栗東よしおか小児科の院長ブログ

滋賀県栗東市で小児科医院を開業しています。小児の発達、小児の病気、開業準備のことなど書いてます。

感度の低い検査をすることの意義について(陰性という結果は何の安心にもならない)

こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」の吉岡誠一郎です。

 

ようやくコロナ流行も一旦収束してきて、また2波、3波とあると言われていますが、ちょっと一息つけそうですね。ここにきて改めてウイルス検査をどうしていくかが議論になっています。これでも本当は検査の目的がはっきりしてれば、議論の余地無く明らかです(検査や医療体制の余力については無視するとしてね)。少しでも感染者を見つけて隔離して拡大を抑えるのが目的なら、ちょっとでも怪しければ片っ端から検査して行くのが良いに決まってます。治療方針(インフルエンザやマイコプラズマなんかの治療法のある肺炎ではないと確認して急な重症化に備えるなど)を立てるのが目的なら、持病もなく軽症の若い人なら治療方針は自宅安静一択なので検査の必要は一切ありません。

 

やたらとネットやマスコミが、検査をしてもらえなくて不安だった人を紹介していました。それに対して、医療検査体制が整ってないから、不安で検査希望する人が殺到したら医療崩壊するからとかを検査が出来ない理由にしてましたが、仮に医療体制が万全でいくらでも検査が出来たとしても、不安解消のために検査することは無意味です。なぜなら偽陰性(本当は陽性だけど検査では陰性となること)がとっても多いから。だから陽性が出たらまあ普通にショックを受けるのかもしれませんが、陰性が出ても全く不安は解消されません。具体的には本当はコロナに感染している人の3割くらいはPCR検査で陰性が出るようです。

 

もうね、このやりとりはコロナで始まったことではなく、インフルエンザ検査でも散々繰り広げられていましたよね。熱がでて間もない子どもの保護者さんに、検査してもまだほとんど陽性が出ませんよ、陰性が出てもインフルを否定できませんよって説明します。でもあっさりと「念のためやってください」っていう、もはや「念のため」って日本語の意味って何だっけと思わせる一言でもって、あの鼻に奥まで棒を突っ込む侵襲的な検査を子どもにすることになります。陰性が出ると「良かった~」と安堵の笑みで、さっきの私の説明が一切聞いてくれてなかったことが証明されます。こんな虚しい外来のやりとりを毎年インフルシーズンは何度も繰り返していました。

 

今後、コロナの迅速検査が出来て普及したら、また同じやり取りをしないといけないかと思うと憂鬱になります。