栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

最近の女児の学校健診の話題について思うこと

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

女児の学校健診問題はここ数年ずっと話題ですね。普段の内科受診のときに服の上から聴診器を当てるからか、子どもの健診でも同様で良いんじゃないかって世間の人は思うんでしょうけど、そもそも診ている項目が違うから、その指摘は正しくありません。

 

同じ胸部聴診にしても、咳がひどくて受診されれば主に呼吸音に注意して聞くので、それなら服の上からでもある程度判断は可能です。でも、健診では隠れている心臓の病気を見つけ出すことの方が主体になるので、心音に注意して聞きます。心雑音や不整脈は呼吸音に比べて聞こえにくいことがあるので、服の上からの聴診だとそれだけ見逃すリスクが上がります。

 

もう一つ重要な項目として側弯症という背骨が曲がって伸びる病気のチェックです。普通に考えてください、服の上から背骨見えますか?それが答えですよ。実際は前屈したときの肩の位置などでも確認するんですけど、そりゃ実際の背骨の走行を見るに越したことはないわけです。

 

そこにきて、今回の小学校健診で女児の下着の中をのぞいた件ですけど。確かに小学校低学年で二次性徴が進んでる子がいたら思春期早発症を疑わないといけないし、陰部を確認しないといけません。小児内分泌学会のHPにある女児の思春期早発症の主な症状として、①7歳6か月までに乳房がふくらみ始める、②8歳までに陰毛、腋毛が生える、③10歳6か月までに生理が始まる、が挙げられています。小1の子で胸が大きい子がいたら、陰毛がどうかも診ないといけないってまじめな先生なら思うかもしれませんね。私が外来で同じような状況のときは、看護師さんやお母さんにかわりに見てもらってますけど。

 

あと虐待ですよね。でも、これをちゃんと診ようとしたら男女関係なく陰部も肛門も診ないといけなくなるし、現実的じゃないですね。私も答えがわかりません。

 

今後、学校健診で何をどういう環境でどの程度診るかというのは統一していく流れなのだと思いますけど、プライバシーや羞恥心への配慮を過剰に求めると、それだけ病気を見逃されるリスクが上がることは留意しておくべきだし、本当に病気を疑われて紹介された専門施設では、本人が嫌がってもしっかりと診察を受けさせないといけないことはわかっておいてください。

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