栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

保育園デビューかぜの恐怖

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

今、外来で結構困っていることがあります。保育園デビューかぜです。もちろんこんな名前の病名も無ければ、正式名称があるわけでもありません。私が勝手に名付けてるだけです。でも毎年この時期治療に難渋する病気の一つです。なぜか今年は特にひどいです。

 

春から保育園デビューした0~2歳くらいの子たちが、入園してすぐに風邪をひいて治る前に、新たに風邪をひいてを繰り返して、咳鼻が一向に治らないだけでなく、徐々に悪化していくという、何気に恐ろしい病気です。果ては慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)、慢性中耳炎(鼓膜に穴開けてチューブ入れるほど)、喘息(ずーっとゼイゼイして夜は毎晩の咳で眠れない)に移行していくことも少なくないです。生まれてからほぼ家族内で生活してきてウイルスや細菌に接することが無かったため免疫を得られなかったというだけでなく、そもそも2歳未満の免疫力では何十人もの集団生活に入ることに無理があるように思います。

 

治療はといっても風邪なので風邪薬か、状況により抗生剤使うなりしますが、基本的に治りきるまで新たな感染を避けて体を休ませることが一番早くて確実です。外来では熱が下がっても咳がひどかったら休ませた方がいいですよって、話していますが、保護者の方々も仕事復帰したばかりで簡単に休むことができないのか多少無理してでも預けてしまうようです。それで長期化して悪化して、そうなってからじゃあ休ませますとなっても、悪化してしまってからだと2~3日休んだくらいでは治りません。ではどれだけ休めば良いの?って聞かれます。う~ん1か月くらい休めば何とかなるかな。

 

そういうわけで、さしあたり現実的な落としどころとしては、どうせ治らないからと放置せずに病院受診して治療継続する、症状がひどいときは出来るだけ他の家族や親せきとも協力して子どもを休ませる、止む得ず保育園に行かせるときはせめて屋内での静かな活動にしてもらうよう依頼する、入園するなら小規模な保育所を選ぶとかですかね。保育園によっても感染対策意識の差によるものなのか、同じ規模でも患者数に多い少ないがあるので、そのへんを入園前にチェックするのも良いかもしれません。個人的には外国のようにベビーシッターが普及すると良いなと思いますが日本では無理かな。

 

保育料無償化や待機児童解消とかで、保育園、保育所が増えてますます保育園デビューかぜ問題に苦労していくことでしょう。小児科医が、というより子どもたち本人と家族がこんなことで苦労してるのを、行政や政治家は何にも知らずに保育園をじゃんじゃん増やして子育て支援に貢献してるつもりになっているんでしょうね。なんとも歯がゆいです。