栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

小さい子には出来る限り抗菌薬を使いたくない理由

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

看護師、医療事務ともに引き続き募集中です!よろしくお願いします!

 

「抗菌薬で下痢をしたと思って飲むのを止めたのだけど、それでも下痢が続くので薬のせいではなかったのでしょうか?」と言われる方がおられました。いえいえ、抗菌薬で下痢をするのは腸内で正常な腸機能を助けている何百種類もの善玉菌を皆殺しにしてしまうからです。ほぼ皆殺しになっているのですから薬を止めたくらいですぐに復活するわけがありません。乳児では抗菌薬による腸内善玉菌大量殺戮後に、正常な菌の分布状態に戻るのは3ヵ月かかるそうです。ていうことは、ちょっと風邪ひくたびに抗菌薬を飲んでいたら、何年もの間、腸内菌は殺されっぱなしというわけです。

 

ところで、この善玉菌の方々は腸の働きを良くするだけではなく、肥満を予防したり、脳の発達を促す物質を作ったり、様々な腸疾患を予防し、そして何といっても各種アレルギー疾患の発症を抑制する働きをしていることがわかってきました。この腸内の多様な菌の集まりのことを「腸内フローラ」と呼びます。腸内フローラを正常に保つことがアトピーや喘息などのアレルギー疾患を含めた多くの疾患を予防することにつながります。

 

ビオフェルミンやヨーグルトを食べると良いようですが、食品内の細菌の多くは胃酸に殺されてしまうので、メーカーがアピールするほどの効果はありません。ちなみに赤ちゃんの腸内フローラの形成はまさに出生時に産道を通るときにお母さんの細菌をもらい、母乳がそれを育てるのです。帝王切開や人工ミルクはマイナス因子なのですね。3歳までの形成過程が重要でそれが将来の腸内フローラを作るんだそうです。3歳以降に頑張って腸活しても遅いってことでしょうか、私など子どもの頃に抗生剤乱用されてた世代なんで、どうしようもない腸内フローラなのでしょうね。

 

といったことを、先日なぜか皮膚科の学会で多く聞くことが出来たので、いつもに増して、特に3歳未満は極力抗菌薬処方を避けるようにしているこの頃です。

親にアレルギーの病気があっても、子どもも同じようになることをそれほど心配する必要はありません

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

看護師、医療事務ともに募集中です!よろしくお願いします!

 

赤ちゃんの湿疹診療をしていると、ご両親またはどちらかがアトピーだったから心配と言われる方がいます。確かにアレルギー体質は遺伝しますが、必ずしもアレルギー体質の人がアレルギー疾患をすべて発症するわけではありません。つまり、アレルギー疾患は食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息アレルギー性鼻炎、花粉症などですが、それらがすべて発症することもあれば、一つや二つであったり、症状が軽いこともあるわけです。お母さんにアトピーがあっても、子どもは花粉症だけということもあるのです。もちろん、その逆もありです。

 

アレルギー体質の人はとても多く国民の3分の1にもなるそうです。印象としてはもっと多そうですよね。3月に花粉症は全くないと言っている人の方が少ない気がしますもの。これだけ患者さんの多い領域なので研究も進んでいて、最近では食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の発症メカニズムがわかってきました。

 

有名なものでは、離乳食開始前の乳児期早期の湿疹が食物アレルギー発症のリスクを高めるというのがあります。これはつまり、食物アレルギーを予防するには乳児湿疹をしっかり治療することが重要ということです。生まれて早いうちから保湿剤でスキンケアをして、湿疹が出始めたら悪くならないうちに早めに治療するということをしていれば、アレルギー体質であっても食物アレルギーは回避出来る可能性が高いということです。同時に乳児湿疹を早め早めに治療することになるのでアトピー性皮膚炎への移行も減らせます。

 

アレルギー体質は遺伝しても疾患そのものは予防や軽症化は出来ますので、スキンケアなど必要なことをしっかりやっていれば、それほど心配することではありません。

どうしても発作が無いと喘息定期薬を勝手に止めてしまう方へ

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

医療事務、看護師ともども募集中です!

 

梅雨が明けそうで明けない近畿地区ですね、しばらく雨続きだそうです。梅雨時期は喘息が悪くなる子が多くて、実際外来での吸入することもいつもよりは増えてますが、そうはいっても酸素が必要となるほどの子は見かけません。

 

私は学生の時に身近にしばしば喘息発作が出る後輩がいて、何度か救急外来に連れて行ったこともありました。喘息といっても名前しか知らなかったので、かなり呼吸が苦しそうになる様子を見てこりゃ厄介な病気だなと思いました。まさか将来自分がこれほどその喘息治療をすることになろうとは夢にも思っていませんでした。

 

ちょうどその頃にオノン(=プランルカスト、ロイコトリエン受容体拮抗薬のこと。キプレスやシングレアも同系統の薬、現在では主役級の薬ですね)が出てきて、薬理学が好きだった私は、なるほどアラキドン酸カスケードのここに作用するのか、これで効けばステロイドを使わなくても済むのかとかいう、ちょっとマニアックな感心の仕方をしたのを覚えています。たしかアイピーディーもこの頃だったかな、こっちも期待したけど今はあんまり使われてるのを見ませんね。

 

特に喘息を診たくて入ったわけでもない小児科では、嫌でも喘息はたくさん診ましたが、私が研修医の頃は酸素不足になるほどの呼吸困難でベッドの上で酸素を流し続けるテント(酸素マスクを嫌がって取ってしまう小さな子のために)の中で治療する子が沢山いました。それでも当時の指導医にはオノンが出て来てから随分重症の子は減ったんだと言われました。そのうちステロイド吸入薬(フルタイドとか)も出てきて、本当に喘息のひどい子を診るのは減りましたね。

 

小児科を含めた内科医ってのは、はっきり言って薬が無いと何にも出来ません。薬を開発してくれた方には感謝するばかりです。昔と言ってもほんの10~20年前までは喘息で、発作で入試を受けられなかったり、縁談に影響したり、海外旅行や留学が出来なかったり、つきたい職業をあきらめたりと、一生にかかわる病気だったのです。今はきっちり薬を使って治療すればほぼ確実に治せる病気になりました。ただし、きっちりと必要な治療した場合に限ります。こんなに恵まれた時代に生まれたのだから、面倒でも必要な薬を必要な期間はきちんと内服・吸入をして、子どものうちに治してあげましょう。

電子おくすり手帳は無くなって欲しい

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

看護師、医療事務ともに募集中です!よろしくお願いします!

 

私が今、世の中から無くなって欲しい3つのものは「戦争」「いじめ」、そしてもう一つが、、、

 

「電子おくすり手帳」です!

 

ご存知の通り、お薬手帳は処方された薬の内容を記録していくもので、多くは薄い小さな手帳に薬局で処方内容が印刷されたシールを貼ってくれます。帰省先でいつもと違う病院にかかったり、持病で継続して内服している薬があったり、他科受診した際に薬を処方されたりと、そういうときに受診された方がどういう治療をされているか、してきたかを確認するためにとても重要な情報の記録です。当院受診時に他院処方分があるときは、その手帳を先に受付でお預かりして診察前に確認します。最近はジェネリック薬品など聞きなれない名前の薬も多く前もって調べておいたり、多種の薬のときはカルテにも診察に先立って記録しておきます。

 

これが電子おくすり手帳では一切出来ません。保護者がスマホにアプリを入れていれば見れますが、スマホだけを預かって中を見ることも出来ないので、やむえず診察中に見せてもらい確認します。わからない薬だと調べないといけないし、とても時間のロスになります。ひどいときはスマホで見ることさえ出来ずカードしかなくて全くわからないことも。

 

カードリーダーがあれば見れるそうですが、そんなもんあるかっちゅうねん。よく知りませんが、連携して入力される電子カルテもあるのでしょうか。まだ紙カルテの診療所もあるというのに、そんなごくごく一部の医療機関でしか使えないようなもの導入して誰の得?

 

多分、それほど頻繁に病院を受診しない大人の患者さんなどが、紙の手帳だと忘れてしまうところを、カードやアプリで管理すれば忘れにくく記録閲覧できるのがメリットなんでしょう。でも小児科はみなさん母子手帳や乳児医療証などセットで持ち歩いておられるので、おくすり手帳だけを忘れることはめったにありません。薬局だって対応してないところも多いでしょう。

 

とかくペーパーレス化を目指すときは、電子カルテも検査結果記録などもそうですが、最初は不便を感じるものです。しかし、電子おくすり手帳はペーパーレスになったところでそれほどのメリットがあるようにも思えず、現状の治療上の不利益が多過ぎて。大金はたいて導入した薬局さんには申し訳ありませんが出来れば無くなって欲しいです。

自然派で育児をしていきたいなら、あらゆる悲劇を受け入れる覚悟をもって

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。看護師、医療事務ともに募集中です!よろしくお願いします!

 

紙ではなく布オムツとか、離乳食は既製品ではなく必ず手作りとか、そういうのは全然良いと思います。いわゆる「自然派」というのでしょうか。そうでないといけないとも思いません。好きなら良いと思います。

 

でも、湿疹にステロイドは絶対使わないとか、ワクチンはせず自然に感染する方が良いとか。そういう自然派は困ります。それで無事に過ごせる子もいるでしょうが、一部の子は悲惨なことになります。体重が増えないのに完全母乳にこだわるのも賛成出来ません。母乳だけでは栄養が足りてないならミルクを追加すべきです、赤ちゃんにとって栄養不足は体の成長だけでなく脳の発達に影響します。自宅出産とかもありますね、出生直後に羊水を飲んだりして上手く呼吸が出来なくても、軽く吸引したり酸素を与えるだけで何の問題もない人生が送れるところが、自宅で出産するばっかりに吸引も酸素も無くて死んでしまったり、脳に重度の障害を負ってしまう子がいるかもしれません。

 

そりゃ大昔はステロイドもワクチンもミルクも、吸引器も酸素も無かったです。それでみんな上手く行っていたかというとそんなわけないのです(環境が違うから今よりアトピーは少なかったかもしれませんが)。今より多くの子が感染症や栄養失調で、死んだり重度の後遺症を背負って生きて行くことになったのです。そんな悲しいことを含めての自然なのです。「自然派」の育児をしたい人たちはその覚悟を持たないといけません。

 

私はそれが本来の人間の自然の姿でなかったとしても、自然に反する行為であったとしても、今最大限出来ることで子どもの命と健康を守っていきたいと思います。

 

不登校は焦らず急がずで

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

現在、看護師、医療事務、脳波技師ともに熱く募集中です!

 

不登校なんですけど受診できますか?という問い合わせを時々いただきます。原則、元々当院かかりつけ患者さん以外では、発達や心理関係の初診は現在ストップしています、大変申し訳ありません。

 

ただ、不登校の際の基本方針だけ確認しておきたいです。まず子どもが不登校になった際には、ひどいいじめなど、どうにもこうにも登校困難となる明らかな理由がないか確認しましょう。そのときは担任の先生が窓口でしょうが、出来れば複数の先生に対応してもらう方が良いです。学校の先生もいろんな方がいますから。もし満足いく対応がされずに埒が明かなければ校長と面談しましょう。それでも誠意ある対応でなければ、当院近隣ならお勧めの相談先を紹介しますので連絡ください。

 

で、学校としっかり協力体制がとれていれば、まず登校を焦らないことです。もし習い事や友人と外出したりが出来ていれば、まずはそれを維持すること。外出できないほどのレベルなら家族と食事を食べたり、昼夜逆転しないようにすることを目標にしましょう。そのとき出来ることをしっかり確保することです。登校を焦るあまり家族関係まで悪化したら子どもの居場所がなくなってしまいます。もし急に本人が自分から登校すると言い出しても、逆に無理しないように、時間を少なめにしたり時々休ませるくらいの方が良いかもしれません。本人が自分から登校しだしたと無邪気に大人が喜んでいると、無理がたたってぱったりと行けなくなることが多いです。

 

新学年になったり、新たに中学高校へ進学したことをきっかけに、急に登校し始めた子が連休明けてから結局行けなくなっていることをしばしば聞きます。やっぱり本人も登校したいんでしょうね、でも出来ない。かわいそうな話です。

魔法の塗り薬なんて無い!

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

現在も看護師、医療事務、脳波技師ともに熱く募集中です!

 

乳児湿疹やアトピー性皮膚炎で遠方から受診に来られる方が増えてきました。ありがたいことです。その中で先日、同じ薬を近くの小児科でもらうことは出来ませんか?と聞かれる方がおられました。

 

結論から言うとそれでは全く意味が無いのです。まず処方してる薬は全く特別なものではありません。ごく一般的なステロイド剤(プロトピックも含めて)とごく一般的な保湿剤です。多分それまで近隣の小児科や皮膚科などで出されたものと違いありません。当院での治療の主体は薬の使い方とスキンケアを習得してもらうことにあります。入浴や体の洗い方まで含めてです、外用の量や部位はかなり具体的に説明します。診療時間自体が私の診察より看護師からの説明の方が長くなることも多いです。こちらがお伝えした通り出来ているかの確認のため初めは週単位、落ち着いても月単位でしばらくは定期的に通院してもらいます。詳細に伝えたつもりでも、誤解があったり、さじ加減の違いでこちらが意図したように出来ていないときに方向修正するためです。もちろん上手く行ってれば、出来るだけ早く薬の強さや塗る回数を減らして行く(基本的に私が決めます)し、それを判断するためでもあります。

 

うす塗りにならないように、たっぷりめに外用薬は処方することが多いのですが、定期受診すると言われたのに受診されず、処方された外用薬を自己流でチマチマと数か月にわたり悪い時だけ使い続けるというのは最悪のケースです。難治化する可能性が非常に高いです。繰り返されている方には処方をお断りしています。子どもの湿疹の難治化に協力したくありませんから。

 

湿疹治療に魔法の薬はありません。何にも考えずにそれさえ塗ってれば治るというのはかなり強いステロイドが混ぜた調合薬です。それもそのうち効かなくなります。

 

すでに湿疹の治療で受診しているのに上手く行ってない方は、処方をうけている病院で薬の塗り方などをよく質問して確認しましょう。しっかりとした回答をしてもらえなければ病院変えた方が良いかもしれません。