栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

てんかんの手術をお願いするときの気持ち

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

てんかん学会の帰りに書いています。毎年ですが、この学会では脳外科の先生のてんかん外科の話があって、毎回聞かされるのが「内科(小児科)が内科治療(薬)で治らないてんかん患者をいつまでも囲って、外科にまわさずに患者を不幸にしてる」っていう論調。一時期よりもだいぶ減ったけど、まだそういう事言う先生がいる。

 

それはわかるんだけど、こっちも不安なんだって。いくら昔と違って安全だって言われても、全身麻酔して頭蓋骨に穴開けて脳を切るんだから、リスクがゼロなんてわけがない。取り返しのつかない合併症が起きたらどうしようって思ってしまうんですよ。かれこれ10人以上、自分の患者さんを手術してもらったけど、どれだけ症例を重ねてもそれは変わりません。自分の手で内科治療で最後まで治したいなんてエゴ、ひとかけらも無いんですよ。

 

それこそ自分の子どもを手術してもらうのと同じ感覚。そこをわかって欲しいなって思います。

喘息かどうかは血液検査ではわかりません!

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

赤ちゃんに離乳食始める前にアレルギー検査して確かめるとか、検査だけで陽性の食物を制限することがどれだけバカげたことかは、私以外にもたくさんの良識のある小児科医が書いて下さっているので、もういいかと思います。(とはいえ、まだしばしばそういう指示をされている患者さんを見かけますが)

 

時々、喘息かどうか調べるためにアレルギー検査をされたとかいう方も見かけます。血液検査で喘息かどうか診断するなんてどの教科書に、どのガイドラインに書いているんだって話です。ひどいのになると目をパチパチさせる(どう見てもチック)からアレルギー性結膜炎かどうか調べるために検査された子もいました。もう、本当にたちが悪すぎる。そんなに検査がしたいのか。

 

私だってアレルギー検査をしますよ、強い発作エピソードや重い症状のある患者さんではどれだけ強い治療が良いか、どれだけ続けるのが良いかなどの参考になりますからね。でも喘息かどうかの診断目的でやることはありません。

 

こんな無意味な苦痛を子どもに与える小児科開業医がなぜ多いのか。答えは簡単。アレルギー検査の診療報酬点数が高すぎるんです。以上。

たかがオムツかぶれとはいえ、ひどくなる前に治療しましょう

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」です。

 

多分、初めてオムツかぶれについて書きます。最近、それほどひどくならない下痢主体の腸炎が地味に流行ってるようで、胃腸症状は軽度だけどオムツかぶれがひどい子をしばしば見かけます。オムツかぶれは他の部分の湿疹とは状態も治療もだいぶ違います。

 

他の部分の湿疹が乾燥肌をベースとして悪化するのに対して、お尻はオムツ内にあって湿った環境にあります。だから、乾燥肌の軽度の湿疹なら保湿剤だけで良くなることもありますが、お尻にぬると余計にベトベトするだけであまり意味が無いのです。なお、ぽっちゃり赤ちゃんの首の湿疹なども同様です。時々、ヒルドイドとかワセリンをせっせと塗ってくれてる方もいて、まあ保護剤としては全く無意味とは言えないと思いますが。

 

オムツかぶれの定番軟膏はエキザルベで、だいたい我々が研修医の時に初めに教わる薬です。一番弱めのステロイドと混合死菌浮遊液なるものが入ってます。この死菌浮遊液はなんだかよくわからないんですが抗菌作用があるそうです。ある痔の定番薬にも大腸菌死菌浮遊液が入ってるので肛門周囲の感染予防になるんでしょうか。

 

オムツかぶれで多いのは、湿った環境なだけあってカビ(真菌)感染を伴う時です。エキザルベを塗ってても一向に治らない時は可能性があります。理論上、カビにステロイドだけ使ってると悪化するので、エキザルベが効かない時は早めに受診しましょう。抗カビ剤を使わないと治りません。

 

私は亜鉛華軟膏をよく使います。これは白いセメントみたいな塗り薬で、余分な水気を取って炎症を抑える効果があります。ステロイドが入ってないので、1日に何度も塗り直すことが出来ますし、仮にカビでも悪化させることはありません(乾かす効果で幾分はカビにも効いてる気もします)。ひどいかぶれで皮膚がえぐれてるような時はこれでもかってくらいタップリ使って病変にフタをするような使い方もします。排便して拭くたびにやります。こうすると下痢便から物理的に保護出来ます。

 

というわけで、軽めのオムツかぶれには亜鉛華軟膏のみで、ちょっとひどい時にはエキザルベをかぶせて、かなりひどい時は上記の亜鉛華軟膏タップリ療法を勧めています。タップリっていうだけだとわかりにくいので、こちらが実演して見てもらってます。これでほとんど皆さん良くなります。先生によって治療は様々のようで、やっぱりワセリンを勧めてる所もあれば、アズノール軟膏を出されてる所もあります。アズノールは効くそうですけど私はあまり使ったことありません。

 

オムツかぶれとはいえ、えぐれるくらい進むとかなり痛そうですよね。ひどくなる前に早めに診せて下さいね。

麻疹ワクチンが接種出来なくて憤ってる大人たちへ

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

現段階で、今回の流行に備えて成人の方が麻疹または麻疹風疹ワクチンを接種しようとしても難しいでしょう。なけなしの在庫は、乳幼児の未接種児に優先的にまわされています。未罹患またはワクチン接種歴が2回未満の成人の方に出来るのはさしあたり感染しないように祈るくらいでしょうか。手洗いもうがいもマスクも麻疹の予防には何の効果もありません、インフルエンザとは違います。

 

問われるのは、この騒ぎが落ち着いてワクチンの供給が安定した後に、接種できなかった大人たちが接種しに行くかどうかです。2007年の麻疹流行時、2013年の風疹流行時、今ワクチンが無いって騒いでいる大人たちは何をしていたのでしょう?その時も同じようにワクチンが無いって騒いで、流行が終われば忘れてそのままだったのでしょうか。それとも自分には関係ないって無関心で過ごしたのでしょうか。2007年でも2013年にでも、後からでも麻疹風疹ワクチンを接種していれば、今回ワクチンを探してあちこちの病院に電話する必要もなかったのです。

 

麻疹も風疹も一生に何度も接種しないといけないワクチンではありません。流行がある度に気が付いて皆が接種していれば、それだけ未来の流行は抑制されるのです。いくら接種しても免疫がつかない方も、ワクチンそのものが接種出来ない病気の方もいます。その方々を守るためにも、今回の流行が終わった後でも麻疹風疹ワクチンを打ちに行きましょう。

 

追記:麻疹ワクチンではなく、麻疹風疹ワクチンを打ちましょう。妊婦さんとお腹の赤ちゃんを守るために風疹を流行させないことはとても大切です。

問題行動を放置するのが良いわけがない!

こんばんは。
滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

現在発達外来は諸般の事情により新患をストップしているので、最近はあまり発達障害関係は書いてこなかったのですが、これだけはやらないで欲しいことでしばしば聞かれることを書こうと思います。

 

問題行動を放置することです。一番多く聞かれる具体的な例は授業中の立ち歩きや勝手な行動を教師が無視していることです。先生に言わせると、障害なのであまり注意しない方が良いと思ったとのこと(本音は?)。

 

確かに多動症の子が他の子と同じように45分間着席のままで授業に集中し続けるのは難しいです。かといって、何にも注意されず放置されてるとそれが好ましいことかどうかがわからなくなってしまいます。

 

そこで一つの策として、みんなと同じ様には出来なくても本人に合わせて低いハードルのルールを作りましょう。座っていられなくなったら先生に挙手して許可を得ることにするとか、教室外へ出たいときには行先と時間を決めておくとか、15分おきに短かい休憩時間を作って教室外へ出ても良いことにするとか、、、。本人と話し合って頑張れそうなレベルのルールを作る、それに関わる大人たちは周知して注意や指示が人により変わらないようにする。ルールが守れたときは目に見える形で評価する(シールやコインを与えるなど)のも良いでしょう。

 

これは別に学校の授業に限ったことではなく家庭内でも同様です。やみくもに強く叱りつけるのも問題ですが、何にも言わずに好き放題させておくことも同様に避けるべきです。

風邪のときの薬に関するよくある質問。

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

しばしば風邪薬処方のときに質問があることにお答えしたいと思います。

①粉(散剤)とシロップ(液剤)はどっちが効くのですか?

おそらくどっちでも変わらないと思います。飲ませやすい方で良いです。どうしてもどっちか選ぶなら粉ですかね。小分けになっているから衛生的っていうくらいの理由です。

②解熱剤は飲み薬と坐薬はどっちが効くのですか?

これもおそらくどっちもそう変わらないと思います。坐薬はしんどくて飲めない時でも入れられるメリットがあるけど、本人が嫌がって暴れるときは大変ですね。ときどき嫌がる子で、坐薬を濡らさずに入れられてることがあります、乾いたまま入れるとそりゃ痛いです(表面を少し溶かしてヌルヌルにして肛門に馴染ませて入れましょう)。ご注意を。

③1日2回と3回はどちらが良いですか?

1年以上前にも書きましたが、多くの薬では3回の方が良いと思います。薬ってのは飲んでしばらくしてすっと薬物血中濃度が上がって、ゆっくり下がっていきます。薬には効きやすい有効血中濃度というのがあって、それを超えて上がると副作用が出やすく、それより下がってしまうと効き目が弱くなります。薬の分量は1日総量で決める(1回量ではありません)ので、1日2回にすると1回量が多くなって、ドーンと濃度が上がって、下がるのも早くなります。3回だとそれがなだらかになる。つまり3回の方が副作用は出にくく、効いてる時間も長いってことです。ただし、最初にドーンと濃度を上げて、さっと下げる方が効きが良く副作用も少ない薬も一部あります。私の意見としては去痰剤などの風邪薬くらいなら2回でも3回でもあんまり気にしなくても良いと思います、抗生剤は使うときはしっかり効いて欲しいので何とか3回で飲んでもらうようにお願いしています。ほとんどの薬は食後と薬袋に書いてあっても食前や空腹時でも良いし、朝・昼・夕が保育所などで無理なら朝・夕・眠前でも構いません。

 

当院では薬を飲ませたり、坐薬を入れるのが初めての保護者の方には、診察後看護師から詳しく説明しますので、遠慮なくお申し出下さい。

お母さんの麻しんの免疫があてにならないのに、赤ちゃんの定期接種が1歳からしか出来ないのっておかしくないですか?

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

さて、麻疹ワクチンがうちの地域でも手に入らなくなりました。だから、もうワクチンを勧めることはしません。以下、ひとりごとです。

 

現在、最も危険なのは全く麻疹ワクチンを接種してない(もちろん罹患もしてない)方で、まあこれは当然過ぎて特に言うことありません。注意が必要なのは、平成20年の2回のワクチン接種を定期化(このとき漏れが無いように中3、高3にも接種が出来るようにされた)の対象にならなかった平成2年4月より前に生まれた方々。またはそれ以降に生まれていても、その時期のワクチン接種を促す通達を親御さんが無視して接種してない方です。つまり現在のお父さん、お母さん世代ですね。高齢者は麻疹がまだしばしば流行っていた時期を経験しているし、子どもも2回の定期接種をしているので比較的安心です。ところで赤ちゃんはどうなの?

 

そう、以前から疑問だっけどこのたび改めて感じているのですが、1歳にならないと麻疹ワクチンが定期(無料)接種出来ないということ。これは1歳未満の乳児期は母体から免疫をもらってるから大丈夫という根拠なのですが、その母世代の抗体が下がっているから不十分だ、ワクチン追加接種すべきだという話になってるのって。これ、明らかに矛盾してますよね。母体からの抗体があてにならないなら、もっと早く乳児のうちから定期接種にすべきじゃないのでしょうか?実際麻疹風疹ワクチンの添付文書には年齢に関係なく接種出来ることになっていますし、リスクが高ければ6カ月からの接種も勧められています。なぜ、もっと早くから定期接種にしないんでしょう?

 

このたび乳児へ麻疹が感染しないかとても心配しています。対策としては、まずは家族が感染しないように最大限の努力をすることです。ワクチン以外には、おそらくそれしかありません。

 

追記:もし1歳未満で接種されても1歳からの定期接種は通常通り進めることになっています(1歳未満での免疫獲得が弱いことがあるため)、ご注意下さい。