

 

この薬は名前のごとく体内のヒスタミンっていう物質の作用を抑えるのですが、このヒスタミンは鼻水などのアレルギー症状を出す悪行だけでなく、食欲や睡眠を調節したり、発熱時に生産される脳をけいれんしやすくさせる物質の作用を抑える良い役割もしています。要するに、抗ヒスタミン作用で熱性けいれんもしやすくなるってわけです。この辺りは過去記事参照ください(下にリンク)。

 

第ニ世代抗ヒスタミン剤と言われる、アレジオン、アレグラ、ザイザルなどは同じ抗ヒスタミン作用はありますが、眠気はほぼ出ないし強い口渇も無いようです。脳への移行が少なくて眠気が出ない上に、抗コリン作用というもう1つの薬効(副作用)が抑えられてるから強すぎる分泌抑制(=口渇)が出ないのでしょう。それならみんな第ニ世代を使えば良さそうなものですが、急性症状(風邪の)に保険が通ってないのであまり気楽には使えないのです。私はしばしば使いますが。

 

鼻汁や痰は気道のウイルスや菌などの異物を含んでるものなので、鼻汁や痰は基本的には柔らかくサラサラにして、適度な咳で排出するのを助けるのが、いわゆる小児の風邪治療の基本と思っています。当院では極力痰を柔らかくする薬のみ処方して、まだ鼻をかめない子にはなるべく鼻水吸引をして帰ってもらってます。流れ出る鼻水を止めるがために分泌を抑える抗ヒスタミン剤の治療をすることで、逆に粘っこい鼻水や痰にしたら、鼻詰まりや咳は悪化するし、そもそも風邪自体の治りが遅れる気がしませんか。

yoshi830.hatenablog.com

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抗生剤を適切に使っていくのはとても難しい

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

4月になって風邪症状で受診される方も減りぎみだったのですが、後半から急に増えてきて冬場とあんまり変わらないくらいになってました。4月から保育園や幼稚園に行き始めた子たちが、初めての集団生活でウイルスや菌をもらいまくってやられてるようです。もうこれはしょうがない、誰しも通る道でこうやって強くなっていくと思いましょう。

 

で、問題は治療なんですけど、この手の保育園風邪がどこまで症状にウイルスか細菌が関与しているかで抗生剤を使うか悩みます。以前にも書いたように、こういう子たちの鼻汁の菌を調べると肺炎球菌やヒブがうじゃうじゃ検出されます。ただ菌は出ても、どこまで咳鼻や熱の原因になってるかわからなくて、そこにいるだけで何も悪さをしてないかもしれない。それなら安易に抗生剤を度々使うとなまじ菌を鍛えてしまうことになって(耐性化)、本当に菌を殺さないといけない時に薬が効かなくて困ります。でも、あんまりウイルスと見込んで自然治癒を待ちすぎると蓄膿や酷い中耳炎になってしまいます。

 

感染症の専門家は、風邪の9割はウイルス性であるし仮に細菌でも軽度なら抗生剤は必要ないと言っておられますが、これは少なくとも乳幼児に関しては絶対に違う。私の現在の感覚では2-3割は適切に抗生剤を併用する方が良いように思っています。

 

でも、メイアクトとかフロモックスとかの第三世代セフェム系、あれだけ腸からほとんど吸収されない(これは実際に調べてる研究結果と思うので真実でしょう)から意味ないって言われてるのにしばしば処方されてるのは何故なんでしょう。これらの薬は効かない以外にも弊害があるので正直出して欲しくないです(以下のリンク参照)。私はもう何年も出してません。

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湿疹が良くなったかどうかの判断は意外と難しい

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

乳児湿疹でもアトピー性皮膚炎でも、治療はステロイドなどの塗り薬でガツン一旦良くしてしまって、良い状態をキープしながら薬を弱くしたり、塗る回数を減らしていきます。その治療を弱くする過程で悪化したら、一旦また戻して(強い治療にして)良い状態にしてからゆっくり落としていきます。最終的には保湿剤だけまでにするのが目標です。この中で、スキンケア(保湿)や内服(かゆみ止め)を併用したりもしますが、やっていることは意外と単純なのです。だから、極端な話、2段階くらいの強さのステロイド外用剤を処方して、良くなったら弱い薬に変えて続けて、さらに良くなったら塗る回数を減らして、、、、などと説明して、患者さんだけで勝手に治療されても出来ないこともありません。

 

しかし、実際にそれをやろうとするとほとんど上手く行きません。「良くなったら」というのが極めて主観的な判断になるからです。一見良くなっているのように見えても、よくよく見たり触ったりすると軽く湿疹が残っていることもあります、どんなによく見て皮膚の表面がきれいでも、皮膚の下では炎症(湿疹の元)がくすぶっていることもあります。「この薬を1日2回塗って、お母さんから見て良くなったら1回に減らして良いですが、それ以後はどんなに良くなったように見えても1日1回で次回外来まで続けて下さい」といった説明をよくしますが、それでも「きれいになったんで薬やめました」といって次の外来に来られる方がしばしばいます。それで本当にきれいになっていれてば良いですが、ほとんどで少しずつ軽い湿疹が復活し始めています。かなりひどい湿疹の状態を経験しているからか、軽い湿疹と全く湿疹が無い状態との見分けがつきにくくなるのかなと思います。でも、その軽い湿疹のうちに弱めの薬でしっかりを抑えて健全な皮膚を維持することが、湿疹や乾燥になりにくい強い皮膚にしていくのにとても重要なのです。

 

風邪でもないのに病院に来る回数は出来るだけ少なくしてあげたいので、上記の例のように部分的にご家族の判断に任せて薬を増減変更してもらうこともありますが、基本的には外来で一緒に判断して調節していきたいと思っています。